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交渉

4人の内2人は筋肉モリモリの若い人力車引っ張るお兄さんの装い。輿を担いでいた人達だろう。護衛なのか十手のような物を腰にさしている。1人は肩に小鳥を乗せている中年男性。最後の1人は恐らく輿に乗っていた人だろう。1人だけ煌びやかな羽織を纏っていて派手だし、年代は50代ほどだろうか。顔に皺があり、歳も4人の中で一番上のようだ。黒くて長い烏帽子を被っている。


すかさず、その一番偉そうな人に声を掛ける。


「いらっしゃいませ! 長旅お疲れ様でした。こちらお絞りです。いかがですか?」


「おお。気がきくな。早速使わせてもらおう」


玄関に用意しておいた温かいおしぼりを一人ずつ渡していく。実はこれ、今朝生やしたサルビア・ディビノラルの葉っぱを煮出した液につけておいたやつ。到着直前に作ったのでまだ熱い。成分を含んだ蒸気に当たると幻覚作用が働くんだってー。遠慮なく手や首筋だけでなく顔も拭いてくれるので効果はきっと高いと思う。


「さぁ。どうぞ。あちらで店主が待っております」

おしぼりはその場で回収、玄関の器に戻し、居間へ案内する。

席に着いたのを確認してキッチンにお茶セットをとりに行く。

エンジェル・トランペットとミントのお茶はまだ出さない。ただの水出しミントティーを渡して下がると見せかけて、どこぞの家政婦のようにこっそり覗く。


「初めまして。店主のマリリンです。この度は大量の取引に遥々村までお越しいただきまして、感謝申し上げます」

私のいる扉から一番近い下座に、扉に背を向けて座ったマリリンさんが、正面上座の宮司へ挨拶する。


「うむ。ワシは代表のキムラじゃ」


キムラって木村? 日本人名なんだけど!

驚く私を置いて、サクサクとマリリンさんは取引を進めていく。


「こちらが商品になります。いかがでしょうか」

机に10点ほど並べたアクセサリーを確認しているようだ。今回用意したのは普通の一連ネックレスにブレスレット。色は全てカスタードクリーム色だよ。一番熱心にみているのは輿に乗っていたと思われる偉そうな人。

マリリンさんの手首に嵌るブレスレットも確認して、眉を顰める。

「……これは。確かに、形に間違いない。しかし……色味が贄の雫とは違うようだ」

キムラの隣に座った小鳥を肩に乗せた通信役?っぽい人に話しかけた。


「ニエノシズク? そんな別名があるのですか?」

マリリンさんがそれを拾ってキムラに話しかける。


「……。店主殿こちらは誰から? 以前は村人から委託を受けたということだったようだが」

キムラはそれに答えることなく、逆に出処を探った。

「うふふ。秘密です。ごめんなさいね。仕入先は明かせないんです」

約束した通り笑顔できっぱり情報開示を拒否ってくれるマリリンさん。頼もしい。


「……店主殿。これとは別に同じく均等に揃った正円であり、青みがかった商品はないのだろうか」

腕を組んで、悩みつつキムラが聞いた。青って言った。何故知ってるのか。これはビンゴなんじゃない?


「青、ですか?」


「もしくは薄い桃色でもいいのだが」


「お客様はこの宝石について詳しいのですね。実は青みがかった物も少しならご用意があります。……ただこちら、稀少価値が高い為、少しお値段が張りますが、よろしいですか?」


おお! マリリンさんがふっかけている! 単純に1割のみの手持ちだからか、加工前で10倍もふっかけはじめた!


キムラは、その値段を聞いて流石に驚いている。マリリンさんはいそいそと近くの箱にしまって置いた現物を取り出し、キムラに見せる。


「おお! これは正に贄の雫よ! 店主よ!

実は、これは貝から採れるものではなく。人外から生み出る物なのだ。少し青みがかっている色。そして、この均一な形がここまでの数揃う事も自然物ではあり得ないのだ。私等はそれを生み出す者を探しておるのだ!」


ビンゴ! 確定! 初めにして当たりだ! こいつらはクヴァレを探しにきた。変態宗教関係者だ!


「まぁ!」

マリリンさんは大きく開いた口を手で隠すように当て、目を見開いている。あああ。クヴァレが人外ってもしかしてバレた!?


「それでは、この商品を買い取るというのは嘘だったのですか!?」

クヴァレのことで驚かれたのかとおもったけど、違ったようだ。商売人のマリリンさんは、売買が成立するか否かだけが気になるようだ。


「嘘などと人聞きの悪い事を。そうではない、が……」

「でしたら用意した品は買っていただけるのですね!」

「いやいや、そうとも言っておらんだろう」

「どちらなんですか? 買うんですか? 買わないんですか? ネックレスが一本300万、ブレスレットが100万。5本5本の10本で、締めて2000万。青みの強い物も入れるなら、そうですね。ぽっきり1億よ!」


真剣な目で見つめながら、はっきりとしかもどさくさに紛れて更にぼったくり価格を主張するマリリンさん。もしかしなくとも揮発したディビノラムの効果がマリリンさんにも出ちゃってそう。玄関に置いてたからなぁー。


「……ええい。五月蝿い! 元はと言えばこれは全て我らの物なのだ! 金など払う必要はないのだ!」


おっと、初めから偉そうだったけど、本性出てきたよ! 手加減はいらないね!

私の出番だ!


私はマリリンさんに声を掛けた。


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連載再開までコチラの短編コメディはいかがですか?
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