実験
「ナナシちゃーん! 街で売ってきたわよーーー!」
珍しくマリリンさんが我が家まで来てくれた。(通常村人はラフレシアちゃんが臭いので近寄らないし立ち入らない)
ちょうど外に出ていた私は話を聞くために藁ベンチ(旧藁ベッド言い方変えただけ)へ案内する。
「どうぞ、座ってください。粗茶ですがこちらもどうぞ」
「ありがとう! まぁ、このお茶は何かしらスーッとして暑さが和らぐわ〜」
「ミントティーです! 気に入ってもらえて良かった」
いつものウロ栽培這い寄る系水出しハーブティーを出して、私も藁ベンチに一緒に座る。
「で、どうでした?」
「それがね。ちょうど探してた人がいるとかで、街の宝石店で500万で売れたのよー!」
ごごご、ごひゃくまーん! 小金持ちだー!
「しかもまだあるって言ったら、もっと買いたいって凄く買取に乗り気でね。一度村まで来るとも言ってたの」
いきなり当たりかも。村に来て確信したら丁重にお出迎えしないとね!
こっちも入念に準備をしないと!
「それで……はい! 350万! ナナシちゃんの分よー!」
どさっと重そうな袋を渡される。開けてみると黄金の五十円玉のようなものが紐に結ばれて入っていた。10cmくらいの束が35本かな。
「わー! 金貨なんて見たの初めてー!」
「ナナシちゃん……これまでどんな生活を……」ホロリ
この世界では、一万が金貨一枚、単位ごとに硬貨が違って、銀=千、銅=百、鉄=十。一の位はなし。大量のお金は高価な宝石に替えている人が多いんだって、だから真珠も需要がある。
「買い取ってくれた人って他に何か言ってました? またネックレスがいいんでしょうか?」
「それがなんでも良いみたいねー 高額を提示するのに形態は拘らないなんて不思議よねー」
ますます怪しい。
「マリリンさん。出来れば変なトラブルに巻き込まれたくないので、私が売ったことは秘密にしてもらえませんか?」
「売買に対してまだ村の人から委託されたとしか伝えていないから大丈夫だけど、トラブルになるの?」
「家族がいるので、慎重にいきたいんです。あ、でも先方が訪れる時はお茶出しでもなんでもむしろ積極的にお手伝いさせて下さい!」
「それは助かるわ〜 通常なら街から村まで一月くらいかかるから最短でも到着はそれくらいになるんじゃないかしら」
「それじゃあ、それまでにおもてなしの準備しておきますね」
「うふふ。お願いね」
マリリンさんが帰って早速ウロの裏で緑の魔法さんの力を使う。
「緑魔法さん! 目と胃と肺に優しい幻覚作用多めのエンジェルトランペットさんを生やして下さい!」
エンジェルトランペット。可愛い名前に反してその毒性は高い。見た目が名前の通り天使の吹くラッパに似ている。百合の花に似ているけど花弁は別れておらず、鈴蘭のように群れ、垂れ下がって咲くその姿は可憐だ。日本にもその見た目から庭で育ててる人も結構いるみたい。ナス科 キダチチョウセンアサガオ属。色もピンク、黄色、オレンジ、白と多彩。今回は白色にしたよ。
全ての部分に毒を含み、瞳孔の拡大や幻覚を起こす他、嘔吐、痙攣、呼吸困難などもおきるそう。
手で触るのもあんまり良くないらしいんだけど、なにもないからしょうがない。花の部分ではなくごぼうみたいな根を採取して、乾燥させておく。これをミントティーに混ぜて振る舞う予定である。
「あ、クヴァレー! これ危険物なので触らないでねー!」
「ナナシさん……? 危険物ってもしかしてまた匂いが凄いとかそういう……」
「ううんー! 毒なのー! 食べたり触ったりしちゃダメだよ!」
「……毒!?」
ウロの周りをリハビリ兼お散歩中のクヴァレは目を白黒させている。
「あの白い花が咲いている植物が花も茎も根っこ葉っぱも全部毒性があるから気をつけてー!」
ここ一週間のうちに、いただいた金貨を一応クヴァレに了解を取って一枚使わせてもらって、新しい茶器をマリリンさんのお店で揃えた。鍋も購入して、水じゃなくてお湯を沸かしてミントと一週間乾燥させてからっからのブツ(私が転移してから何故か雨が一度も降ってないから外に置いとくだけで乾いた)を煮出して実験する。ちょこっとだけ舐めて味を確認。うん。土臭いかと思ったけど少量だからかミントが強く普通に美味しい。なんとなく甘い香りもついた。大丈夫な気がする。ってあれーなんかくらっとする?
「ナナシさん? 大丈夫ですか?」
振り返るとほぼ裸体の男性がいた。声からしてクヴァレくんの筈だ。
「あれークヴァレいつの間にそんなに大きくなったのー?」
「ナナシさん? 何を言って……」
目の前にいる長身短髪のキラキライケメンは大事なところにだけ葉っぱ(あれはさつまいもだね)がある仕様で微笑んでいる。体型はいわゆる細マッチョだ!
「すごーい! 美形ー!! 筋肉も育ったんだねー! 最近筋トレ頑張ってたもんね!」
「ナナシさんどこ見てるんですか……? 僕はもっと下ですが……?」
美形で細マッチョなクヴァレはふわっと空に浮き上がり軽く手を振りながら上へ上へと昇っていく。
「あれー? クヴァレさんやーい どこにいくのー?」
「ナナシさん僕はここにずっといますよ……? なんで空を見てるんですか……?」
多少クヴァレに迷惑をかけたけれど、幻覚を見せるお茶実験は概ね成功したと言えよう まる




