2ー 死の淵
連続投稿2本目
2/4
転移と同時にマヒが切れる。
ちょうどいいタイミングというのはこういうことか……
クソ……
『汝、何故我が聖域へ踏み入った』
私の耳に響く音は重厚で威厳を感じさせる音だった。
「嘘……再出現が早すぎる」
何で!
1回倒したボスは最低でも1月は出現しないはずなのに、その龍はいた。
【龍王大墳墓】ダンジョンボス 龍王の骸。
魔法に対する絶対的な防御性、そして物理にも高い防御性を持つ。
攻撃力も魔法1発で国を壊滅できるだけの範囲、そして威力を持つ。
さらに動きも機敏という最悪の3要素の揃った最強格のボスモンスターが1体。
見るだけで感じる圧倒的な強さ。
そして心をむしばむ恐怖。
死の鎌が首にかかっているのか、心なしか首元が冷たく感じる。
「嫌! 死にたくない!」
どうしてこうなった! 『バフの実感がわかない』とか『攻撃しない』とか意味の分からない理由で追放したあげく、こんな死の淵に立たせやがって!
私のバフの実感がわかないとかなんだ!
普段バフの攻撃力に慣れてるだけだろうが!
もしバフが無かったら苦戦していた戦いがあったことに気が付いていない!
それにフールの方が何もせずにパーティーメンバーにまかせっきりじゃないか!
――そう思うとめちゃくちゃ腹が立ってくる。
私の笛をバカにされたことを含めると、100発は殴らないと気が済まない。
「――まずは目の前の難関を突破してやる!!」
あいつの顔面を殴るのはそれからだ!
持っていた武器はメイン武器の大笛以外の中笛と小笛!
これでもやってやる!
『汝は我に害なす者であるか!』
「こんなところで死ぬのだけはまっぴらごめんだ!」
中笛を担ぎ、ボスに向かって走りながら腰に取り付けてある〈攻撃上昇 小〉〈防御上昇 小〉〈魔力上昇 小〉〈速度上昇 小〉〈自動回復 小〉の小笛を吹いてバフを自分にかける。
「まずは1発! 【多重演奏】!」
龍の大きな足を中笛を思いっきり叩き付け、同時に〈バフ効果上昇 大〉〈体術上昇〉〈ダメージ倍率上昇〉〈破邪〉〈アドレナリン〉〈音壁〉のバフを自分にかけていく。
攻撃しなくてもバフをかけることはできるし、相手は最初1発は譲ってくれるらしいが、安全のために攻撃と同時にかけることにする。
『我が聖域に踏み入るでない!』
龍の頭についている球が白く光り、その光が地面に落ちる。
それと同時に魔力によって生み出された衝撃波がボス部屋の床に細かいヒビをバキバキという音と共に入れながら衝撃波が走る。
「ガハァ! よくも……絶対にぶち殺す!」
白い衝撃波が体に直撃し、ダンジョンの壁に衝突するが、すぐさま体制を立て直し、龍の顔面に中笛をたたきつける。
ダイィン!!という音が響くと同時に龍の顔が大きく震える。
『我が体に傷をつけたな!』
「知るかそんなもん! さっさとくたばれぇ!」
相手が攻撃をする前に顔面を殴りつけるとさらに大きな音と共に龍が大きく吹き飛び地面に衝突する。
『何なのだこの火力は……』
「うるさぁい!」
ガイン、ガインと頭部を殴ると、同時に尻尾の部分も大きく震え、ダンジョンの壁にたたきつけられる。
『ぐルォォ!!! 我の怒りに触れたな! 死ぬがいい!』
龍が咆哮を上げ、私を吹き飛ばすと高く上昇し、頭部が赤く光り輝きながらぐるぐると回っている。
「黙れ! 今! 私は! 人生の瀬戸際なんだよ! さっさとクタバレぇぇぇぇ!!!!!」
大ジャンプをして龍の体をぶん殴ると、バゴォォォンと大きな音が鳴り、龍の体が地面に衝突、壁に衝突する。
『ど…… どうなっている……』
「死ねぇ! 死ねぇ! 【爆音】! 【多重演奏】!」
何百もの音符が実態を持ち、龍の体に触れ、大爆発を起こす。
龍の体にはどんどんとヒビが入っていき、先端が砕け散る。
『グ…… グルォォォ!!!!』
龍の体全体にひびが入り、中から別の何かが姿を現す。
「まだ死なないか!」
評価よろしくお願いします。
ネクスト3時