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最後の1日  作者: hyo
第1章
1/16

01

それが発表されてからはや1週間、過去の番組の再放送でしのいでいたテレビ各局は日を追う毎に脱落し、今となっては渋谷のスクランブル交差点を無言で映し続けているnhkのみとなった。

完全に放置の状態で流し続けるにはこれしかなかったのか、それとも最低限でも世間のためとなる映像を茶の間に届けようというNHKの最後の意地なのか、今となっては確かめようもない。


画面の右下には、まるで年越しのカウントダウンとでも言うかのように、1つ、また1つと数字が減っていくカウントが付いている。

このカウントはリモコンの青いボタンで消せますよ、などという馬鹿丁寧な説明も付いている。

そもそも電気もガスも水道も、ライフライン全般が無人運営出来るようになってはや10年、これほどまでにありがとうと声に出して言いたくなることはなかっただろう。


春奈はぼんやりと付けっ放しのテレビを眺めながら、普段の休みの日と大して変わらない生活が出来ていることに、教科書には載っていない星の数ほどいる偉大な先人に感謝した。

日本に生まれて良かったと、こんなにも心の底から思ったのは生まれて初めてだった。


最初の一報を報じたのは、やはりNHKだった。

あらゆる面で見事な発表だった。

これほどネットが発達した世界で、全世界同時に第一報を流したのだ。

少なくとも日本では、情報が事前にネットに流れてしまうなんてことはなかったように思う。

いや、もし流れていても、あまりに突拍子もないことすぎて拡散されなかっただけかもしれないけれど。


私たちに残されたたったの1週間という時間は、あらゆる通信機器から発せられたけたたましいサイレンで突如スタートした。

緊急を報じるJアラートがこれほど一般的になっていたのも、自然災害の多い日本だからこそか。


21時を回り、部屋で1人ベッドに横になってスマートフォンをいじっていた春奈は、サイレンのボリュームに多少驚きつつ、それでも落ち着いた手つきでテレビを付けた。

反射的にチャンネルをNHKに合わせると、真剣な面持ちのいかにもベテランな女性アナウンサーが手元の紙から顔を上げ、まさにこれから話し始めようというタイミングだった。


「先ほどみなさまのお手元の通信機器よりJアラートが発令されましたが、これは地震や津波などの緊急の自然災害、また他国からの脅威によるものではありません。繰り返します。先ほどみなさまのお手元の通信機器よりJアラートが発令されましたが、これは地震や津波などの緊急の自然災害、また他国からの脅威によるものではありません。」


充血した目に震えが止まらない手、ただでさえJアラートでピリついている春奈の神経には、プロとして気丈に話しを進める彼女がそれでも隠しきれない動揺を晒している姿だけで、事の重大さを察するには十分だった。

アナウンサーは、まるで放送に視聴者が集まるのを待つように、何度も同じアナウンスを繰り返す。

そして10回か、20回か言葉を重ねたのち、余りに乱暴にカメラが切り替わった。

そこには日本国民なら1度は見たことがあるであろう顔、天皇と内閣総理大臣が映っていた。


そこから先の放送はほとんど覚えていない。

確かに観てはいた、それは間違いない。

ただし思い出そうとどんなに頭をひねっても、浮かんでくるのは仏像のような顔をした総理大臣がパクパクと口を上下する光景だけだ。それほどまでに、話の内容は衝撃的だった。


「地球は、あと1週間後に滅亡します。」

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