⭕ 呪いの家 2
「 ………… 」
「 どうしたの、ユタク君? 」
「 ……僕…バスに乗れないです…。
バス代…持ってないから… 」
「 そう言えば、隣町から1人で歩いて来たんだっけね? 」
「 はい… 」
「 いいわ。
優しいお姉さんが、バス代を貸してあげる。
500円あれば足りるでしょ。
それから──、ユタク君がちゃんと安全にお家へ帰れるように、御守りをあげる 」
「 御守り?? 」
「 そっ!
此処等辺は割りと物騒なのよ。
結構、有名な団地だからね 」
「 有名な団地…?? 」
「 ユタク君は知らなくていいのよ。
未だね。
知りたいなら、親に教えてもらいなさい 」
空き家の持ち主らしいお姉さんは、僕に500円玉と金色のワッカをくれた。
ワッカには首から掛けれるように黒いゴム紐が付いている。
お姉さんはワッカのゴム紐を調節して僕の首に掛けてくれた。
「 ワッカは服の中に入れときなさい。
プールや温泉に入る時以外は身に付けていなさい 」
「 ……有り難う…御座います… 」
「 ほら、帰った帰った! 」
「 は、はい… 」
お姉さんに追い出される形で、僕は空き家の門から出された。
お姉さんが手を動かして、僕にシッシッをしている。
「 あの…お姉さん! 」
「 なぁに、ユタク君。
未だ何かあるの? 」
「 あの……未だ…お姉さんの家の中に…サユタ達が居るんです…。
“ かくれんぼ ” してるから…見付けないと… 」
「 そう言えば、悪ガキが何匹か居たんだったわね。
「 お姉さんの家の中に何人隠れてるの? 」
「 5人です…。
サユタ,ノブト,タクマ,イツキ,ハルト…です 」
「 そう…。
隠れてる悪ガキ共は、ユタク君の代わりにお姉さんが見付けてあげる。
たぁ〜〜ぷり、お説教した後、追い出してあげるわ 」
僕はお姉さんに御礼を言って、空き家を離れた。
お姉さんに言われた通り、僕は歩いて帰らないで、バス停に並んだ。
バスが来たら、迷わずバスに乗って、最寄りのバス停まで乗った。
バスに乗っている間に、みるみる内に空が曇り出して来た。
最寄りのバス停に到着したら、バスを降りて、雨が降りださない内に自宅を目指して走った。
「 あら──、ユタク。
今日は随分と早いのね 」
「 お母さん…。
雨が降りそうだから… 」
「 そう 」
「 お母さん…今から出掛けるの? 」
「 何よ、悪い?
合鍵とご飯代はテーブルの上に置いてあるから、何か買って食べなさい 」
「 はい…。
行ってらっしゃい…お母さん… 」
「 お母さん、今日は帰らないから、戸締まりしてから寝なさいよ 」
「 はい… 」
お母さんは何時もより派手でお洒落な着物を着て出掛けて行った。
今日も帰って来ないんだ…。
今日は何処のオジさんとデートするんだろう……。
僕は泣きたいぐらいに寂しい気持ちをグッと押し込めて、ドアを開けて家に入った。
3重になっている玄関の鍵を掛けたら、部屋の電気をつけて、直ぐに部屋の窓の鍵を閉めて回った。
カーテンがあれば、カーテンを閉める。
リモコンでテレビの電源を入れたら、冷凍庫の中に入っている冷凍食品を出して、電子レンジでチンする。
明日は土曜日だから、未だ3連休ある。
お母さんは月曜日の夜まで帰って来ないかも知れない。
テーブルの上には自宅の合鍵と5千円札が置かれている。
明日、晴れたら冷凍食品を買いに行こう…。
僕はレンチンした冷凍食品の炒飯を、一口30回ずつ噛んで時間を掛けて食べた。
「 ……明日もサユタ達と会わないといけないのかな…。
嫌だな…。
もう…サユタ達とは関わりたくないよ… 」
僕はテレビを見ながら1人言を言った。
1人ご飯は寂しい……。
美味しい筈の炒飯も味がしない……。
僕は何故か……あの空き家で会ったお姉さんに会いたくなった。
ちゃんと住んで居たんだ…。
お姉さんに借りた500円を返したいな。
明日…行ってみようかな…。
雨が降り出したのか、強い雨音が聞こえて来た。
お姉さんが言った通り、本当に雨が降った。
朝の天気予報が外れた。
明日は晴れてほしいなぁ……。