神さまと
「神さま こんなところにいていいんですか?」
外の藁ベッドに腰掛け、物物交換したカップで水出しハーブティーを嗜んでいた時に神さまは現れた。
人口増加に全く手をつけていないことをつつき、話は終わったかに思えたが、続きがあるらしい。
とりあえず、唯一の椅子(藁ベッド)を譲った。ハーブティーも飲むだろうか。しかしカップがない。
「うん。言い忘れたことがあってね。君、全然気付かないから」
え?なになに
「身体、若返ってるよ。人口増やすのに若い方がいいかなって。
多分16才くらいじゃない?」
なんですと!
「嘆いていた欲求も加齢によるものでもあるから
若返って楽になったでしょ」
たしかに。
あんなに悲観してたのに、クヴァレといてもこれっぽっちも襲おうって気にならないなーって思ってた。
年齢によるものだったんだ。更年期とか、女性ホルモンのバランスとか、そう言うの関係あったのかも。
これならあと数年くらいは我慢できそう。
「ありがとう! 神さま!」
「うん。それから、大事なことだからもう一度。今度はよく覚えてね」
なんだろう。何か忘れてることあったっけ?
「魔法の対価は寿命だよ。君はバンバン魔法を使いまくっているけどね。
命の残りを蝋燭に喩えるなら、せっかく若返らせたのに、その分は既に削れてしまったよ」
寿命……。魔法の対価。そーいえば、そんな話をされたような……。
「あー。老化が進むーとかじゃないんですね。ある日寿命が尽きるとピンピンコロリ系ですか?」
「そうだよ。いいかい。魔法を使うと鼓動が速まるだろう? 人間の生涯脈打つ回数はだいたい決まっているんだ。何故って心臓は使えば使うだけ損なわれるからだ。酷使すれば負担も高まりそれだけ早く使用期限が来る。人外ならば内側を構成する素材が違うから自己回復するけど、君は人間だ。臓器を回復することは出来ない。
植物を育てるのに必要な時間に比例して、君の鼓動も速くなり、心臓に負荷がかかっている。よく考えて魔法は使うんだ」
神さまが心配してくれているのはわかる。
でもさ。神さま。私は多分、後悔しない。好きに生きたいんだ。だから、これからも魔法を使いまくると思う。
何も言わない私の心の声をよんだのか、
しょうがないなとでも言うようにため息をついて神さまは言葉を続けた。
「それにしても、私としては良いパートナーを召喚して
長く生きて何人でも子どもを産んで欲しかったんだけど。
まさかあんな条件で対象外を召喚してしまうなんてね」
「え!? クヴァレは子どもできないってことですか!?」
サングラスで顔が見えないけど、眉が下がったような気がする。
「今の状態では機能が未発達だからね。
彼が精神の安定をもってして成長しないことには夫婦にはなれないよね」
「精神が安定したら、成長するんですか? 年をとるだけじゃ駄目なの?」
「彼は人魚とのハーフで、外見は人間なんだけど、内側は人魚なんだ。
基本的に不老で、いつまでも一番良い状態の美しいままのはずなんだけど、
酷い目にあってから抑制してしまっているんだろう。
幼少の記憶が朧で、真名を思い出せないのも痛手だね」
なんか難しいんですね。
「と言っても、もう一度召喚をやり直すことはできない。
新しい相手は自分で探してね。男は彼だけじゃない。
ここでは縛られなくていいんだ。いくらでも選択肢がある。頑張って」
そう言って神さまは消えてしまった。




