⭕ 呪いの家 1
「 よ〜し、着いた!
これから此処で “ かくれんぼ ” するぞ! 」
「 ウェ〜〜〜イ! 」
「 えっ…でも此処って……ヤバいトコじゃね? 」
「 うん、そうだよ。
あの、呪怨のモデルになった家だってさ! 」
「 え゛ぇ゛っ?!
あの呪怨のモデル……ガチマジでヤバいトコじゃん!! 」
「 こんな所で “ かくれんぼ ” するのかよ?!
マジで止めようぜ!! 」
「 馬ぁ〜鹿!
雰囲気が “ 如何にも何か出そう ” ってだけでモデルになっただけなんだぜ。
本当に “ 出た ” なんて噂は無いんだよ。
此処はただの空き家だよ。
怖がんなって!
未だ朝なんだぜ 」
「 そ…そっか……そうだよな?
未だ昼前だもんな!
出るわけないよな? 」
「 お…面白そうじゃん?
空き家で “ かくれんぼ ” なんてさ。
度胸試しにはいいんじゃないのか?
臆病者は居ないよな? 」
「 居るわけないだろ〜〜〜。
なぁ、ユタク! 」
「 えっ……僕は……怖いよ… 」
「 おぃおぃ、ユタクぅ〜〜。
怖がるなよ〜〜。
ダチのオレ達が居るだろ。
背筋伸ばしてシャキッとしろよな!
ユタクのへっぴり腰ぃ〜〜 」
「 …………サチタ…人の家に勝手に入るのは…良くないよ…… 」
「 良い子ちゃんかよ、ユタク… 」
「 空き家だって言ってるだろ。
誰も住んでないんだよ。
空き家に入ったって怒られねぇよ! 」
※ 不法侵入で犯罪です!!
「 ほらほら、入るぞ〜〜 」
「 あっ、鬼は誰がやるんだ? 」
「 決まってんだろ?
オレ等のユタクちゃんだよ!
家の中に隠れたオレ等をユタクに探させるんだよ 」
「 何だよ、それ!
超面白ぇじゃん! 」
「 賛成ぇ〜〜、やろうぜぃ! 」
子供達は空き家の敷地内へ入ると、玄関のドアを開けた。
子供達は土足でズカズカと空き家の中へ入る。
「 うわ〜〜。
結構、良い部屋じゃんかよ…。
リビングなんて俺んちより広い! 」
「 お〜い、風呂場に来てみろよ!
ジャグジー付いてる! 」
「 やべぇ……トイレが最新式の洋式だよ… 」
「 このキッチン、ママが喜びそうだよ! 」
「 なぁ…此処ってさぁ、本当に空き家なのかな? 」
「 いやでも…埃被ってるし、蜘蛛の巣あるし、人が住んでる気配ないよ 」
「 おーい、集まれよ。
“ かくれんぼ ” 始めるぞ!
ユタク、其処の柱に顔を付けて、ゆっくり50数えろよ。
目はちゃんと瞑るんだぞ!
オレ達は隠れるからな。
隠れ終わったら、メールを送信するから5人分の着信を確認したら探し始めろよ。
いいな? 」
「 分かったよ…… 」
僕はサユタに逆らえないから、言う通りにする。
本当は空き家の中で “ かくれんぼ ” なんてしたくないのに……。
柱に両手を当てて、手の甲にオデコを付けた。
両目を瞑った僕は、サユタに言われた通り、ゆっくり50を数え始めた。
僕のポケットに入っているスマホがブルブルと鳴る。
ポケットからスマホを出して、画面を見るとメールの着信が5件入っていた。
僕は空き家の中で隠れているサユタ達を探す為に歩き出した。
「 居ない…?
皆…2階に隠れてるのかな? 」
隈無く1階を探してみたけど、サユタ達の姿はなくて……。
2階に上がるの…怖いなぁ…。
階段を上がろうとしたら、声を掛けられた。
ゆ…幽霊?!
僕は恐る恐る声のした方へ振り返ってみた。
「 あ…あの…… 」
「 あらあら、また可愛い泥棒さんねぇ。
人様の家に土足で上がり込んで、何を盗もうとしてるのかな〜〜? 」
「 あ……ちが… 」
「 不法侵入は立派な犯罪よ!
此方へ来なさい!
はぁ〜〜〜全く…、最近のガキ共は〜〜。
人様の家に入ったら駄目だって親から言われてないの? 」
「 ご…御免なさい… 」
「 怖がってないで来なさい 」
「 は…はい… 」
「 ──小さな泥棒さん、君の名前を教えてくれる? 」
「 …………泥棒じゃないです… 」
「 お姉さんから見たら、君は泥棒なのよ。
名前! 」
「 …………ユタク…です 」
「 ユタク君ね。
ユタク君は、お姉さんのお家に不法侵入して何をしてたのかしら? 」
「 …………かくれんぼ…です… 」
「 かくれんぼ?
人ん家に土足で上がり込んで、かくれんぼ…。
ユタクは何処の学校に通ってるの? 」
「 ……西…御…丞晏小学校……です… 」
「 西御丞晏小学校って──、隣町じゃないのよ。
ユタク君、バスに乗って態々来たの? 」
「 えと……僕は歩き…です。
サユタ達は…バスで来たと思います… 」
「 サユタ達ぃ?
ユタク君の友達? 」
「 ……ただの…クラスメイト…です… 」
「 クラスメイトねぇ。
ふぅん…言うじゃないの。
ユタク君、そのサユタって子達に苛められてるんだ 」
「 えっ…ちが……違います… 」
「 あらぁ、意地悪されてるのに、庇っちゃうんだ?
優しいんだねぇ、ユタク君は 」
「 そ…そんな事…ないです… 」
「 ユタク君、苛めは犯罪なのよ。
悪い事なの。
悪い事をして喜んだり、楽しんだり、面白がってる子を庇うのは間違ってるわ。
お巡りさんに逮捕されないだけで、犯罪者なの。
ちゃんと “ お前達は、犯罪者なんだよ ” って教えてあげるのが優しさよ。
今の内に “ 悪い事をしてるんだよ ” って事を思い知らせてやらないと駄目なのよ 」
「 ………… 」
「 お姉さんの家に土足で上がり込んで、 “ かくれんぼ ” してるユタク君も犯罪者だから、 “ 悪い事をしてる ” って自覚して、思い知ってもらわないといけないわ 」
「 ご…御免なさい…!!
も…もう…勝手に空き家に入ったりしません…!! 」
「 ……まぁね、お姉さんも鬼じゃないし。
1度ぐらいは佛心を出してあげてもいいわ 」
「 あ…有り難う…御座います…… 」
「 ユタク君、今日はもう、お家へ帰りなさい 」
「 えっ… 」
「 今回だけは、見逃してあげる。
でもね、佛心は1度だけよ。
子供だろうと、次は容赦しないわ 」
「 …………はい… 」
「 ほらほら、雨が降らない内に帰りなさい 」
「 は、はい…。
……で、でも…今日は雨が降るなんて、天気予報では言ってなかった…です 」
「 天気予報も絶対じゃないの。
ユタク君、間違っても歩いて帰るんじゃないわよ。
子供の1人歩きは危ないんだからね 」