彼女は金が掛かる
彼女は金が掛かる。
「ねー、彼女。今暇ー?」
「俺達と遊ばない?」
「ファミレスで勉強なんかしてないでさぁ」
男達3人。野郎共が辛気臭く、ファミレスで次の合コン企画を挙げようとしていたら、そんなもんもーいやと思うほどの、かなりの可愛い子ちゃん。
「いやっ……」
「君、大学生?」
「俺達と同じじゃーん」
「カラオケ、カラオケ行こっ!」
真面目ちゃんのような勉強っ子。眼鏡に長い髪を纏めるキュートな髪留めと、内気な可愛さが光る子。しかし、体つきがとってもしっかりしていて、隠れボインちゃんとも観れる。
男達もテンション上がる。
「あの、私。勉強でぇ……」
めっちゃ可愛い子ー。彼女にしてぇっ……。それがもう、男達の表情に現われている。
座る彼女に問い詰めていく。
「勉強なんて後でいいからさー」
「俺達と遊べるなんて、この時だけだよー」
「金なんて俺達が出すからさー」
手を差し出す。それが、手を出すに成り下がる時。
彼女は拳を握った。それは男達に見えないように、テーブルの下で行なわれた事。
「名前は?名前は?」
「村木望月」
瞬間。
ドゴオオォォッ
彼女の拳が、男の1人の顎を撥ね上げた。こいつの口臭が酷い。歯を磨け。その口、閉じろ。
「遊んであげる」
「は?」
姿は可愛く。しかして、顔はどS。悪魔。不良。どれとも違う。
言える事は、残虐の限りを尽くす女が持つ、男を玩具のように扱う際立つ黒さ。目力は、女の性別を持つ鬼と言えるもの。
1人がやられ、2人の驚きが続く中、村木はそれはもう。彼女にとってはゆっくりと立ち上がる。眼鏡をとり、投げ。
空いた両手で
ムギュウウゥッ
「まず、球遊びしましょ」
「いいいっっ!」
「はううぅぅっ!!」
金的攻撃。金○、収穫攻撃。そんな遊びはしたくねぇ……
「お金、あるんでしょ?」
村木が投げた眼鏡が、また。村木の手に収まった時。
男達3人は床に転がり、泡を噴いていたという。もちろん
「最近の男子大学生はお金が少ないわね。これで女をたぶらかそうだなんて、夢見すぎ」
お金は全部、村木に取り上げられた。
◇ ◇
ポンポンッ
新しい鏡やファンデーション、髪のケア、流行りのメイク、洋服のクリーニング、可愛い小物、良い匂いがする香水。
女の子は忙しくて、金が掛かる。
「もーっ。難しいわね」
「村木、何してんだよ」
「あんたには分からないでしょ。パピィちゃん。新しいファンデが上手くいかないの」
久しぶりに会ったと思えば、そこでメイクをしちゃっている村木。
相手は友人のパピィ・ポピンズという、同学年の外人。村木とはまったく違って、とても大きな体を持つ色黒な女性。モテる要素はないが、多少の女らしさはある。当然、村木に匹敵する戦闘力を兼ね備えている……。
「オシャレが女の特権じゃない?」
「私はあんたみたいに可愛くないから、そんなに興味がないわ」
というか、そーいう物の全て
「男からぶんどっているでしょ?力ずくで」
「ええ、そうよ。私、強いもーん」
悪気なし。むしろ、戦利品を見せつけて紹介する。
「この鏡はナンパしてきた男を殴り倒した金で買ったものでー、このリップは彼女持ち(?)の奴がプレゼントとして買ったものを殴って奪ったの。この眼鏡はなんか可愛かったから、倒した男がかけてた奴を綺麗に奪ったの。まー、ドラ○エで魔物を倒して得るお金や道具と一緒と思ってよ」
「笑顔止めろ。女の利点と暴力の正義を堂々と使うとは……」
「綺麗なバラには棘があり、可愛い花には毒がある。なーんて言うじゃない?」
「お前は食虫植物だろ。そんなもん見えてこない」
パピィの悪口を簡単に、嘲笑ってくれる。
可愛いから言えるんだろう。
「女のオシャレは擬態なの。馬鹿な男をたぶらかし、搾り取るためにあるの。パピィも学びなよ」
「あいにく、お前みたいな性格をしてないんだ」
「ふーん、可愛くないわ。性格もね」
オシャレも一通り済ませて、パピィの本題を聞く。
「で?相談ってなによ、パピィ」
「私、彼氏ができた。どーやって接すれば良いか、分からない。教えて欲しいの」
「ふーん。それは良かったわねー」
………………
「一つ良い?私、彼氏がいないんだけど?え?なんでできるの?冗談だよね!?だって、あんた!ゴリラじゃん!女ゴリラじゃん!怪力女じゃん!!」
「動揺しすぎでしょ……」
「私ってモテない!?ロクな男が来ないとか思ってて、笑うつもりだったの!?」
「メイクとメッキが剥がれかけてるぞ」
嘘に決まってるでしょ。村木。
あんたをからかっただけ。
少しは彼氏が欲しいと思ってる事が、分かって良かったよ。