名前
◇彼女の前から主人公視点です。
ぷに。
あぁ。気持ちいいな。ぷにぷに。幸せ。
長くて細いテグスみたいなツルツルしたのもある。
下から上に撫ぜてもとっかかりがない。
なんだっけコレ? そういえば昨日、疲れて藁ベッドで少年を抱き枕にして寝たような……
……ん? じゃあ、この手触りの良いものは。
目を開けたら淡く黄色に光る二対の海月がいた。
「おはよう」
朝からセクハラでごめんね。
とりあえず、笑って挨拶した。誤魔化したとも言う。
ウロの中は入口以外光が届かないようで、
相変わらず暗い。壁沿いに生やしたタバコさんは時間が経ったからかもう光らなくなってしまったようだ。
簡単にこれまでの事と少年に一緒にいてほしいことを話して、なんとか少年の体調が回復するまでは一緒にいてもらえることになった。良かった。
「ねぇ。少年の名前教えてほしいな。あと年も! もちろん差し支えなければ」
「名前はずっと呼ばれてなかったので、忘れてしまいました。
正確な歳はわかりませんが。神殿の神官が僕くらいの身長の時から三度ほど老いていなくなるのをみました」
おう。まさかのろりばばぁ、もといしょたじじぃっていうの?
少年の外見が5才と推定して? 平均寿命が50才としても
135才? 80なら225才。
じゃあじゃあ万が一があったとしても淫行条例回避?!!
否、外見5歳とそういうこと考える事自体犯罪臭がする。倫理観に反してる……。
ダメだ! いくら取り繕っても、やっぱり対象外じゃないか! 召喚陣さーん!
「そっかぁ。じゃあ、呼び辛いから仮の名前をつけてもいい?」
「……名前……僕の……」
「うん! 少年の瞳。海月みたいに綺麗だから
それにちなんでクヴァレってどうかな?」
ドイツ語でクラゲのことだって。こんな事もあろうかと苺食べてた時にタブレットさんで検索済みです。
「……はい。ありがとうございます」
よかった。受け入れてもらえたみたいだ。
「あ。私の事はもうナナシでいいんで」
「ナナシさんですね。分かりました」
その反応、ナナシって名前がない事だって、きっとわかってないよね。っと思ったけど他に思い付かないし、ひとまず放置。
「クヴァレはこれまで神殿で? 水に浸けられてきたの?」
昨日と今日ちょっと話してくれたことを突っ込んでみる。
「はい。僕には人魚の血が流れているそうです。
人魚を苦しめると海が荒れて外敵から国を守れるからと海に囲まれた島国で、神殿に祀られていました。
ずっと水の中で足枷をつけられていたので皮膚はふやけ膨張していますし、立ち上がることも歩くこともできないようです」
「そうなのね」
だから、そんな見た目なのか。
足枷は今はついていない。召喚時に外れたみたいで良かった。
「それじゃあ、私と一緒に動けるように練習しよう?
筋力もつけないとね。時間はいっぱいあるからゆっくりやろう。
当分はサラダ(草)と果物のごはんになっちゃうけど
筋肉、プロテイン、肉……は手に入んないなー」