戦利品
しまった! 火をつける道具をなにか替えてもらうんだった!
もうすぐ家(巨木)と言うところで気付いてしまった……。
焼き芋……。
「まぁ、今度行った時で……」
あ、腐っ! なにこの臭い! ってラフレシアちゃんじゃーん!
良く考えずに人避けになるかと思って出したけど、めっちゃ強烈!
ハエが大量に集ってるし!
あぁ……荊棘でぐるぐるにしたんだっけ。
これどうやって、入ったらいいの?
考えなしだった。中の少年は大丈夫だろうか。
なんか不安になってきた……
緑の魔法で過剰育成し、枯らしながら、
替えてもらった鎌で茎をザクザク切って行く。
ごめんねーせっかく生えてくれたのにー成仏してねー
ふぅ。なんとか入れそう。
「道連れくーん帰ったよ〜」
「ナナシさんっ! お帰りなさい! 大丈夫でしたか?!」
中で少年が涙ぐみながら顔も髪まで少し青くして待っていた。
「何事!?」
「ナナシさんが行ってから、突然ズザザザザって凄い音がして……何かが死んだような臭いが立ち込めてきて……遠見も試したんですが、何かに邪魔されて全然見れなくて……動けないから何も出来なくて……僕……僕……」
ああ〜! もしかして、荊棘さんにお願いしたから、魔法的ななにかで見えないようにしてくれてたの!?
ラフレシアちゃん要らなかった……みたいな?
「すべて私がやりました。すみませんでした!!!」
そんなことになってるとは知らなかったんだよー!
ぽろぽろぽろぽろ真珠をこぼす少年を宥め、泣き止ませ。
今日の戦利品を着てもらった。
「あ、ありがとうございます……僕のために……服……」
おっと、待った! また泣きそうになってないか!?
「あ、当たり前だから! 私の為でもあるから!」
だばー
滝のようだよ! すんごい大玉真珠になったよ! 占いとか出来そう!
感動しぃなんだね〜少年は
人前では気をつけないと。
「クヴァレ。パンも分けてもらったんだよ!
一緒に食べよう?」
「パン……は遠見で見たことがあります。
食べたことがあるかは、思い出せないけど……」
やっと泣き止んだ少年に
丸くて固い手のひら大の茶色のパンを半分こして渡す。
辿々しいながら、もう手も動かせるようになったクヴァレに食べさせる必要はない。
雛鳥みたいに可愛かったから、ちょっと残念だけどね。
「ふぉー久しぶりの炭水化物! しあわせ〜!」
「ナナシさん。僕のも、よかったら……」
「え!? クヴァレ、美味しくない!?」
「お、おいしいです……でも、魔力を含んでいない食べ物は僕には勿体無くて……」
「そんなの美味しかったら気にしなくていいんだよ!
いい? 美味しいは正義! はい。クヴァレも!」
「お、おいしいは……せいぎ?」
「そう! 美味しいもの食べるとしあわせになるんだよ?
それも、美味しいねって言い合える人がいるなら、もっとね!」
「………そ、う、ですね。ナナシさんと一緒に食べられるのは、
し……あわ、せです」
クヴァレの方からポロポロ音がする。
「! さては、また泣いてるな!?」
「ご、ごめん……なさぃ」
「もう。泣いてる奴はぎゅってしちゃうんだからね!」
セクハラ三昧だぞ! 気をつけろ! スキンシップに飢えてるんだぞ!
「……ぎゅ、してください……」
ごきゅ。
大きく喉が鳴った。
皮膚が通常に戻ったクヴァレは、非常に美しい見た目をしていた。
白く透き通るような肌(実際透けてた)、血色が良くなり色付いた薄ピンクの頬に唇。
流れるようなテグスのようなツルツルの髪、長いまつ毛。
くっきりとした二重瞼に隠された瞳は当たる光によって色が変わるフローライトが嵌まっているかの様。
商店で替えてもらった、古着のワンピースはダボっとしていて肩ははみ出し、自然と萌え袖に。
なんということでしょう。完璧な美少女がここに!
「……してくれないんですか……? ……ぃや……ですか……?」
苦しそうに柳眉を八の字にして、ポロポロ真珠の涙を流す。
対して、私はダボっとしたVネックの焦げ茶のニットに
下はポケットの大きい生成りのゴムパンツ。装飾のない黒のショートブーツ。
マスクで隠れるからって、眉毛以外整えていない顔。尚、マスクは自由を叫んだ時に捨てた。
電車で暑くて手に持っていたコートはタブレットを見せるのに邪魔でカバンの横。
ポケットにはハンカチすら入っていなかったっていう……。無一文での転移だった。
じょ、女子力!




