表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お尻の縫い目が破れたら  作者: 二蝶いずみ
7/23

第六話 G男の死守

 コンコンコン 職員室のドアを叩く。


 とにもかくにも汗がとまらない。


 営業先でおしりの縫い目が破れるなんて! 身だしなみは営業の基本中のキホンじゃないか。なんてことだ。こんな失態、ライバルのE美には絶対知られちゃいけねえ。


 センパイどんだけ〜!!

 いつまでも私が一位とれるよーにそこまでしてくれなくても〜

 センパイ面白すぎ〜

 つーかそれ、セクハラですよ〜

 いやケツハラかな〜新種ぅ〜


 とかなんとか、甲高い声でバカにしてくる様子が目に浮かぶ。あー、想像しただけで腹が立つ。


 いやしかし、どう隠す?

 果たして、隠しきれるのか?!

 目を閉じて唾を飲み込む。


 どうぞ、と女性がドアを開けて出迎えてくれた。

 おっと、なんでこんなとこに俺好みのメガネ女子がいるんだよ。

 いろいろとやばい展開になってきた。


 がらんとした職員室の奥に、教頭と思わしきナイスミドルの姿が見えた。


「失礼します。」

 入り口でピシッとお辞儀をキメてから、すっすと教頭の前へ。

「こんにちは。スマイル体育器具の山根です。本日はお忙しい所、お時間をいただき、ありがとうございます。」

 目と目をしっかりあわせてあいさつ、名刺交換。もちろん、笑顔も忘れない。

 

『ヤバイときこそ基本に徹しろ』とは、入社当時、指導にあたってくれた先輩の教えだ。


「教頭のS辺です。」

 七三分けのロマンスグレー、上品な銀ぶちメガネ、地味だが仕立の良いスーツに、主張しすぎないネクタイといった出で立ちは、いわゆる教頭先生の代表だと言わんばかりの風格を醸し出している。

 しかも、年頃の割には長身で、がっしりした体躯から、スポーツマンであることを確信させるオーラが放たれている。

 なかなかの威厳の持ち主だ。

 

「どうぞ。」


 来客用のソファを勧められ、座るときに、更にビリっという音がした。


 一瞬の静寂に包まれる。


 もちろん、笑顔は死守。


 ……脇から、いや、全身から吹き出す汗。

 今まで汗なんかかいたことないとこからも、汗が出る。


 ん? という訝しげな表情を見せ、腕組みをする教頭。


 終わった……もはやこれまでか……


 内心諦めつつも、G男は事前に用意した資料をもとに、手短に自社商品の紹介をすませた。


 教頭は相変わらず難しい表情を浮かべて、腕組みしたままだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ