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クロユリ8  作者: 清水さゆる
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こちらは没原稿。ところでクロユリってどこで売ってますか?

ここに色褪せた国旗が交差している。

 一つは黒地に銀の百合の意匠。かつてこの大陸に忽然と現れた強国の、神話じみた奇跡の軍勢の旗である。

 もう一つは群青に金翼の狼の意匠が描かれる。天狼旗と呼ばれ、湖水地方独立とともに颯爽と戦場に翻った。

 どちらの旗にも、旗手の精神が象られている。

 かつて、歴史に牙向き、時代を駆け抜けた獣が在った。英雄の名は三百年経った今でも人々を惹きつてやまないが、もう一つ、この地の歴史を紐解くにあたって、名前のない伝説についても触れておかねばなるまい。

 緋い月蝕みの魔狼、緋月狼マーナガルムについて。

 乙女の姿で顕現するという荒野の神には、名前がない。唯一、イスガル第二公女が黒百合の軍旗を持って狼頭の神に戦勝祈願を行ったという一文が、イスガルの国立公文書館に保存されていた軍事記録の中に残されてさえいなければ、彼女は絵画や物語、石像にのみ表され、人々の空想の中から出ることなく、一切、歴史に痕跡を残さなかったかもしれない。

 新月の夜には愛しい月を探して荒野に彼女の遠吠えが響くという。

 彼女の恋が成就する未来は、果たして……。それこそ、神のみぞ知るところである。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 評価不要とは恐れいります。 きっと村上春樹を差し置いてノーベル文学賞に望まれても、断るのでしょう。 作家として生きるならそのくらい人気になって、世の中の要請なんぞ無視して我を貫いてほしいも…
2020/07/18 13:39 通りすがりのカンスト
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