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3 じゃあ、どうする?

ここから、いよいよ、彼らの本領が発揮され始めます!


彼らは、誰かを、何かを批判するのではなく、どうすればこの事態を切り抜けられるのか、真剣に考えています。


ぜひご一読いただきたいです。




ユーリ「それより、マスクなんだけど。……薄いシリコン製のマスクだったら、顔にフィットするし、石けんをつけて洗ったり、アルコールで表面をふき取って消毒したりして、繰り返し使えるんじゃないかな?」

天平「――シリコン製で息ができるならな?」

ユーリ「――あ」

天平「ウェットティッシュを重ねたりして間に合わせのマスクとか作れればいいけどさ? ウェットティッシュもぺたーって口に貼りつくと、呼吸できずに窒息しかねないし……」

ユーリ「……紙おむつなんかは使えないかな? なんか、分厚いマスクっぽくなりそうだけど……?」

天平「紙おむつは肌呼吸できる程度の通気性はあるだろうけど、ふつうの呼吸用にならないんじゃないか?」

ユーリ「そうだね……。それに、新品のものを使うとは言っても、おむつを口にあてるの、抵抗ある人いるよね……」

天平「っつか、紙おむつを買い占める人とかいて、紙おむつも品切れになってたりして、困ってる人いるってよ?」

ユーリ「紙おむつが? え? マスクに代用するために買い占めが起きてるってことじゃないよね?」

天平「中国の工場が閉鎖して紙おむつが生産されてないから、今のうちに買っておくべきだ、みたいなデマが、ネットとかに出回ってるらしいんだ。トイレットペーパーやティッシュペーパーも、同じデマで買い占めが起きてるって」

ユーリ「いずれ品不足になるって思って買い占めるのか……。なんか、オイルショックっていうののときも、石油が輸入できないとトイレットペーパーが作れなくなるから買わなきゃいけないってトイレットペーパーが買い占められて社会問題になったって、昔の出来事を紹介する番組とかで言われてたけど。現代の日本でもトイレットペーパーの買い占めが起きるなんてね?」

天平「っつか、マジでトイレットペーパーが手に入らなくなったら、自宅のトイレなら、最悪、トイレットペーパーじゃなくて、昔風に新聞紙とか要らない紙とかで拭いて、密閉式の専用の容器をトイレに置いて、使い終わった紙をその容器に捨てたらいいんじゃないか?」

ユーリ「衛生的なこと考えると、それは最終手段かな? けど、避難所生活だと、そういうこともやってたのかな? 被災して断水してた場合、トイレットペーパーを使う意味ないもんね?」

天平「なんにせよ、本当はトイレットペーパーって国内で生産されてる分があるから、誰かが買い占めとかしなければ、ちゃんと必要な人のとこに必要な分は行き渡るらしいんだけどな?」 

ユーリ「正しい情報を入手できないと、デマに振り回されてしまうね。工場見学とかできるわけじゃないから、本当に生産されてるのか、どれくらい生産されているのか、わからないから、デマに引っかかっちゃうんだろうね?」

天平「それなんだけど、世の中のお母さんとかはさ、家族を守る使命! みたいの持ってたりするっつーか?」

ユーリ「指名……使命?」

天平「一家の中で、家族の健康を守る(かなめ)になるのって、母親の場合が多いと思うんだよ。スーパー行くと男の人もいるけど、圧倒的に女の人の方が多いの見てもさ、日用品の買い物するのって、母親がやってるとこが多いだろ? 父子家庭とかだと違って来るけど」

ユーリ「うちは母親いないけど、その代わりおばあちゃんが買い物に行ってくれてて。畑仕事用のものとか本とか買うとき以外で、おじいちゃんが買い物に行くことってあんまりないかも?」

天平「だろ? んで、買い物するときって、何が必要か考えて買っていくわけで、その何が必要か選択をするのが買い物する人になりがちなわけで――」

ユーリ「これまであんまり考えたことなかったけど、買い物する人って、けっこう重要な役どころだったりするんだ? 何を買うべきか、選ばなきゃいけないわけだから。ホントに、家族を守る使命、みたいなもの、背負っちゃうかも?」

天平「だから、どうしたって、お母さんたちって、子供の安全とか考えると、ついつい、もしものときのために買っておこう、ってなってしまうもんじゃないのか? 母親が自分だけのために何かを買い占めるってことはあんまりないだろうけど、家族の分だと、話は違ってくるっていうか。すぐに必要じゃない分も、予備や、予備の予備で買いこんじゃって、結果的に買い占めが起きてしまう、っつーことはあると思う」

ユーリ「――つまり、そうやってつい買ってしまうのを、必要な分だけ買う、にするためには、やっぱり、ちゃんと現状を把握して、これからどうなっていくのか見通せて、安心できることが大事かも……?」

天平「そだな。不安なんだ。不安。――不安ってさ、すんごいモンスターに育つことあるから要注意なんだってさ?」

ユーリ「しかも、今って、具体的な不安じゃなくて、漠然とした不安、だよね? 漠然と不安なのって、こんなに怖いことなんだ?」

天平「新型ウィルスって、治療してる人たちの間では、前より正体が見えて来てるだろうと思うけど、まだまだわかってないこととか、わかったつもりでいたら違っていることとかあったりしてそうだろ? 未知のウィルスって、『確かなこと』が少ないから、何を不安がっていいかもわからないくらい、やみくもに不安になりやすいよな?」

ユーリ「そういう漠然とした不安が、これがダメかも、これもダメかも、って。何がダメかを探して見つけて不安を具体化させようとしてしまうのかも? そして、何がよくて何がダメか問いかけてるうちに、それがデマになって、独り歩きしてどんどん広がる――って考えると、不安っていうのも、感染症の一つなのかもしれないね?」

天平「言えてる。――小牟田の方は、ほんの数日前までは、まだマスクとか売ってるとこあったけど、今は、マスクとかティッシュペーパーとかあったとこの棚がガラッと空いちゃってるから、余計に不安をあおられて、どこかに置いてないか探し回って、見つからないとまた不安になる、ってなってって……しだいにパニック起こす人が出て来たりしていきそうだよな?」

ユーリ「だったら、空になっている棚に、間に合わせで他の商品や飾りとかを並べておいて、空いた状態を作らないようにしておくだけでも、不安を取り除けるかな?」

天平「視覚から来る不安は減らせるかもな? ただ、マスクとかが入荷したときに、棚がふさがってると、サッと並べられないかも――しれないけど、マスクが入荷したら、レジ横とか、どっか、わかるとこに特設コーナー的に置いておいた方がいいか……?」

ユーリ「紙おむつは、本当に困っている人たちは、予約っていうか、入荷したら取り置きしておいてもらえるようにしておけたら、安心されるかもね? マスクはみんな必要だから、取り置きするってわけにはいかないだろうけど」

天平「……災害時には、身近にあるもので必要なものの代替品を作ったりして対応するの、テレビとか本で紹介されることあるけど。マスクがこんなに品不足になるとか思ってなかったから、マスクが足りないってことに対して、どうしていいんだか……」

ユーリ「中国では盗難騒ぎも起きてるらしいよね? 香港とかで、病院に置いてある、来客用のマスクをがばっと盗んでいく人がいた、ってテレビでやってて」

天平「あ。日本でも、病院の倉庫から大量に盗まれる事件が起きてたよな?」

ユーリ「ホントに?」

天平「盗まれたのが何千枚とかってスゴい枚数だから、転売目的かも? って言われてるみたいで」

ユーリ「あり得ない……」

天平「それに、病院のマスクじゃないけど、日常的に? 大学とか公衆トイレとかに置いてある備品のトイレットペーパーを持ってく人とかいるって聞いたことあるわ」

ユーリ「丸ごとってこと?」

天平「そ。ロールごと」

ユーリ「泥棒だよね?」

天平「泥棒だよな」

ユーリ「――ちょっと衝撃的……日本で? 日本でそんなことあってるって……?」

天平「日常的にな? だから今は、病院の『お使いください』のマスクも気をつけないとな? 日本では、がばっと持ってく人はいないかもしれないけど、一、二枚ならいいだろう、って、余分に持ってく人いてもおかしくないよな? とか思ってしまう」

ユーリ「それは泥棒だよ。こんなマスク不足のときだからこそ、そういうことしちゃいけないって」

天平「そうなんだよな。――ま、『お使いください』マスクの取り過ぎ対策としては、自動販売機みたいな機械でマスクを出すようにするとか? ほら、自由に水が飲める機械の紙コップを取り出すヤツみたいに、マスクを一枚一枚引き出して使うとかするようにするといいんじゃないか?」

ユーリ「ん? 一枚一枚引き出して使うとなると、がばっと持っていくのはやりにくくなると思うけど、数枚もっていくくらいはできるんじゃ?」

天平「『マスク出します機』にカメラをつけといて、顔認証で、一人、一日一枚ずつしか取り出せない、とかになってると、一人が何枚も持っていくってことは無くなるはず」

ユーリ「ああ、そういう……けど、一度、病院を出てマスクを捨てて、すぐにまた病院に戻らなきゃいけなくなったら、マスクがもらえない、ってならない? 一日に一枚しかもらえないってなっちゃうと」

天平「二枚目以降は有料にする? それか、病院の人にお願いすれば出してもらえる、とか?」

ユーリ「――めんどくさいね」

天平「一人ひとりがマスクを取り過ぎないようにすればすむ話ですよ?」

ユーリ「――ですね」

天平「あ! ガチャガチャにすっか? えっと、ガチャガチャってガチャガチャじゃなくて――」

ユーリ「カプセルトイ?」

天平「あ! そう! カプセルトイ」

ユーリ「んー? カプセル一個にマスク一枚入れて、ガチャポンするってこと?」

天平「そ。カプセルになってると、取り出すのにガチャッて音がするし。一人で何回もガチャガチャやってたら目立つから、何個も取り出しにくいだろ?」

ユーリ「それは確かに。一人で一個以上取り出せないことないけど、取り出しにくくはあるよね? けど、カプセルに一枚ずつマスクを入れていくのって、大変だね?」

天平「……」

ユーリ「……」

天平「――マスクばっかり気にしちゃうけど、ほら、目のとこからも感染してるだろうって話あるだろ?」

ユーリ「目って結膜炎になることあるし、ウィルスの体内侵入ポイントだもんね?」

天平「だからさ――目、水中メガネとかしなくていいんかな?」

ユーリ「水中メガネ? 水中メガネって……そっか。あれなら目の周りを覆うから、ウィルスが目のとこから入らなさそうだね……?」

天平「そんで、人混みから帰ってきたら、手を消毒するときの泡せっけんとかで水中メガネごと、顔を洗ったら、ウィルス防御的にはよさげな気ィすんだけど……?」

ユーリ「そうだねぇ……。水中メガネって、度付きのもあるけど、ウィルス除けなら水中で使うわけじゃないから、コンタクトしてる人はコンタクトの上に水中メガネすればいいわけで……」

天平「あんまりずっとしてると頭締めつけられてしんどくなるかもしれないけど、その辺の調整をちゃんとやれば――いけそうな気がする」

ユーリ「そうだね、僕も悪くなさそうに思うけど……」

天平「――けど?」

ユーリ「――けど……これかぁ……」

天平「コレ?」

ユーリ「なんていうか、僕は、言われたことだけやってればいい、っていうのは違うと思ってて」

天平「何も考えずに、言われたことだけやってればいいって思うと――お腹が痛いときはお腹をあっためた方がいいって言われたから、どんなときでもお腹が痛くなったときはあっためるようにしてたら、実は盲腸で、お腹をあっためたせいで腹膜炎おこして大ピンチ! みたくなることもあるからな? 自分でいろんなこと考えて対応していくのは、大事だよな?」

ユーリ「だから、自分なりに工夫したり、考えてやっていくことは、病気を予防する上ですごく大事なことだと思ってるんだけど――もちろん、デタラメにやるんじゃなくて、ちゃんと勉強した上で考える必要があるけど――けど、だからって、他の人がやってないことを独自にやれるかっていうと、なんでもかんでもはできないもんだな、って」

天平「やっぱ、人目が気になるよな? いきなり昼間っから水中メガネはめてそのへん歩いてたら。いや、渋谷だか原宿だかで、オシャレな人がカラフルな水中メガネをファッションでやってる分にはいいんだろうけど。オレには水中メガネをオシャレ化するセンスはない」

ユーリ「水中メガネなんて、プールとか以外ではめてる人いないから、いきなりそんなのつけて出歩いたら、コイツ、バカじゃないの? ってヘンな目で見られると思うよ? 新型ウィルス対策でやってるって言ったら、大げさすぎるよ、ビビリすぎ! とか、呆れられるんじゃないかと思うと――ちょっと自分からは踏み切れないよね? テレビとかで推奨するとか、誰かがやり始めるとかしないと、やりにくさがハンパないって」

天平「だよなー。もしも水中メガネが有効なら、とっくにそういう話が出てそうだけど、オレ、聞いたことないし。聞いたことないことを自分一人ででもやるって、勇気いるわー」

ユーリ「『こういうの、対策にいいと思います!』っていうの、専門家にいいかどうか教えてもらえないと、いいかどうかってわからないよね? それに、自分のやってることが有効かどうかわからないまま、SNSとかでそれぞれがいいと思うことを、『こういうことやりましょう』って呼びかけていきそうかも?」

天平「何かやってる人見て、こういうの有効なのか、ってマネしてやる人も出て来そうだよな?」

ユーリ「それで、有効かもしれない情報に紛れてデマもいっぱい出てきそうだし。『善意の結果のデマ』っていうか、本人は本当にいいと信じてSNSに投稿したものが、かえって被害を拡大させかねない方法になってたりすることもあるかもしれないし……。混乱しちゃいそうだよね」

天平「じゃあ、個人個人で専門家に聞こうってなると、専門家の先生もウザいだろうから――休校になってなかったら、学校で質問や意見を集める? 専門家に聞きたいっていう質問や、こういう予防法はどうですか? みたいなのがあったら、学校ごとに意見をまとめて、あるいは、小牟田市なら小牟田市の小学校全部からの意見書みたいなのをまとめて、専門家に渡して、答えをもらったら学校のみんなに報告する、とかできればよくない?」

ユーリ「……なるほど。できるだけ、専門家の先生たちの仕事のジャマにならないように、いいこととよくないこと、確認できるといいね。感染を広げないために、一秒でも早く終息させるためにどうすればいいか、自分たちだけで考えようとしても、実際、何をどうしていいかわからないから」

天平「そうなんだよな。――厚生労働省がLINEで新型ウィルスに関する相談に応じるサービスをやってるけど……」

ユーリ「あ、そうだってね?」

天平「厚生労働省の持ってる情報をベースに、AIチャットボットが、利用者の質問にお答えします、みたいなこと? やってるらしいんだけど――」

ユーリ「AIが答えてくれるんだ? 個人個人で質問していくのって、答える方が大変だから、そこをAIがやってくれると助かるね。全部の質問に人間が対応してたら、そこにたくさんの人手を割いて他のことできなくなってしまいそうだし」

天平「オレとしては専門家に聞きたいことを投稿するサイトを作って、質問を集めたらよくないかな? って思ってたんだけど。聞きたいことをみんなが出し合っていって、別の人が同じ質問してることに気づかずに同じ質問しちゃうと、質問がかぶるから。そういう重複してるのを、一つの質問にするとかして整理してって、専門家に――AIでもいいけど――答えてもらえるようにしたらいいんじゃないか? って」

ユーリ「それだと……質問をまとめたり分類したりしてわかりやすく整理したりするのは、感染症に詳しい人じゃなくても、素人の人がボランティアでやったりできそうだね? それこそ、僕たちでもやれそう。――って、けどそれこそ、AIが集計してくれるんじゃ?」

天平「あ、そっか。っつか、何度も同じ質問に答えるのって、人間にとっては『コレ、前にやったよ。また同じ質問に答えんの?』ってなってしんどいけど、AIならしんどいことないか。Aさんの質問に答えた後、Bさんが同じ質問してきたら、Aさんに答えた答えをBさんへの回答にそのまま横流しすればいいわけで」

ユーリ「それもそうだね。――ってことは、AIに任せておけばいいってこと……?」

天平「新型ウィルスに関するデータが膨大にあって、そのデータを使ってどんな質問にも的確に答えられるっていうなら、AIにおまかせでいいかもしんないけど、まだまだ情報が不足しているだろうから、限られたデータの中でAIが答えられることには限界があるんじゃないか?」

ユーリ「となると――」

天平「だから、感染してないか不安な人とかが、LINEや電話でお医者さんとかに無料で相談できるサービスとかも用意されているみたいではあるんだけど――」

ユーリ「――個人個人に答えていたら、お医者さんたちが大変だね?」

天平「自分が感染してそうかどうか、個人個人で聞きたいとこだってのはわかるけどな?」

ユーリ「たいていの人は素人で、自分の判断に自信持てないだろうから、誰かちゃんとした人、つまりお医者さんに、この分なら心配しなくても大丈夫だよとか、入院しましょうとか、教えてほしいっていうのはわかるけど――ただでさえ、お医者さんとか医療関係者って人手不足なんじゃないっけ?」

天平「新型ウィルス以外の病気やケガの治療や検査をするお医者さんたちもいて、無料相談に応じるお医者さんたちもいて、新型ウィルスの治療にあたってるお医者さんたちもいるわけだろ? 看護師さんたちも、技師さんや薬剤師さんたちも忙しいよな?」 

ユーリ「いくら相談できるっていっても、不安がって何度も相談するようなことしてたら、お医者さんたちの負担を大きくしてしまうし。かといって、迷惑かけないように相談しないで病状を悪化させたり、感染していないと自己判断して仕事に行って、他の人に感染させることになったりするのもよくないし……」

天平「なんかアレだな? 『救急車、呼ぶか呼ばないか問題』みたい」

ユーリ「救急車も、呼ばなくても大丈夫な人が呼んじゃって、そのせいで救急搬送する必要のある人のとこに行ける救急車が足りなくて待たされてしまったり。救急車呼ぶ必要のある人が、遠慮して救急車呼ばずにいたら容体が急変して危険なことになったり。そういうのあってるって言うよね?」

天平「だから――新型ウィルスの相談も、救急車呼ぶのも、『やみくも』にならないように、本人が冷静に落ち着いて判断することが必要なんかも?」

ユーリ「『適切』に利用するって難しいね……」

天平「無料相談はさ、専門家の人たちがどんな質問にどう答えているかAIが学習していけば、AIが答えられることが増えていくだろうから。そしたらお医者さんの負担を減らせるだろうけど、ただ、データを蓄積していくの、時間がかかるだろうから……すぐには対応できないよな?」

ユーリ「早くAIが育ってくれればいいけど、そのためには、たくさん相談を受けてデータをとらなくちゃいけなくて。けど、こればっかりは誰でも相談に乗ることができる、っていうものじゃないから……」

天平「誰でも相談に乗れないっつーなら、お医者さんでもそうかもよ?」

ユーリ「お医者さん?」

天平「医療って分業制っていうか、専門分野が分かれてるから、感染症が自分の担当分野じゃない人とかだと、医療関係者でも新型ウィルスにとまどってる人、多いんじゃないか?」

ユーリ「――そうだよね? 今回の新型ウィルスのことをわからないでいるのって、僕たち素人だけじゃなくて、お医者さんや看護師さんたちだって、きっとそうだよね? わからないでいる人、いるよね?」

天平「じゃなきゃ、すでにお医者さんたちがキッチリ対処して、この感染騒ぎも終息してるよ」

ユーリ「新型ウィルスって、テレビつけても、毎日、新しい情報が報道されてて、追いつけないな、って思うけど。医療関係者はわからないではすまないから、大変だよね?」

天平「無料相談に乗ってくれることになっているお医者さんは、ある程度なら新型ウィルスのことやそれに関する事情とかわかっているだろうけど。新型ウィルスに関わってないお医者さんもいて、詳しくなかったりすると思うんだよな? けど、周りの人から見たら、お医者さんはお医者さんだから、詳しくないお医者さんに対してでも、新型ウィルスのこと質問してそうだよな?」

ユーリ「新型ウィルスとは違う病気の診察のために病院に行ったりしたときとか、知り合いのお医者さんがいるときとか、感染症に詳しいお医者さんかどうか構わずに、新型ウィルスのことで聞きたいことあったら聞いちゃうよね?」

天平「病院で患者さんから新型ウィルスのこと質問されても、『聞きたいのはこっち!』とか思ってあるお医者さん、いそうだよな? 新型ウィルスに詳しい専門家な人って、今現在は誰もいないわけだろ?」

ユーリ「新型じゃないコロナウィルスに詳しい人、中でもSARSに詳しい人とかはいても、新型ウィルスに関してなんでもわかっているってことじゃないよね? 新型ウィルスは今、少しずつ解明されている段階だから。――実際に治療しているお医者さんたちが一番わかってあるんじゃないかと思うけど、そういう人たちは治療に専念しないといけないだろうし」

天平「うちの母さんも『聞きたいのはこっち!』が本音だと思うよ? もちろん、インフルエンザやノロウィルスとか、感染系の病気はいろいろあるから、感染予防の知識も経験もあるけどさ? やっぱ、新型ウィルス特有のわからなさがあるな、って思うよ」

ユーリ「病院って院内感染が起き得るし、そうなるとホントに怖いと思うから、全国各地のお医者さんたちも、新型ウィルスにどう対処していいか、怖いだろうね……」

天平「やっぱり、新型ウィルスに関していろんな人の意見を聞きたくなるよな?」

ユーリ「専門家会議とかって、どうやってるのかな?」

天平「それこそ会議モノは一か所に人が集まってやるより、できるだけオンラインでやってくのがいいよな? スカイプとかLINEで会議?」

ユーリ「今、感染拡大を防ぐために、できるだけ自宅で仕事をしようとしてる会社とかあるっていうから、会社とかによってはオンライン会議やってるとこあるだろうね?」

天平「新型ウィルス対策の専門家会議も全国の学者さんやお医者さんや看護師さんたちでLINE会議やってったらいいんじゃないか? 活発な意見交換、ってヤツ?」

ユーリ「全国の医療関係者でLINE会議は人数的にちょっと……?」

天平「話し合いに協力してくれる人数次第では、いくつかのグループに分かれてやればいい」

ユーリ「グループで話し合って、それぞれのグループの代表者どうしで、さらに代表者グループを作って話し合う?」

天平「――それより、感染症の権威な先生たち数人で基本になるトークをやって、そこに医療関係者がツッコミを入れていく、みたいなカンジでやってく方が、話がまとまるかも?」

ユーリ「ツッコミって……」

天平「――政府が専門家会議を開くのが遅かったんじゃないか、って意見があるけど、専門家会議って別に政府が主催しなくてもさ? 政府とか関係なく、LINEとかで会議するの、有志でやってくことはできたんじゃないかな?」

ユーリ「――『民間政府』だね」

天平「できれば、こういう事態になる前に、そういう会議体制を作っておけたらよかったんだよな? そしたら武漢でSARSのような症例があるって情報を入手したときすぐに、有志の専門家会議で検討して意見まとめて、医療関係者の一つの組織として、政府や厚労省とかに意見出したりとかできただろうし。――その意見が参考にされるかどうかはともかく」

ユーリ「それでもし政府や厚労省とかが動かなかったとしても、全国各地の病院やドラッグストアや医療関係者とかが独自に、お医者さんたちの有志の専門家会議で出て来た意見を元に、患者さんや地域の人たちとか自治体とかに注意喚起したり、受診体制を整えたりとか、できたかもしれないよね?」

天平「マスクの増産体制とか、出来て来たマスクをどこにどう分配するかとか、そういうことも全国で組織的に取り組めたかもしれないよな? 独占禁止法があるっつっても、それを言ったらなおのこと、どこにどう割り振るか、全国の関係者で決めたらいいと思うけど? クルーズ船のお客さんや乗組員の人とか、チャーター機で帰って来た人とか、検査や健康診断をするための人とか、お年寄りの多いとことか、感染の危険の高いとこから優先的にマスクを適正な価格で売ったり、無料で支給したり……」

ユーリ「テレビ局とも連携を取って、どんなことに注意してほしいか、情報を公開していったり。それから、有志の専門家会議がSNSで情報を発信することもできたよね?」

天平「それは、有志の専門家会議――って、有志の専門家会議って言い方、長ったらしいな。政府の専門家会議とごっちゃにならないように、別の呼び方するか? ……えっと、『パンデミック対策室』?」

ユーリ「っていうか、そもそもそういうことするのって、地球防災軍――『軍』じゃないし、まだ仮名だけど――地球防災軍の仕事かな? って思ってたんだけど……」

天平「地球防災軍((カッコカリ))は、まだ創設してないからなぁ」

ユーリ「早く作った方がいいよね、地球防災軍。災害や環境破壊に対応するためだけじゃなく、こういう感染症の拡大を防ぐためにも。というか、防災だけじゃダメだね。地球防災防疫軍? ――『軍』じゃないけど」

天平「地球防災……防疫軍。が出来たら、そこにパンデミック対策室も組み込むだろ? そしたら、災害時の連絡網とか情報の伝達手段とか指揮系統とかは、防災軍の使うものを流用できるし、防災訓練とか防災マップみたいに、防疫訓練とか防疫マップ、みたいなのを作っておいて備えたりとかできると思う」

ユーリ「防疫訓練は、予防の仕方とかを学ぶってことだよね? けど、未知のウィルスだと予防できなくない?」

天平「とはいっても、今回の新型ウィルスも、早い段階から、SARSっぽいとか、コロナウィルスだとか、インフルエンザの対策である程度大丈夫だろう、みたいなことは言われてただろ?」

ユーリ「そうだね、言われてたね」

天平「宇宙からやってきた得体の知れない地球上のものではないウィルスです! みたいな場合はヤバいけど、未知のウィルスって言っても、いくつか系統があるもんなんじゃないか?」

ユーリ「それは――そうかもね?」

天平「だから、コロナウィルスベースの病気、とか、免疫力を奪う系とか、なんかベースになるウィルスで系統分けしておいて、対策を用意しておくだろ? 防疫訓練ではその基本になる対策を学んでおくんだ。そんで、ベースのウィルスと違うとこをその都度、微調整してくとかしてけば、迅速に対応していけるんじゃないか?」

ユーリ「いざ、未知のウィルスが発生して、防疫対策をとっているときに、系統を読み違えていたら? A系統だと思っていたけど、実はB系統だったら――そのときは、B系統に対する備えに切り替えればいいから、すぐに対応できるかもしれないか」

天平「いくつもパターンを用意して備えておいて、それとは別に、まったくわからないとき用のパターンを用意しとくと、事態の変化に臨機応変に対応できるから、感染を広げにくいんじゃないか?」

ユーリ「そうだね……。それでそれを元に、学校で防疫訓練とか、防疫の心得とか、教えてくれると助かるから、そういうのもやっといてくれると……。ん? 防疫マップって?」

天平「それは思いつきだから、詳細はまだうすらぼんやりなんだけど。病院とか老人ホームとか学校とか、市役所とか、人が集まったり、出入りしたりして、感染する場になりやすいとことか、ウィルス検査を受けられるとことか、隔離病棟を供えた病院の場所とか、そういうのを示した地図とか作っとくと、ハザードマップみたいに使えるかな? って」

ユーリ「だったら、人の多いとこと少ないとこで色分けしておくとか? 人の多く集まるところは濃い色にして、人の少ないとこは薄くしておく? あと、ウィルス検査を受けられるとこも、実際に検査をする準備ができたら色が変わるとかしておくとわかりやすいから、ウィルス検査をやっていない病院を、ウィルスに感染した疑いのある人が受診するのを防げるかもしれないし……」

天平「――とまあ、防災防疫軍が出来たら、いろいろ組織化して防災や病気の予防に努めて行けるけど、今んとこはまだ出来てないから――」

ユーリ「じゃあ、とりあえず、お医者さんたち医療関係者たちの、有志でやる専門家会議のことは、『パンデミック対策室』ってことで、とりあえず、それだけでもやりたいね」

天平「略して『対策室』だな。んで、対策室に、一般人からの質問とかも受け付けてくれるとこを用意してもらえると、さっき話してたような、『水中メガネはめた方がいいですか?』みたいな、こういうのやったがいいですか? っていう質問もできるだろ?」

ユーリ「そういう質問の中から、感染を広げないために有効なアイディアが出てくるかもしれないね?」

天平「それだけじゃなくて、情報を集めるところを作ったら、『こういう人みかけたけど、こういうことやって大丈夫ですか?』とか、そういう情報も出てくるかもしれないし」

ユーリ「例えば『咳エチケット守ってない人がいたけど、大丈夫ですか?』とか?」

天平「咳エチケットは……咳をしている人の中には花粉症の人もいて、新型ウィルスとは関係のない咳なのに周囲から白い目で見られてつらい、みたいな人もいるみたいだけど。――咳エチケットはどのみち守るべきだろ?」

ユーリ「花粉症の人が新型ウィルスに感染していないっていう保証はないから、新型ウィルスとは関係のない咳だと断言できないし。――症状が出ていないか、あるいは、花粉症に紛れて症状に気づかないだけで、新型ウィルスに感染している可能性もあるわけだよね?」

天平「花粉症と新型ウィルスのダブルパンチなパターンも、あり得なくはないよな……?」

ユーリ「となると、咳やくしゃみ自体は花粉症に由来するものでも、その中に新型ウィルスが混じっている可能性もあるわけだから……。とりあえず咳が出るときは、咳エチケットだけでも守っとけばいいと思うよ?」

天平「だよな? ――って、ガーゼのマスクって、ウィルス拡散防止力が少し弱そうだけど、ガーゼマスクの場合、咳をするときは袖口とかに口を持って行って、ガーゼマスクと袖のダブルブロックしたら、ブロック力を上げられるかな?」

ユーリ「しないよりはいいんじゃない?」

天平「――ということで、咳エチケットは『できるだけ守ってもらった方がいいです』って対策室から回答するとするだろ? そしたら、ただ守ってもらった方がいいって言うだけじゃなくて、守ってくれない人に対して、どう接するか、どう注意するかとか、そういう対処法とかまで、対策室経由でみんなで検討できたら、いいよな?」

ユーリ「咳エチケットって、ふつうに注意しても、逆ギレされたり、理解してもらえなかったりする場合がありそうで怖いからね」

天平「だから、対策室で、咳エチケットを守るように呼びかける動画を作成して、その動画をエチケット違反している人に、周囲の人とかが見せて注意を促すとか? 企業に協力してもらって、咳エチケットを守っていない人を写真に撮って対策室に送ると、コンビニとかに顔の情報が送られて、顔認証とかで咳エチケット守ってない人にはポイントがつかないことにするとか、そういうマイナス特典みたいなのを作る? って、顔認証がまだ無理か。――法律で罰するのと違うから、難しいな」

ユーリ「ソウ力があれば咳エチケットなんて問題にならないのに。――とにかく、たくさんの人で話し合ったら、いい対処法が見つかるかもね?」

天平「あとは、『新型ウィルスに感染した気がするけど、ここに行ってこういうことしたんでそのときに感染したのかも』とか、『最近はどこも行ってないけど、一月前にここへ行った』とか、そういう情報も集まってくるかもよ?」

ユーリ「そこから、想定以上に潜伏期間が長かったかもしれない、とか、こういう感染ルートがあるのかも? とか、今はここまで感染が拡大しているな、とか……ウィルスの感染拡大を抑えるのに有効な情報が見つかったりするかもしれないね?」

天平「それだけじゃなくて、どういう人が重症化しているかとか、『ここの人たちは感染してるけど症状は出てないぞ、共通点は何かあるのか?』って調べたら『この果物をたくさん食べてるぞ』とか、そういうのがわかって、その果物の成分がウィルスを弱毒化しています、とか、新型ウイルスの解読に役立つ情報が見つかるかもしれないよな? ――見つからんかもしれんけど」

ユーリ「集まった情報の中から専門家にデマを見分けてもらって、こういうのはデマです、って発信することもできるかもね?」

天平「デマっつーかさ、厚労省を騙ってお金をだまし取ろうとする詐欺なんかも、さっそく起きてるみたいでさ?」

ユーリ「詐欺⁈ 詐欺ってそれは……ある意味、勤勉なのかな? 詐欺をやる人って、どんな事態にも臨機応変に、なんでも詐欺にしてくるね?」

天平「なんでも詐欺ってくるの、スゴイよな? どっからそんな根性出てくるんだろ? まめまめしく詐欺をやるより、まっとうなビジネスチャンスをものにしてほしいよな? だって、これだけ時流を読んですばやく対応できる能力があるんだから、詐欺じゃない仕事で成功するだろ」

ユーリ「詐欺とかマジであり得ない。デマも怖いけど、詐欺も怖い。というか、やっちゃダメだよ、ホント。ただでさえ感染を拡大させないためにみんな考えていかなくちゃいけないし、お金だって、みんな必要なのに」

天平「だから、詐欺やデマが飛び交うことのない、安全に正確な情報を取り入れることができる環境を整えていきたい」

ユーリ「――そうだね」

天平「LINEでお医者さんやAIに相談できるって言うのもさ? よくある質問は、厚労省の質問サイトとかに載せてあるけど、マイナーな質問とかは……。個人個人で聞きたいことを聞いて答えてもらってそれで満足、っていうんじゃ、ちょっとな? 何かに気づいて無料相談に相談して問題を解決できた人がいても、気づけなかった人は知らないままで、損するかもしれない。それより、正しい対処法やいい『気づき』やいいアイディアがあったら、みんなで共有したいだろ?」

ユーリ「そうだね。そう思うから、自分が知り得た情報や思ったこと、気づいたことなんかを、SNSに投稿する人もいるんだろうけど。――もしかして……それって逆に、一般の人の個人的な見解って、SNSしか、人に伝える場所がない状態だ、ってことでもあるのかもしれないね?」

天平「……そうだな、そうかもな? テレビでも一般の人が自分の意見を寄せられる番組もあるけど、テレビ側が寄せられた意見の中からその人のものを使わなかったら、自分の意見が世に出ることはない。けど、SNSだと個人個人で自分の考えを世に出せるから――」

ユーリ「ラジオだと、自分の意見が番組に採用されて、放送される機会がテレビより多いよね? あ。――だからSNS社会の今でも、たくさんのラジオ番組があってたくさんのリスナーがいるのかも……?」

天平「ラジオ好きはいるよな? ラジオ番組持ってる芸能人の人、いっぱいいるし。というか、芸能人の人って、売れてくると、たいてい自分のラジオ番組持ってるっぽくない?」

ユーリ「人気のある歌手とか芸人さんはわかるけど、意外な人も持ってたりするよね? ラジオってけっこう幅広いというか、層が厚いというか……」

天平「地方局とかもあるよな? 地元密着型のラジオ局とか、ローカルなラジオ番組とか」

ユーリ「災害時のお知らせとか、被災した人への応援とか、地方のラジオ局が活躍したりしてるらしいよね?」

天平「テレビとかSNSとか、不特定多数の人へ情報を伝達する手段はいくつかあるけど、なんつーか、ラジオが一番パーソナルっつーか、個人的な――友達感覚? 知り合いとか友達とかと語り合ったり連絡取り合ったりしているような雰囲気ある……あ、お店? ――『お店』みたいなカンジ?」

ユーリ「お店?」

天平「ラジオの番組一つひとつが、街中にあるカフェとか、居酒屋とか、まあ、番組によって雰囲気はいろいろだけど、お店みたいなもんだとして。一つのラジオ番組のパーソナリティーさんが、お店の店長さんなんだ。例えばカフェなら、カフェのマスターさん。んで、リスナーがお客さん。お客さんは、常連さんや、たまたま通りかかった人とか、マスターのファンとか、このカフェがおいしいって評判を聞いてきた人とかで、カフェが開店するとお客さんが入って来て、ひとときくつろいで帰る――みたいなのが、ラジオ番組?」

ユーリ「ああ、なるほど。……よく聴く番組は、自分の行きつけの喫茶店、みたいな感覚ってことか」

天平「んで、SNSは……ニューヨークか? 東京でも天神でもいいけど」

ユーリ「ニューヨーク、東京、天神……って、人が多い都会?」

天平「人が多くて、雑多で、人種や職種や性別や年齢や生活水準や、なんでもかんでもいろいろで。それぞれがそれぞれの繋がりや、それぞれの世界を持っている。だけど、そこにいるたいていの人は知り合いでもなんでもなくて、有名な人もいれば、無名な人もいるし、知り合いが多い人もいれば、孤独な人もいるし……どこにどういう人がいるのかわからない。そんなカンジの場所?」

ユーリ「なんか――人が多すぎるっていうか、密集してるっていうか、バラバラしてるっていうか、雑然としているイメージ?」

天平「そこにいる人がそれぞれバラバラに声を上げても、知り合いは聞いてくれるし、近くにいる人はその人の声に気づくかもしれないけど、少し離れた人や、無関心な人は通り過ぎていくだけで――声は届かない」

ユーリ「そこにいることに気づいてもらえなければ、何を言っているか知ろうと思ってもらえなければ、伝えられない。人の目に入らず、耳にも入らず、存在に気づいてもらえない。だから必死で注目を集めようとしてしまう――それがSNS?」

天平「かな?」

ユーリ「それで、テレビは?」 

天平「そんで、テレビは――学校の授業?」

ユーリ「――授業?」

天平「テレビでは、解説者の人がフリップとかボードとか使ってわかりやすくいろんな問題を教えてくれて、テレビのこっち側でオレたちはそれを聴いてる。そんで、ゲストがオレらの代わりに代表で質問してくれるカンジ?」

ユーリ「それが、学校で先生が黒板を使ってわからないことを教えてくれて、みんなで話を聞いて、わからないところは質問をするっていうのと似てる?」

天平「そ。そんで、授業でわからないことがあったら、授業の後に職員室に質問しに行くみたいに、視聴者が番組のホームページに質問メールしたりするわけよ」

ユーリ「ああ、なるほど……」

天平「そんで、テレビって必ずどこにでもあるわけじゃなくて、最近はテレビ持ってないとこも増えてるみたいだけど。学校だって、子供は必ず誰でも行ってるわけじゃなくて、行かない子もいるし」

ユーリ「逆に言うと、学校に行ってない子もいるけど、大方の子は学校に行って授業を受けているみたいに、テレビのない家もあるけど、たいていの家ではテレビがあって、テレビを見ることができる、ってことだよね」

天平「そんで、授業の内容は、学校それぞれの特色はあるだろうけど、基本的な内容は全国で統一されている。テレビだって、テレビ番組の内容は各テレビ局で違うけど、SNSほど個人の主観に寄ってなくて。放送コードとかいう報道のマナーがあったりして、テレビ番組には全国共通の一定の基準があるわけで……そうゆうとこも似てるし」

ユーリ「授業の内容も、テレビで放送される内容も、『公共性』があるっていうか、あんまりいい加減なことはできなさそうっていうか……」

天平「授業の内容のすべてが間違いなくて正しいものとは限らないけど、基本的には正しいわけで。テレビ番組の内容も、誤った情報は皆無です、とは言わないけど、基本的にはちゃんと取材して根拠を――『ウラ』を取ったものを放送するわけだから、ある程度は確からしい情報なわけで。そういうとこも、テレビと学校の授業って似てる気がするし。――ってこういうとことこういとこが似てる気がする、っていうのを当てはめていくと、割と対応してるだろ? 『テレビ』と『学校の授業』って」

ユーリ「そうだね……なんか、天平の言うようにイメージしてみると、ラジオとSNSとテレビでは、それぞれに個性があるっていうか……違うね?」

天平「違うよな? 違うから、伝わり方も違うって思う。例えば、ラジオ番組で伝えられる相手は、割と狭い範囲の人になってしまうけど――店長さんに、『お客さんにこういうこと伝えて』って頼んで、伝えてもらうようにしたら、店長さんからお客さんに伝わるみたいに、ラジオ番組を聴いている人に情報が伝わる。そんときの伝わり方っていうのは、馴染みの人から頼まれる分、聞いてみようって思えるような、やさしい伝わり方になりやすいと思う」

ユーリ「じゃあ、SNSは? SNSの場合は、天神とか人の多い繁華街で、そこを行き交っている人に何か伝えようとするようなものってことだろう? その場合、ラジオのときのお店の店長さんみたいな、連絡網の連絡係になれそうな人って特にいないわけだから――」

天平「天神でそこを歩く人たちに何かを伝えようとしたら、その人混みの中に混じってビラ配りとかしたって、手渡せる人は限られるから」

ユーリ「芸能人とかの有名人や、地元のカリスマ店員さんとかがビラ配りしたり、スピーチしたりすれば、群がる人はたくさんいるだろうけど、ふつうの人だと、なかなか、足をとめてくれなかったりするだろうね? お腹が空いててランチどこで食べよう、って決めかねてた人だったら、新オープンのごはん屋さんのビラを配っている人がいたら、そのビラをもらおうとしたりするかもしれないけど――興味がない人は、通り過ぎていくだろうね?」

天平「そういう場合に、たくさんの人に足を止めてもらって、話を聞いてもらおうとしたら、駅ビルの大きな電工掲示板から、音楽とか流して人の耳目を集めて、情報を発表する、とかしないと、そこにいる人には伝わらないだろ? そんで、掲示板で伝えたら、そこにいてそれを見て関心を持った人たちが、それぞれ自分の知り合いに伝える、っていうカンジ?」

ユーリ「なるほど。……掲示板とか見て、見た人が拡散しようと思って、その情報を知らせてくれれば多くの人に伝わるかもしれないけど、どういう内容を知らせるかはそれぞれ、そこにいる人たちの考えで違ってくるし。興味を持たない人は、チラ見してそれで終わったりして――誰にどう伝わるか、掲示板で伝えようとしたように伝わっていくか、わからないね? どこかで誰かに捻じ曲げられたりしていくかもしれないし……」

天平「SNSではさ、個人で自分が伝えたい情報を発信しようとしても、一個人が発信する情報は、SNSに参加している多くの人の投稿に紛れて、なかなか見てもらえなかったりすると思う。だから、SNSやっている人たちに、いろいろ伝えようと思ったら、SNSの中に入ってどうこうするより、電光掲示板で情報を伝えるみたいに、まずは、テレビとか何かの媒体で――それかネットニュースとかで――情報を出して、それを見た人がSNSで自分の意見とかを発信する、みたいな形になっていくんじゃないか? って思う」

ユーリ「伝わり方としては、そういうカンジ、なのかな……?」

天平「ほんで、これがテレビだと、学校で先生が児童や生徒に授業やホームルームでお知らせをしたり、学校の全校集会で話がされたりするときみたいに――校長先生の話はスルーしがちだけど――一斉にたくさんの人に情報を伝播(でんぱ)させやすそうかな? って思って。統制がとれやすそうっていうか」

ユーリ「ラジオやテレビやSNS……情報って、どういう人たちにどういう伝わり方をしていくかっていうのも、大事なことで。そのためには、どういう手段を使って情報を伝えるか、考えなくちゃいけないよね? 正確な情報が正しく伝えられていくことが、感染の拡大を防ぐために何より重要なことだって――今回の新型ウィルスへの大人たちの対応を見て、思った」

天平「今回の新型ウィルスに関しては、できるだけ日本にいるすべての人に、正しい情報を伝えないといけないだろ? そうなると――」

ユーリ「どこがどういう情報をどうやって発信していくか、だね?」

天平「緊急時の指揮系統を作る、っていうか……指揮って変か? えっと、情報を共有するための伝達系統を作る、っていうか」

ユーリ「どこで何が起きてて、どういうことがよくてどういうことがよくないのか、すばやく、この国にいるできるだけたくさんの人に伝えていくっていう体制があると、みんなで力を合わせやすいんじゃないか、ってことだよね?」

天平「そ。そんで、正しい情報を多くの人に発信していこうと思ったら、例えばさっき言ってた対策室。対策室を作って、そこで必要な情報とそうじゃない情報と振り分けたり、質問にはわかりやすい回答を用意したりして、対策室から正しくて安全な情報を発信していくことができたら、それが一番いいと思うんだけど」

ユーリ「そうだね。そうできたらいいけど。――今はまだ、対策室は作られていないし。すぐにパンデミック対策室を作って体制を整えるなんて、できそうにないよね?」

天平「だから――オレはやっぱり、テレビがいいと思うんだけど?」

ユーリ「テレビ……。テレビって、今、テレビがいろんな番組で新型ウィルスについて報道してるよね? 少しでもわかりやすいように情報をまとめたり工夫したりしながら教えてくれてるから、何が起きているか知ることができているけど。テレビが報道してくれなかったら、何が何だかわからないでいるとこだよね」

天平「SNSでもいろいろ情報あるけど、デマもあるし。信ぴょう性っつーの? SNSだと信頼のおける情報かそうでないかがわからないだろ? そりゃ、テレビの情報にも誤りがないわけじゃないけど、SNSは……」

ユーリ「テレビの情報をすべてうのみにするのはよくないし、中国で最初に今回の新型ウィルスへの警告を出すのに使われたのがSNSだったこと考えても、ネットの情報をすべて疑うのはよくないことだけど――SNS系は、いろんな人がいろいろな意見を出してたり、なんの根拠もない個人的な考えを書いてることもあるし、最新のものも古いものも混ざってたり……統一されていなくて分かりにくいとこあるよね?」

天平「そうそう。その点、テレビは番組数とか放送時間とかが限られてて、かえって情報が集中しやすいとこがいいと思うんだ」

ユーリ「情報がバラけにくいよね?」

天平「今って、ある程度、みんなで同じ情報を共有していかないと足並みがそろわないっつーか、ウィルス包囲網にほころびができそうだろ? 完全包囲するのはもう無理かもしれないけど、それでも、なんとか、ウィルスの動きを抑えこんでいかないといけないわけで。それなのに、みんながバラバラに対策とってたら、どこかにウィルスがすり抜ける隙間が生まれてしまうんじゃないか?」

ユーリ「日本だけでもたくさんの人が暮らしているから、それぞれがそれぞれの考えで動いてしまうと、統制がとれなくなってしまうよね?」

天平「そうならないためには、どういう行動をとればいいか、情報を共有して、一人ひとりが納得して、守るべきことを守っていかないといけないだろ」

ユーリ「個人個人が自分の考えを持って、自分で考えて動くっていうのが大事なことだけど。そしてそれが、僕たちが世界を平和にするために必要だと考えている『ソウ力』っていう力になるわけなんだけど。――自分の考えを持つっていうのは、いろんなことを勉強していろんな人の意見を聞いて自分のいろんな経験も元にして、あらゆることを考えた上で見つける考えのことであって。自分の好きにやるとか、なんとなくの雰囲気でそれっぽいことをやるとか、人と違うことをやっていれば、それはオリジナルの考えを持てていることになるとか、そういうことじゃないから。チームプレーで乗り切らなきゃいけないときには、スタンドプレーに走らず、『和』の精神で協力しないとね?」

天平「『ワンチーム』ってヤツだな」

ユーリ「そうそう、ワンチーム!」

天平「ということで。オレのイメージするワンチームは――テレビ番組やテレビ局のホームページを使って、一つにまとまれるようにしておくだろ? テレビが根っこと幹になれば、ラジオやSNSが枝葉になって、そこからさらに情報網を張りめぐらせて、より細かく、いろんな問題に対処していけるようになる、んじゃないかと思う。ワンチームっつーか、ワンツリー?」

ユーリ「テレビ局を中心にした体制――それって、災害時のときの場合も、だろう?」

天平「うん、そう。地方の自治体が独自にテレビ局とかと結んでる防災協定。防災パートナーシップ? とか、すごくいいと思って」

ユーリ「ニュースで見て、さすが! って思ったヤツだよね? もともと僕らで、災害地域にはマスコミの人が取材に行くから、そのときに、マスコミの人に、災害の現場と、支援をする力とを繋いでもらえると、ちょうどいいんじゃないか、って話してたんだよね? そうしたら、ニュースで防災パートナーシップをどことどこが結びました、っていうのやってて、大人ってやっぱりちゃんと考えてるんだな、って」

天平「オレらが話してたのは、避難所とかを取材したときに、ついでに避難所にいる人たちにアンケート用紙配って。ほしいものとか、状況を知らせたい人とか、どんな仕事をしているから避難所でどういう役割を担えると思うとか、いろんな項目に回答してもらって、マスコミの人にその用紙を持ち帰ってもらう、ってヤツだけどな?」

ユーリ「それで、テレビ局に持ち帰ったアンケート用紙を元に、それぞれの避難所に誰がいるか、名簿を作ったり、必要なものリストとか、必要な人手とか、整理して、その情報を防災軍の司令部に渡して、必要なものを防災軍が手配したり、現地へ運んで分配したりしていったらいいんじゃないか、って話してたんだよね?」

天平「んで、マスコミが行かないとこには、防災軍の情報探査部が調査に行って、アンケート用紙配って回収するといいんじゃないか、って。そうすれば、効率よく、避難状況を把握できそうかな? って言ってたんだよな」

ユーリ「だけど、今回の場合は、『アンケートを回収する、情報収集係』としてだけじゃなくて、いっそ『対策室』もテレビで(にな)ってもらっちゃおう、ってことだよね?」

天平「どう? マスコミって、現場を取材して情報を集めたり、視聴者から情報が届いたりするから。テレビ局とかをうまく機能させられれば、非常時にどう対処するか検討して対策を練る、対策室になりそうだろ?」

ユーリ「専門家を呼んで、詳しく解説してもらってるテレビ番組が多数あるとこを見ても、テレビ局って――対策室になり得る? テレビ局って、専門家の協力、得やすいよね?」

天平「そうなんだよ。だからさ、今回の新型ウィルスみたいな緊急事態が起きたときは、テレビ局各局が協力して、一か所に専門家を集めて対策会議をしてもらったらどうかと思ってさ? それだけじゃなくて、各局がゲットした情報をそれぞれ対策会議に提供して、情報を共有するとか、どこの局がここを取材してどこの局はあっちを取材する、とかって、取材を分担するとか、やれないかな? って思って」

ユーリ「そうだね……テレビって、キー局とかいう中央の、いわば本社的なとこと、ローカル局とか地方局とか言われる、支社的なとことあるから、日本全国の様子を手分けして調査することができるだろうし。キー局が中心になることで、連携もとりやすそうだよね?」

天平「だろ? 地方は地方でローカル局が集まって情報を共有して。ローカル局会議で出て来た情報は地元に発信したり、各地のローカル局会議で出て来た情報をキー局が集めて会議に持ちこんで専門家に検討してもらって、そこでまとめられた意見や情報を、全国の各テレビ局が全国各地で放送する、っていうのをやっていく――とか、そんなカンジ?」

ユーリ「各局がそれぞれでやるんじゃなくて、各局が一緒にやるわけか。――けど、各局の情報を一つの会議に集約してしまう、ってなると、テレビ局各局でしのぎを削るっていうか、『自分たちの局が、よそのテレビ局より少しでも早く、正確で有益な情報を集めるぞ!』っていう意識が減っちゃわないかな? 情報収集能力が落ちない?」

天平「むしろ、それぞれがゲットしてきた情報が対策会議で検討されるんだから、張り切って有益な情報をゲットするぞ! ってなるんじゃないか? それこそ、よそよりいい情報を対策会議に提供しようとして無理な取材をしたり、話を盛ったりしないかとか、そういう懸念(けねん)はあるかも?」

ユーリ「あ、そっか。対策室に集められた情報は、ある意味、シビアに比べられることになってしまいかねないもんね? どこの局が最新の情報を集めて来られるかとか、こっちの局が出した情報と別の局が出した情報が矛盾してたりとか――」

天平「視聴者にはわからなくても、取材しているテレビ局の人たちは、どれがどこの局の情報かわかるだろうから、スクープ合戦になって、ヘンにいがみ合ったりしないかな? って、そっちが心配かな?」

ユーリ「心配するのはわからないでもないけど、取材できることって、ある程度、限られてると思うし。さすがに非常事態だから、もめごとになるようなことはないよ、きっと」

天平「……そだな」

ユーリ「テレビ局が作る対策会議か――」

天平「各テレビ局が協力して、情報を集めて来る。それに、会議する場所もテレビ局が協力して用意するだろ? そんでそこに、テレビ局の人がそれぞれの人脈を使って呼びかけて、専門家に集まってもらう」

ユーリ「専門家っていうと、医療関係の人たちだよね? 感染症の研究をしてる人、感染症の予防や治療をたくさんしてきた経験を持ってるお医者さんや看護師さん、医薬品会社の研究者とかかな?」

天平「中心になるのは医療関係者だよな。けど、テレビ局が噛んでやるんだったら、他にも、法律に詳しい人や、経済に詳しい人、保険に詳しい人、学校のことに詳しい人、海外との外交問題に詳しい人、飲食店やドラッグストアとかイベント系の仕事をしてる人とか、いま中国でがんばってる日本のスーパーがあるから、そこの人とか……いろんなジャンルやいろんな立場の人に集まってもらおうぜ?」

ユーリ「そっか、医療関係者だけじゃ話し合えることに限界があるね? 経済にどういう打撃が及ぶか、どうすれば損害を最小限に抑えられるかとか、そういうことも話していかないと、対策会議する意味がないよね」

天平「どこでどういうことが起きているか、専門家の人たちが知ってることや、各テレビ局が取材して集めた情報なんかを元に、これからどうなると予測されるか、そうなるとこの立場の人はこういうことに困るだろうとか、こういうことしたらどうかとか、こういう事態になった場合は自分たちはこういう協力ができると思うとか、そういうこと話し合ってくだろ?」

ユーリ「それなら、さっき話してたパターン分け。何系統のウィルスかで、取るべき行動のパターン分けしておいて、防疫訓練やればいいって言ってたけど。テレビの対策会議でも、パターン分けしていくといいよね?」

天平「こうなった場合はこういうことをする、こうなった場合はこういうことをする、って、いくつかパターンを想定していくってことだろ? 軽くすむときのパターンから、最悪のパターンまで、いくつもいろんなパターンを想定しておく。状況が変化したら、それに応じたパターンに切り替える」

ユーリ「それこそ、感染者が出たとこだけ休校するとか、感染者の多い地域の学校だけ休校にするとか、一部の学校だけ休校するパターンと全国一律に休校するパターン、しないパターン。そういうのを作っておけば、全国一斉に休校することになったときも、子供や保護者に不安を与えないように持って行けたかもしれないよね?」

天平「そういうの、大事だよな? 休校にしないパターンでやってたけど、大人の感染者数が増えたり、子供にも感染者が出て来たりして、状況が変わったら、全国一律に休校するパターンに切り替える、っていうことができてたわけだよな?」

ユーリ「切り替えた場合は、一律に休校するときはどこがどうする、っていうのを事前に決めてあるわけだから、その取り決めの通りにやっていって、うまく行かないところを修正したり、調整したりしていくようにすれば、スムーズに切り替えられたかもしれない」

天平「そんで、感染者が落ち着いてきたら、また、感染者が落ち着いてきたときのパターンにシフトしていけばいいわけで――」

ユーリ「テレビだったら、刻一刻と変化していく状況に応じて、次々と対策を練っていけるだろうし。次々と事態が変化していくのに対応していけそうだね?」

天平「そんで、その会議の様子を、各テレビ局が、それぞれで中継したり、特番組んだり、独自に放送していく、とかしていけばいいんじゃないか? 各局に質問コーナーが割り当てられて、それぞれのテレビ局が視聴者や芸能人や街の人たちから集めた質問や疑問を、対策会議にぶっこんでいくとか……」

ユーリ「テレビで会議の様子を放送するときは、会議の全部を中継するのでもいいし、収録したものを編集してわかりやすくまとめてから放送してもいいし。放送中に視聴者からの質問やツイートなんかも流していったり、手話や文字放送を入れたり……?」

天平「対策会議でまとめられた意見を公表する。それはちゃんと各テレビ局でやる、ってことで。それ以外は、自由に報道していくようにしたら、各局で特色を出せると思うし……?」

ユーリ「持ち回りというか当番制というか、どこか一つの局が対策会議を放送して、次の日は別の局が対策会議を放送して……って、毎日、どこか一つのテレビ局で放送を請け負うことにしてもいいよね?」

天平「要するに、対策会議で検討された内容とか、気をつけてほしいこととか、協力を募りたいこととか、各局が工夫してわかりやすく伝えていってくれれば。そうできたら、テレビを介して、国民が、必要なとこへの支援体制とか協力体制とか、作りやすくなるんじゃないか?」

ユーリ「ローカル局やキー局の対策会議が、臨時の対策室になって、国民全体で防疫体制を作っていければいい、ってことだよね」

天平「情報を発信するだけじゃなく、キー局やローカル局がそれぞれのツテを使って全国各地の企業や病院に協力を持ちかけて、必要な体制を築いていくとかしていけるかもしれないし。――って考えると、現時点では、やっぱテレビ局が対策会議やってくれるのがいちばん実現可能性があって、安全性が高い気ィするわ」

ユーリ「そうだね、テレビ局が関与する方が、企業の協力は得やすいかもね? 感染症対策のためにお金や物や場所を提供しようとしたりするの、企業としても、取材してもらった方がやりやすいだろうし」

天平「まあなあ。人助けするのはいいことだけど、そのために会社の商品を無償で提供したりするのって、やり過ぎたら会社が倒産してしまうわけで。そうなったら、そこで働いている人や、その会社と仕事をしている人たちに迷惑がかかる。株主さんがいる会社だってあるから、社長さんや社員さんの『気持ち』だけで、会社のお金を感染症の予防や治療のために使うわけにはいかないもんな? だって、株主さんは慈善事業で株を買ってるわけじゃないんだから」

ユーリ「けど、うちの企業は感染症の拡大を防ぐためにこういうことしますよ、とかっていうことを――この商品をこれだけこの病院に寄付しますよ、とかそういうことを――テレビで伝えてもらえるんだったら――それって、会社のためになるよね」

天平「それだったら、『人助けもいいけど、会社の損になるようなことはするなよ』って思っている株主さんがいたとしても、『いい会社だな、って宣伝になるからやったんですよ、長い目で見たら、損にはならないですよ、損して得とれってヤツですよ』って、クレームつけてくる株主さんに言い訳ができる」

ユーリ「――ホントにそんなクレームつける人がいたら、世知辛いな、って思うけど。けど、すごく大事なことだよね? 人に知らせるでなく見返りなく人助けをする、っていうのは尊いことだけど。利益にならないことしていたら、会社は会社を続けられなくなってしまうだろうから」

天平「利益、利益って言ってたら、お金にけち臭い守銭奴(しゅせんど)みたく思われそうだけど。別に、利益ってお金に限らなくてさ?」

ユーリ「企業にとっていちばん大事な利益は――『信用』、だったりするわけだよね。さっきの詐欺のこととか考えても、『信用』ってすごく意味のあることだと思うし」

天平「信用の置ける企業だって思ってもらえることは会社にとってプラスになる。それは間違いないことだから。『信用』っていう利益を得られるんだったら、会社としては、会社にとって金銭的に損になることでも動きやすいんじゃないか、って思うわけで――」

ユーリ「ただ、その会社がどういうことをやっているか誰にも知られずにいたら、『信用』には繋がりにくいと思うから。この会社はこういうことをしてるんですよ、っていうのをテレビで放送してもらえるなら、お金にならないことであっても、やりやすくなるんじゃないか、って思う」

天平「と、こんなこと話してるけど。テレビ局の呼びかけで、協力してくれる企業が現れたとしても、それは別に、企業のイメージアップのためにええカッコしてるんだろ、ってことじゃなくてさ? もちろん、あくまで人助けしたいっていう気持ちがあってやることで。――でなかったら、どこの企業だって、身銭(みぜに)切ってわざわざやんないって、人助けなんて大変なこと」

ユーリ「身銭って……。まあ、そもそも国がやらなきゃいけないようなことを、自費でやろうとしているわけだから、『身銭を切ってる』って言えるだろうけど……」

天平「災害のときとかもさ、たくさんの企業がいろんな復興支援してあって。そういうのテレビで紹介してるけど、それ見てても、企業が人助けしたいって思うのは、本当に人を助けたいって気持ちがあってやってあるんだな、って思うもんな」

ユーリ「企業ってお客さんに支えてもらって成り立っているから、感謝を還したいって気持ちがあるんだろうな、って思う。あるいは、自分たちが被災したときに助けてもらったから、とか。自分たちを支えてくれる人たち――その人たちのために役に立ちたいって気持ちを持ってあって」

天平「そういう気持ちを持ってある企業って、全国各地にいっぱいあるよな」

ユーリ「びっくりするもんね。もしものとき、どうしたら人を助けられるか考えて、商品を開発していた、っていう企業がいっぱいあって。それで、災害が起きたときに、本当にそうやって努力されてきたことが、たくさんの人を救ってて」

天平「お客さんに支えてもらっているから、それを還す――企業とお客さんはお互いに支え合っているから、相手を思いやるし、相手が困っていたら手を差し伸べる。これって、『和』が『輪』になった、『超個人主義』の循環ができてる理想の姿だよな」

ユーリ「――ホントだ」

天平「さっきちょろっと言った、中国でがんばってるスーパー。そこもすごくてさ?」

ユーリ「あ、対策会議に呼ぶ専門家ってどんな人がいるか話してたときに、天平がいくつか挙げてた中の一つ――?」

天平「そ。スーパーとかショッピングモールとかやってる、日本のおっきな会社なんだけど、そこって、中国にもでっかいスーパーだかショッピングモールだかを数店舗出してるんだけど。そこはさ、元々、こういうパンデミックな状況になったときにはどう対処するか、そういうのいろんなパターンをいっぱいシミュレーションして備えてたらしいんだよ?」

ユーリ「――ホント?」

天平「ってテレビで言ってた。チラッと見ただけだから、詳しいコト知らないけど」

ユーリ「すごいね? けど、シミュレーションって――?」

天平「もしもSARSみたいなパンデミックな事態になったら、ほら、スーパーとかは、食べ物とか生活に必要なものを扱ってるお店だから、自分たちこそが地域の人々の生命線になるに違いないってことで、できるだけ、たくさんの人を支えていけるように、って考えて、備えて、今、その力を発揮してる、ってことらしいんだよな……?」

ユーリ「――すごい……防疫軍、実際に活動しているホンモノが、すでにいたんだ……」

天平「そうだよな、ホンモノの防疫軍ってことだよな?」

ユーリ「そこって……そのスーパーって、災害のときもいろいろやってあるとこ? だよね?」

天平「外国から日本に何かしに来てた人が、台風で電車がストップしたけど帰国しなきゃいけないから、歩いて空港に行こうとしてたものの荷物が重くて困ってたら、ショッピングカートを使っていいよ、って使わせてくれたって、テレビでやってたとこ」

ユーリ「わかった。――そっか、そういう企業もあるんだ……」

天平「そのスーパーの関係者も、全員が中国に残って仕事しているわけじゃなくて、一部は日本に帰国したりとかしてるみたいだし、中国にある店舗の中には、当面、閉鎖することになった店舗があったり、営業時間を短縮したりしてるとかしながらやってあるとかで? 武漢って、封鎖状態だとかで、交通がストップしたり、制限されたりしている中でなんとか商品を調達して、食糧とか生活必需品とかを、自宅で待機している人たちのとこに宅配サービスやったりとか、してるらしいよ?」

ユーリ「武漢って、封鎖されてて、物流が滞ってる状態なんだよね? それって――戦後の日本みたいな状況なのかな? けど、封鎖されてたら、闇市とかもできないだろうし……。うちは農家だから、野菜とかはなんとかなるかもしれないけど、それにしたって食糧や品物が手に入らないって、想像したら、ホント、すごく怖い」

天平「サバイバル世界だよな? 物資が無くなるって。日本はマスクがないとかトイレットペーパーがないとか言って、時には殺気立ってる。けどこれがさ、薬や食料が手に入らないってことになったら――」

ユーリ「――どんなことになるだろう……」

天平「食べなきゃ人は死んじゃうからな。食糧を得られない状況って、死ねって言われてるようなもんだろ?」

ユーリ「戦時中だと、『配給』って言って、国から食べ物が、一応、配られてたって言うよね? 少ししかもらえないから、全然足りなかったみたいだけど」

天平「武漢には人がいっぱい住んでるから、一軒一軒にしっかり『配給』を行き渡らせるなんて、ちょっと難しそうだろ? かと言って、配給をするんでなければ、独自に買い付けるしかなくなるけど、お店に行くための交通機関が動いてなかったりするかもしれないし?」

ユーリ「発熱して自宅待機している人もいるかもしれないし、買い物に行って誰かと接触するのが怖くて、家に引きこもっている人もいるかもしれないし。買い物に行くっていうのだけでも、苦労があるんだね……?」

天平「って考えていくと、宅配サービスとかないと、自宅待機なんてできないだろうけど……宅配って、やる方は大変だよな」

ユーリ「そうだよね。そのスーパーの人たち、『自分たちがやらなきゃ!』っていうのはすごいことだと思うけど、がんばりすぎて、自分たちが倒れてしまわないようにしてほしいよね」

天平「そのためにも、がんばってる人たちの支援体制とかサポート体制を作っていけたらいいな――とか思っているうちに、日本国内でも、支援やサポートの体制を整えなきゃ! ってなってきたよなぁ」

ユーリ「そうだね、いろいろ考えないと――」



読んでいただいて、ありがとうございました。


次回もよろしくお願いします。

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