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こんな魔王ですまんな。

そんな訳で新企画です。どうぞよろしくお願いします。


……初っ端1話目から盛大にグロ表現ありです。ご注意を。

 『スターナイツ』のメンバーは走る。遂にここまでやってきたのだ。あと少し、あとすこしで──!


「ここが──」

「ああ。魔王城だ」


 『勇者』の目の前には、禍々しい城がそびえ立っていた。


 ☆


 魔物という存在が現れてから137年。『勇者』であるナズルは、ギルドからの依頼でここに出向いた。


 なんでも、勇者パーティー『スターナイツ』と肩を並べるパーティー、『アストラル』が全滅したとの報告。

 辛うじて帰還したリーダーが、ギルドに報告を終えた後に息絶えたらしい。……不自然な死に方で。


『このメッセンジャーに託すこの言葉は、国の王全員に伝えて欲しい』


 そんな前置きから始まる、『アストラル』がリーダーの報告。


『我は、魔王である。魔王という単語が何を意味するかは、諸君らもよくわかると思うが……あえて言うならば、魔物の頂点である』


 ギルドが騒然とする。メッセージは続く。


『魔物による被害に苦しむ人間共よ。状況に悲嘆するなら、魔王城に来い。いつでも歓迎する──なお、このメッセンジャーはまもなく死亡する』


 彼はそう言い終わった途端に、体の端からサラサラと砂になったのだ。彼がいた場所には、1握りほどの砂のみが残され、室内なのに吹いた風によって舞散った。


 その時ナズル達は別件で出かけており、話を聞いたのは少しあとなのだが……


『勇者様に、お願いがございます。どうか、どうか魔王を……』


 もはや顔見知りとなった受付嬢からの依頼。確かに、大半の魔物は脅威ではなくなった。最初に討伐された猪豚型魔物などは訓練用にされる雑魚に成り下がっている程に。


 だが、やはり被害があるのも事実だ。

 滅んだ国から逃げ出した難民たちが作り上げた小さな村が沈没(・・)したり、天空へ連れ去られたり、単純に火の海にされたり。


 希に飛んでくるはぐれ竜種がついでとばかりに国を焼いていくことだってある。

 その度に少なくない数のハンターや民が死んでいるのだ。


 だが──魔王を名乗る何者かを倒せば、魔物の襲撃が減る、あわよくば魔物そのものを消し去ることすらできるかも知れない。


 ナズル達は受付嬢に力強く頷くと、魔王城のある場所へと向かったのだ。


 ☆


「にしても、でかいな」

「いかにもって感じだよねぇ〜」

「皆、気を引き締めろ。『アストラル』がやられたんだ、只者じゃないんだぞ?」

「分かってるよ〜ん」


 斧使いのダズラが当たり前のセリフを、弓使いのマナが緊張感のない感想を述べたので注意をうながすも、マナの緊張感はどこかへ消えてしまったらしい。


「まぁ、緊張しすぎていざって時に動けなくなるよりかはマシだろう?それに、聖剣だってある」

「まぁ、な」


 飄々(ひょうひょう)とした態度の槍使いベルナーがナズルの肩にポンと手を置き、先頭を往く。


 聖剣とは魔物に対してのみ刃を向く剣のことで、扱えるのは現在ナズルのみだ。さしずめ『選ばれしもの』とでも言おうか……これは空の果てでの天人との戦闘で取得した。魔物から、魔物に特攻がつく聖剣が手に入る……皮肉な話だ。


「んじゃ、入るとしますか」

「ああ。殿(しんがり)は俺が務めよう」

「頼んだぜ」


 ベルナーとダズラを先頭に、魔王城へ突入する。城門の前の跳ね橋は既にかけられており、本当に歓迎するかのような佇まいだ。


 さらには城門まで勝手に開いたではないか。


「……舐められているのか?」

「いえ、魔王様は歓迎されておられるのですよ」

「ッ!誰だ!」


 全員が戦闘態勢に入り、声の主を探す。が、どこにも姿は見当たらない。


「フム、普通に正面におりますが……お気付きない?」

「なっ」


 開け放たれた城門から、頭の脇に巻角を有する紳士が現れた。というのも、「正面にいる」と言われるまでは無人だと思っていたのだ。


「……何者だ?」

「ああいえ、私はただの執事でございます。羊の、ですが」

「……人間ではないのか?」

「ええ。私は魔物ですよ?」


 ナズルは聞いたことがないと首を振る。今までの経験の中で、会話の成立する魔物などいなかったと。


「驚くのも無理はございませんが……魔王様からの伝言で察していただきたかった所でございますな」


 さりげなく毒を吐く羊──執事はメェェーと鳴いた。


「さあさ、こんな所ではなんですから、どうぞこちらへ。ご案内いたします」

「……背後から攻撃をするとは思わないのか?」

「しても構いませんよ?どうせ当たりませんし」

「…………」


 煽られてすぐに焚き付けられてしまうのはナズル自身直さなければならないという自覚はある。が、敵を前にして切らないという手はなかった。


「やめとけナズル。コイツ……強いぞ」


 普段は女ばかり気にして、ろくな仕事をしないベルナーが制止をかける。珍しく鋭い目付きになっており、その姿勢にいつもの余裕はない。


「(なぜ止める、ベルナー。俺の命中率は高いはずだ。それに聖剣だって……)」

「(いや、アレには当たらねぇよ……悔しいが、経験の差だ)」


 経験の差。ナズルにはイマイチ理解できない。


 このハンター業界には、レベルが存在する。レベルは高ければ高いほど強く、丈夫に、素早くなる。


 そのレベルのミソとなるのが経験値。ハンター達は魔物を倒すと同時にこれを手に入れ、自らを強化していく。


 故に、獲得した経験値こそが絶対的な強さであり、誇りであり、その人物の価値なのだ。


 ちなみに、ナズルのレベルは165。ダズラは160、マナは158、ベルナーは166だ。


 ベルナーがナズルよりレベルが一高いのは、先程レベルアップしたからだ。間もなくすればナズルも追いつく。


 それだけ高いレベルをもってして、倒すどころか攻撃を当てられないということはないはずだ。というのがナズルの思考。


「(確かに強さは経験値に依存する。だが、それは俺たち人間の話だ。魔物にそれが通用するかもわかんねぇ)」


 ナズルは言われてハッとする。どうして魔物側にも経験値があると思ったのだろうか。相手が人間に近いから?


「(取り敢えず、ここは従うのが無難だろう。魔王を見て、そこから進退決めりゃあいい)」

「(ああ。そうだな)」


 従う旨をダズラとマナにも伝え、執事のあとに続く。


「フム、結構です。時に判断を間違えれば、命をも落としかねませんので……まぁ、勇者様に言うことではありませんか」

「ああ、百も承知さ」


 振り返ることなく放たれた執事の言葉に素っ気なく返す。今こそ従っているが、あまり敵と仲良くするべきではない。


 場内をしばらく進み、いくつかの階段を上がった先。ガーゴイルと呼ばれる魔物を(かたど)った石像の合間に荘厳な扉が現れる。


「魔王様。連れてまいりました」

「うむ、開けるが良い」


 音すらなく開かれた扉の向こう、レッドカーペットならぬブラックカーペットが敷かれた先。


 玉座らしき豪勢な椅子と机が一席。


「どうした、前へ来ぬか」


 誘われるがまま、玉座に歩み寄る。最大限の警戒はし続けるが。


「よくぞ来たな、人間の勇者よ。まずは歓迎しよう」


 執事に机を運ばせた、夜よりも暗いマントを頭まで被り、何故か般若(はんにゃ)の面をつけている魔王はそう言って立ち上がり──


「「「「はぁっ!」」」」


 一斉に攻撃を受けた。

 マナの風を切り裂く矢が、ダズラの竜種の顎さえ砕いたスイングが、ベルナーの音すら置いていく突きが。


 そして──ナズルの邪を切り裂く斬撃が。


 流石、熟練のパーティーと言うべきか。その見事な連携は狙い違わず魔王を捉え、遂に人類の悪夢を終わらせ──


「おいおい、そう焦るな……前に来た者といい、君らは性急すぎる」


 そう簡単には、行かなかった。


「なんのっ!ヘヴィ・スマッシュ!」

「パラライズ・ショット!」

「穿孔突き!」

「闇祓い!」

「……ああ、全く。元気だな、君らは……」


 魔王が呆れたように肩を竦め、正面からすべての攻撃を受ける。防御の気配はなく、すべての攻撃が完璧に決まった。


 4人の奥義によって煙が立ち込める。極度の緊張感から息も早くなる。


「……どうだ!?」

「うぅーん、悪くない連携だ。だが、それだけ。せっかくの奥義は全くスキを作らずにブッ放すし、煙で敵の状態は見えないし……なにより──」


 信じられない。まだ煙が晴れずによく見えないが、声の主は確かに魔王だ。


 誰かが一歩、後ずさりした。ザリっという音がやけに響く。


 やがて煙が晴れ、ナズルたちが見守る先には──


「なにより、一国の王が前にて抜刀するとは、これいかに」


 全く無傷な魔王が立っていた。


「なんだと!?」

「全然効いてない……」


『スターナイツ』のメンバーの顔に、焦燥が浮かぶ。


「なぁゴートン。この無礼なヤツら、どうしようか」

「魔王様の思うがままにするがよろしいかと」

「だよな!いいよな、やっちまって!」


 魔王が、そのマントと般若の面に手をかける。ナズルたちはいっそう集中力を漲らせ、魔王の出方を伺い──


「「「「はぁっ!?」」」」


 全員で絶句することとなる。


「やっぱ、驚かれるよな。普通」

「魔王様は特異な魔物でございます故、無理もないかと」

「ま、いいんだけどよ……」


 どこかしょんぼりした魔王……いや、魔物。ナズルたちは大変見覚えがある。

 顔はない。口もない。それどころか、体は寒天を人の形にしたような存在。


「改めて名乗りをあげよう。我こそは魔物の中の魔物、サンタン=ベルゼである。まぁ、君らからすれば、我々は『経験値』に過ぎないのだろうが、な」


 サンタン。これはただの種族名だ。


 サンタンという魔物は、それこそどこにでもいる、平凡な魔物だが、その特徴として「経験値がほかの魔物より多く手に入る」というものと、「どう足掻いても与えるダメージは1になる」というものがある。


 だから、ナズルたち『スターナイツ』もよく討伐をした。むしろほかの魔物よりも多く狩ったかもしれない。


「そんな、だって……」

「ああ。これはありえない……ありえないんだ!」


 その理由は、サンタンの体色にあった。


「ああ……すまんな、シルバーサンタンで」


 そう。ベルゼは銀色だったのだ。これが何を意味するのかというと……


「EXP、1000……」


 経験値1000。これは、レベルが160台に突入したナズル達からすれば「ないに等しい」のだ。


 くすんだ銅色をしたサンタン──ブロンズサンタンは100、ベルゼのようなシルバーサンタンは1000、黄金に輝くゴールデンサンタンは10000。


 そして、サンタン種の頂点。虹色に輝くレインボーサンタンは実に10万経験値を貰えるのだ。


 普通レベルは上がれば上がるほど、敵から得られる経験値も少なくなる。が、なぜかこのサンタン種だけは年間とおして経験値の量が変わらないのだ。


 故に、初心者から熟練のハンターお気に入りの、「経験値の塊」だったりするのだが……


「「「「割に合わねえっ!」」」」

「はっはっは!まあそう言うな!1ダメージでもいつかは倒せるかもしれないぞ?」

「倒したところで貰える経験値がすくねぇんだよ!」

「そうだな。シルバーサンタンだからな」


 ズバリ、割に合わないのだ。魔物が多く住まう魔王城周辺は魔境と呼ばれ、それこそ『スターナイツ』ばりに実力がないと近寄ることすら困難である。


 苦労のその先に待つ相手、魔物を統べる魔王が、こんな、こんな塩経験値──ッ!


「まぁ、そこらのシルバーサンタンと違って、俺は体力1500に加えて、自動回復と状態異常無効があるからな。まぁ頑張りたまえ」


 ヒラヒラと器用に寒天状の腕を振るベルゼに、ナズル達の頬が引き攣る。殴っても殴っても1ダメージしか食らわないサンタンは、総じて体力が低い。かのレインボーサンタンでさえ100しかないのだ。


 だというのに、万を超える体力に、自動回復?どんな冗談だろうか。


「ちなみに、回復頻度は?」

「3秒ごとに100だ」

「勝てるわけがねぇだろうが!」


 ナズルがよせばいいのに訊ね、ダズラが頭を抱える。


「頑張って会心出せばその限りでもないだろう?まぁ、会心の一撃が生み出されても2ダメージなんだがな」


 会心の一撃、またの名をクリティカルヒット。通常攻撃の2倍の威力で攻撃できるのだが、これはめったに出ない。針の穴に糸を通すように、一定時間の集中を以て、ようやく可能性が浮上する程度。もしくはただの運とも言われている。


 そんな、極度の集中を発揮しても与えるダメージはたったの2。1500の体力を持ち、自動で3秒ごとに100も回復する相手に2のダメージ。たったのッ!それだけッ!


「ちくしょう!取り敢えず攻撃だ!」

「ああ!抜け道があるかもしれない!」


 ダズラの、攻撃力よりもヒット回数を重視させたラウンドスイングが、ベルナーの疾風突きが、マナの矢全てが、ナズルの神速の剣戟が。


 あきらめを知らない、と言うよりかは敗北を知らないと言った方が正しいか。そんな彼らの無謀な挑戦は、果たして無駄に終わった。


「うん。3秒間でヒット数68。内、会心の一撃はたったの3回。合計して71ダメージだ。

 ……やる気あんの?君ら」


 ヒット数68、これはかなり好成績だ。クリティカルヒット率も、そんなに悪くない。


 だが、秒毎100回復する化け物には通用しなかった。既に体力は全快、ナズルたちは疲労で同じ攻撃は出せない。


「は、はは……本当に割に合わねえのな。勝てっこねぇ」

「世の中には理不尽ってものがあってな。

 理論上、俺を倒すには秒間100ヒットを超えるか、全部改心で50ヒットを超えるか……それくらいかな?」


 よく討伐したサンタンが。しかも駆け出しの頃に狩りまくったシルバーサンタンが。


 初めはダズラだった。いち早く諦めの言葉を放ってしまったからだろう。

 ふと気付けばベルゼの姿は目の前から消えており、代わりにダズラの腹にめり込む寒天状の腕。


「いやぁ、サンタン種の攻撃は、希にとんでもない威力になるものがあるなぁ」

「っが、はっ」


 まるで関心がないように、それこそ子供が歴史的建造物を見せられて「ふぅ〜ん」としか思わないようなセリフとともにダズラが吹き飛んだ。壁に衝突して力なく項垂れるダズラは、既に瀕死である。


「ダズラァ!貴様、なにをした!?」

「あれ、もしかして知らない?サンタン種って、【ミラクルパンチ】って攻撃してくるだろ?威力変動のやつ。あれって、超低確率で即死なんだわ」


 ナズルはヒュッと息を呑む。そんな攻撃、聞いたことがない。


「まぁ、その時その時で威力に違いが出るのがミラクルパンチなんだが……そらよっと」

「ッ!?」


 ベルナーが内側から弾けた。腹部がなくなり、足と頭だけが残った。ボトリ、べチャリと嫌に生々しい音とともにベルナーだったものが崩れ落ちる。

 主を失った槍が、無機質な音とともに どこまでも転がっていく。


「よぉし即死ぃ!あ、こんな感じな。即死って」


 もはや、言葉が出ない。パーティーの元気印だったマナは既に正気を失ってしまっている。


「お母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さんお母さん──」

「おおぅ、これはこれで不憫だな。送ってやるか」


 スっと引き絞られたベルゼの腕。

 即死効果が現れるかはわからないが、場合によっては──!


「やめ、やめろぉぉ!」

「うおっ、ようやくやる気になったか?」

「やめろ、やめてくれ!なんでもするから!」


 ベルゼの腕に必死にしがみつき、攻撃をさせまいと言葉を紡ぐ。


「……残念、減点だ」

「えっ」


 マナが血だまりになった。ベルナーのように弾け飛ぶのではなく、まるでもともと「血の塊」だったかのように。


 広がる血だまりは、ナズルの足元に届く。


「あ、ああ……」

「頼む側の態度ではないぞ、それは。ましてや王を名乗る者の前でとる言動じゃない」

「ああ……」


 へたり込む。力なく、何もかもを諦めて。


 彼は「無礼だったから殺った」というのだ。自分の言動が、仲間を殺した。言外にそう言われている気がして、もう立ち上がる気すら失せた。


「せっかく歓迎しようと思ったのに……人間とは、よく分からん」


 不服そうな、まるでおもちゃを取り上げられて拗ねているような、魔王の声。


 死が、来る──


 ◆


 ベルゼは、特異な個体である。


 その理由として挙げられるのが、魔物の生まれる際にごくごく希に起こる……変異種だ。


 魔物発生から130年以上たった今でも、ベルゼ以外の変異種の数は指の本数で事足りる7体。


 その変異種は、変異種故に特殊な能力を持つ。


 例えばベルゼの場合。


 サンタン種は全員が攻撃技として【ミラクルパンチ】、その他の能力として状態異常無効、被ダメージカットを持っている。


 しかしベルゼは、ここに特殊能力として『学習』というものがあった。


 この『学習』、人間の学習の範疇で考えていると痛い目を見る。あの勇者のように。


 彼はベルゼの能力を知らなかったようだが、知ったところで何も変わらないだろう。

 ベルゼの『学習』は、言語から戦闘技術まで、全てを化け物じみた速度で習得していくというものだ。


 幸い──人間からすれば最悪だが──ベルゼの生まれた場所は『経験値ダンジョン』と呼ばれる、それなりに高い山の山頂付近だ。


 山頂にはレインボーサンタンがウヨウヨとおり、ベテランハンターたちはこぞってここへ足を踏み入れた。


 そんな山奥にやって来て、間抜けにも死んだハンターを、まだ通常のサンタン並の知能しかなかったベルゼは観察したのだ。

 そして知る。


 ──なんか面白い生き物がいる、と。


 この時、ベルゼの日課が決まった。


 1、レインボーサンタンの群生地である山頂で、どうにか隠れながら過ごす。


 2、戦闘観察。


 3、あわよくば死体回収、解析。


 これらを4年半ほど繰り返し、遂に単騎でハンターを倒した。【ミラクルパンチ】は、ダメージにムラがある。|MISS(0ダメージ)から即死まで、その時の運次第で狩るか狩られるかが決定する。


 ベルゼの初撃は5ダメージだった。非常に焦りを覚え、出るはずのない冷や汗がドワッと出るのを感じた。


 だが、レインボーサンタンの傍らでベテランハンターの動きを『学習』し続けたベルゼは敵ハンターの攻撃を紙一重で躱しつつ、二擊目を放ったのだ。


 結果は、即死。


 哀れなハンターは、血反吐をまき散らしながら惨たらしく死に絶えた。


 ベルゼは言い得ぬ程の達成感を学習し、さらにハンターを狩り続けた。


 剣士、戦士、槍士、弓師。双剣士から鞭士……


 その尽くを倒し、学習していくうちに、なぜか減った体力がもどっていることに気がつく。


 ハンターたちがレベルアップした際に、急に元気になる現象と重ね合わせて、一つの結論に至る。


 ──どうやら、魔物にも経験値制度があるらしい。


 その事を悟ったベルゼは、ハンター狩りに拍車をかけた。戦士は経験値が多く貰えるから見かけ次第倒して、弓師は大して経験値がもらえないのに前衛と組んでくるから厄介など、日々研究と戦闘(経験値集め)を続け──


 いつしか体力は1000を超え、自動回復、そしてもう1個、それこそバランスブレイカーのチートスキルを手に入れてしまったという訳だ。


 その後、色々あって魔王なんてものをやってるわけだが……魔王となるのにも、色々あったのだ。

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