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観察

この世界には小型の動物ばかりで移動手段が基本徒歩しかないらしい(マリリンさん情報)。乗り物なんてものもなく、雨が少なくて砂漠も多いからスキル持ちでない限り自分の集落を出る人ってほとんどいないんだって。それを聞いて、旅してる設定だった私達ってよく不信がられなかったなと思った。これも優しさでできてる村民性のなせる技だろうか。


ただし、魔法のある世界なので連絡は取れるんだって。お手紙お届けーってノリで魔法の小鳥さんがやってきて伝言してくれるらしいよ。名前と大体の住所が必要らしいけど。一集落に一人はスキルを持った人がいて商売にしてるんだって。マリリンさん宅に街から来た伝書鳥さんがやってきて明日着く予定だって教えてくれたらしい。


あの後、幻覚効果が高過ぎてマリリンさんの分はポットを分けないとまずい! と慌てて前回買ったのと同じ物を念の為2つ追加購入した。お陰で我が家の食器棚は皿よりポットの数が多くなった。ちなみに食器棚は最近DIYに目覚めたクヴァレくんが器用に木材で作ったものである。釘は用意できなかったので相欠きっていう凹凸に削って嵌め込む方法を検索して教えてみた。ヤスリの代わりに砥草というアスパラみたいに節のあるツクシの仲間を乾燥させたものを使用している。さすがに工具は真珠売買で入手したお金で購入したよ。


今は作り置きしたお茶を淹れた陶器のポットを持ってマリリンさんのお店に運んでる途中。茶葉は煮出した後、濾して間違いないようにブツ入りにはミントの葉っぱを浮かべたよ。本当はウロにいた方がいいと思うんだけど、アジト突き止め作戦を話したら離れなくなったクヴァレも一緒にポット(毒なし)を持って歩いている。


「クヴァレくん。遠見で村に向かってる集団って探せる?」

「はい。水の流れを感知できれば見ることができると思います。さっそくやってみますね」

立ち止まって目を閉じたクヴァレ。目が水鏡みたいに作用して遠くの景色が眼裏に映るんだって。便利だよねー。工具と共に新調したちょっとぶかっとした生成りのシャツとズボンもシンプルだけど良く似合っている。ずっと肩出しワンピースだったからか、まだ男の子というより彼シャツはおった女の子に見えてしまうのが難点か。袖が長いので指もちょこんとしか出ていない。萌え袖は健在である。


「輿に乗っている人が1人、それを担いでる人が2人と側で歩いてる人が1人いるようです。全部で4人。全員男性のようです。恐らく歩いている人物は伝達魔法が使えるものだと思います。小鳥を連れていますから」


「クヴァレの見覚えのある人っている?」


「……輿にいる人物は影になって見えないのでわかりませんが、他ははじめて見ると思います。ただ服装が似ている……」


服装。遠見は終わったので、また歩きながら話す。


「どんな感じなの?」

「神殿の神官たちは、なんというか袖が膝のあたりまである留め具のない上着に紐で腰に固定する長い袴と言うズボンを履いていました。それと黒く長い帽子ですね。その特徴がそっくりです」


んーっと。もしかして和装?

「着物とか着てる?」

クヴァレが若干驚いている。

「良くご存知ですね。そうです。あの国の一般の人々は着物を着ていたと思います」


「クヴァレも昔着ていたの?」

「それが……よく、考えたのですが、両親といた頃の記憶がほぼないようなんです……両親とどこかで住んでいたのは確かなんですが、事実と認識できているだけで、思い出や記憶がないようで……わかりません。

神殿でのことも結構ぼんやりとしていて。遠見も捕らえられた頃は逃げ出したくてずっとしていたと思うんですけれど、だんだんと何も考えられなくなって、常に負の気持ちだけを抱えて心を動かさないようにただ水に漂っていました。

何もかも実感がないんです。苦しめられる時以外は」


おぉ。それは実態すらクラゲのような生活を送っていたってことかな。それはともかく服装だよね。

「私のいたところもむかーし着物が主流だったんだよ。だから成人式とか卒業式とか式典の際やお祝い事とかで着物を着る風習があってね。神殿っていうか、神社仏閣という宗教施設があってそこの人達は袴だったり、一部がながーい帽子、烏帽子帽だったり、白の上部に朱色の袴の巫女服だったり着てたんだよね。島国だったから文化が似たのかなー?」


「そうなんですね。……おそらくとても似た恰好であると思います。先月街まで遠見をした限りでは同様の恰好は見受けられませんでした。確か、あの国には珍しい転移魔法を使える者も捕らえられていて使用されていたと記憶しています。僕が遠見できる範囲はここから街くらいまでなので、僕が遠見をした後に街まで転移魔法で送ってそこから歩いて来ているのかもしれません」


「真珠を売った宝石店が繋がりがあって、鳥で連絡、真珠を確認して村まで様子見に来たって感じかなー」

マリリンさんが真珠を売りに行ってくれてから今はちょうど一ヶ月半ほど。すぐに転移して確認して出発してれば、明日着くのも計算が合うね。


「僕から生まれる真珠は少し自然の物とは色味が違うそうです。強い感情を抱いてる時に流すと青みがかっていたり、ほんの少しだけ桃色だったりするとか。形も天然物だと丸くなるものが少ないのですが、元が水だからか僕の流す涙は全て丸い形に揃っていて高く取引できるそうです」


確かに、これまで気にしていなかったけれど少し黄色いものが多い気がした。あとは一部薄い青いものがあったような。そうだ。ラフレシアさんを生やした時にでた真珠はかなり青かった気がする。


「それじゃあ、神殿の資金源になってたんだね。きっと。

クヴァレを私がさらって半年は経つからだんだん財政が苦しくなってきてるのかも。だから、直ぐに人がきたのかもしれないね」


そんなことを話しながらマリリンさんのお店に着いた。その日は明日の面会の為にマリリンさんが長に掛け合って用意した空き家を掃除して、クヴァレの隠れられる場所も探索、確保。ベッドも布団も貸していただいて一泊させて貰った。

久々の家、人間らしい生活にどうしてウロに住んでいるのか今更ながら少しの疑問を覚えたのであった。



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連載再開までコチラの短編コメディはいかがですか?
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