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中年夫婦を揉む

「いやぁ〜びっくりしただ。まさかこんなとこさ人っこいるなんてよぉ。」


狩人の男が戸惑いながら話す。無精髭でなかなかふくよかな中年男性だ。年は四十後半という所か。


聞けばここは彼の狩場らしく、いつものようにウリボーを狩りにきたのだが、そこで俺に出くわしたという。


「こんな場所に何も持たずに一人でいるなんて無謀なやつだぁ。とりあえず、おらぁの家さこい。魔物もいるし、ここじゃあ落ち着かねぇ。」


・・・狩人の男はめちゃめちゃいい人だった。


「そこで伸びてるスライムはほっといても問題ねぇやな。」


狩人の男性はそう言って、俺を自分の住んでいる家に案内してくれるという。

俺は黙って狩人の男性の後をついていった。

しばらく歩いた後、あいつはどうしただろうとスライムのいた場所に視線を向ける。


気を取り直したのか、出会ったときのようにスライムは真っ直ぐこちらを見ているのが遠目に見えた。


ニタァ


スライムは不気味な笑いを残して茂みの中に消えていった。


一体何の笑いなんだよ。

いや、元々ニヤけたように見える馬鹿面なのかもしれない。

そんなことを考えながら俺はその場所を後にした。


◇◇◇


「ここがおらぁの家だ。とりあえず休んでいきな。」


狩人の男性の家だという場所についた。

目の前に見えるのはログハウス、そんな印象を受ける。

こんなジャングルみたいな所に突如現れた家に、安堵の気持ちでいっぱいになる。


案内されている間に二回も魔物に襲われたのだから、少しでも人の住む気配のある場所に着いたことでそんな感情が芽生えたのだろう。


狩人の男性曰く、襲ってきたその魔物はマンドラゴラという名だそうだ。


地中に根を伸ばしており移動することはできないらしく、避けて通れば問題ないらしい。

が、知らない俺は普通に目の前を通ってしまった。


マンドラゴラの触手に急に足を捕まえられ、ずるずると引きずられる形になった。

すぐに狩人の男性が短剣で触手を切って助けてくれたのだが・・・


マンドラゴラは捕まえた獲物に触手から痺れる液体を注入、動けなくなった獲物を生きながらにしてその水分をちゅーちゅー吸うのだという。



恐ろしさでいえば先程出会ったスライムの比ではない。マンドラゴラの所業を考えるとむしろスライムが可愛く見えてくる。



それをなんともまぁ、二回程同じことを繰り返した。

だってマンドラゴラは普通に背が低い木程度にしか見えないんだから。

異世界にきたばかり、見慣れない俺が気づく訳がない。


全然気づかずに二回目を迎えた俺。

てゆうか教えろよと、狩人の男性に身勝手極まりない苛立ちを覚えずにはいられなかった。

助けてもらっているのに、なんとも心の器が小さい俺だ。


だけど理不尽すぎるだろ。

一人だったなら絶対死んでる。

普通転移したらチートな力を持ってるんじゃないのか?

特別すごい能力を貰って異世界に転移した訳じゃなく。

身体能力で言えば元の世界にいた時と何ら変わりない。

魔物が襲っていいのは、チートな力を持った転移者だけにしてくれよと思わずにはいられなかった俺は間違っているのだろうか。



狩人の男性は早速家の中に案内してくれた。

簡易なキッチンにダブルサイズのベッド。棚の上には何やら調合されたらしきものが瓶にいくつも詰められている。

狩ってきた獲物はべつの場所で解体しているというのだが、よもや俺を解体するわけじゃないよな?

ホラーゲームのやりすぎでそんな疑問も浮かんでしまったのだが、すぐに別なものに意識を奪われた。


「あら、お客さんかい?」


後から女性が家の中に入ってきた。

年はおそらく三十後半、やや顔にシワができ始めているものの丸みを帯びた顔は可愛らしい顔をしていた。

そして目を引いたのはその巨乳。


男の性なのだろう。顔を見たあとについ胸のサイズを確かめてしまう。着ている服によってある程度盛られているものの、確かに巨乳だ。


「母ちゃん、森にいた遭難者を連れてきただ。若いのに、きっと苦労したんだろうよ。」


「あらあら、そうなの。何もないけどゆっくりしていっていいからね。」



案内されている途中、狩人の男性には気がついたらここにいた、ということ話してみたのだが、何故か自殺志願者と思われてしまった。

若いのに苦労したんだべなあ、と何やら都合よく解釈されてしまっているらしい。

まあ異世界転移したなどと言っても信じないだろうし、めんどくさかったから苦笑いだけしておいたのだが。


母ちゃんと呼ぶからにはこの女性は男性の奥さんなのだろう。母親にしては若すぎだ。


それから俺はウリボーの肉煮込みを昼食としてご馳走になり、自殺者志願者と勘違いした二人にしばし慰められることになった。


「母ちゃん。それはそうとこいつは不思議な力を持ってただ。おらぁの腰を触った時は何事かと思ったんだが、なんと急に腰の痛みが和らいだんだ。」


「あら、長年悩まされたあの腰痛が?何やってもよくならないって諦めてたのにねぇ。」


「んだ、母ちゃんもやってもらうといい。肩凝りがひどいって言ってたべ。そんくらいはやってくれるだろ、若いの?」


そう言われたが俺は返事をためらった。

あの光った部分に触れたことでスライムは恍惚な表情をした。狩人の男性は腰痛が良くなったと言った。しかしそれが万人に効果があるとは分からなかったから。


だが、確かに巨乳中年女性の両肩に光っている部分があるのを俺は一目みた時から気づいていた。


巨乳のせいじゃね?

言いかけたが、なんとか言葉を飲み込んだ。


どうしても、言ってはならない、やってはならないという事を俺はやってしまいたくなる人間だ。


さっきは好奇心に負けて狩人の男性にやってしまったのだが。

いや、むしろやってしまうことの方が多いだろう。


「ま、まぁ今は疲れてるだろうから、今日はゆっくり休むといいだ。」


黙り込んだ俺を見て、狩人の男性は俺を気遣ってくれるような発言をしてくれた。

狩人の男性は作業場にいき捕えていたウリボーの解体をするということで、そう言い残してでていってしまった。


巨乳中年女性と二人きりになり、気まずさが残る。


女性も特に話すことがなかったのか、肩凝りなんとかならないかねぇ、そう言いながら自分の肩を揉み出した。



女性と二人きり。

その女性は肩凝りの解消を求めている。

男性はいない。


よし、やってみるか。

男性がいないことをいいことに、下心まんまんで近づく俺はくされ外道といっていいだろう。


だって、男の子だもん。分かるだろ?



肩揉みやってみましょうかとの俺の提案に、若干戸惑った巨乳中年女性だったが先程の男性の証言もあり、お願いしてみようかしらと話に乗ってきた。


俺は女性の後ろにたち、その両肩で光る部分を確かめる。


そして


もみもみもみもみもみもみもみ。


「あぁ、思ってたよりはいいわ。気持ちいいわねぇ。」


そんな言葉を女性は口にする。


肩を揉むこと二十分。

女性の両肩の光が消えた。



「・・・???嘘?!肩こりが治ってる!!!」


ばっと俺を振り向く驚愕した顔の中年女性。

追いかけるようにぶるんと後出しされる巨乳。


二十分のマッサージなどしたこともない俺の手の握力はもうほとんど無いに等しかった。


ラッキースケベ的なことはない。

ただひたすらに肩揉みだけして終わった。


だが女性の反応を見るに、やはり光った部分をマッサージに近い刺激をすることで、癒やしの力として働いていることがわかった。


「あなたすごいわねぇ!私の肩こりもどうやっても治らなかったのに、マッサージの天才じゃないの!こんなとこで死のうとしてる場合じゃなくて、商売にした方がいいわよ?!」



なるほど。

それだけ絶賛してくれるならそれもいいかもしれない。

チート能力など持たない俺にもたらされた一筋の光明のような言葉だ。


全く普通の身体であるからして、英雄になろうなんてはかない夢にすぎなかったのだ。


「身体の調子もいいことだし、夕食の準備にするとしようかしら。あなたは休んでていいからね。」


女性はそう言ってキッチンに向かっていった。


休んでいい、そう言われた俺はとりあえず地べたに座り込む。

流石に急展開すぎて身体が老け込んだように疲れてしまった。


しかし、あの唐突に出会ってしまったスライムはどうしているのだろうか。そんなことを考える。

最初は気持ち悪かったが、あれはあれで可愛げがあったんじゃないか?

あの感触、まるでおっぱ・・・。

違う、あれはスライムだ。

駄目だ、中年女性の巨乳が俺に与える刺激が大きすぎる。

気持ち悪かったはずのスライムが愛おしいものであるように錯覚してしまう。

くそっ、次に会ったらあのスライムを俺の気の済むまで揉みしごいてやる。


そんな馬鹿なことを考えたり、今後の先行きに不安を感じていた俺の耳に小気味いいリズムが聞こえてきた。

女性の料理する音だ。野菜か何か切っているのだろう。


タンタンタンタンタン


まな板と包丁のぶつかる音が聞こえる。

やはり人妻ともなれば料理する機会が増えるとともに、その腕も上がるのだろう。

危なげないリズムがなんだか聞いていたくなる。


タンタンタンシュタタンシュタタン


いいねぇ、女性もノってきたようだ。


シュタタタンシュタタタタタタタタタタタタン


ん?さ、さすがに早すぎじゃね・・・?


「あらやだ。いつの間にこんなに料理の腕上がったのかしら?肩凝りが解消されたから、かしら?あなた、ありがとうねぇ。」



余程重度の肩凝りだったのだろうか。野菜を切る包丁のスピードがものすごく早くなっていることに女性自身もびっくりしているようだ。



しばらくして俺はその場に雑魚寝して眠ることにした。


夕食は野菜煮込みのスープ。

そしてその夜俺は毛布だけ貸してもらい作業場で眠ることになった。


意図せず異世界転移を果たした初日の夜。

興奮と疲れによって眠いような眠くないような俺にまたもや刺激的な音が耳に入る。


どうやら中年夫婦は、夜の営みをしているようだった。

巨乳中年女性の押し殺したような、近くに人がいるのだから聞こえてはまずい、しかし意図せず出てしまう、そんな声が聞こえてくる。

巨乳の揺れる中年女性の姿を妄想した俺は、はがゆい悔しさを押し殺し、自分を慰めた後、毛布を頭からぬっぽり。

あ、間違えた。

すっぼりと覆いかぶせるようにして無理矢理眠ったのだった。



翌朝やけにつやつやした顔の中年夫婦と朝の挨拶を交わした後、狩りに出かけるという男性に腰のマッサージをしてくれないかと頼まれた。


俺はあんたの夜の営みのためにマッサージをしてるのか?

言いかけたが、そこは俺も大人な対応をして、ジト目を向けるだけに留めておいた。


まぁ、夫婦の家にしばらく置いてもらえることになったたため、せっせと男性のマッサージをすることにしたのだけれど。


やはり男性の腰は光っている。

出会った時に男性の腰に触れたことで一度その光は小さくなった。

しかし、昨日の夜の営みのせいかその光は出会った時のように、また大きな光となっていた。


疲れ具合によって光の大小があるのだろうとその時俺は理解するに至った訳だが、なんだか釈然としない気分だ。


入念にマッサージをしたおかげか、男性の腰の光は消えていた。

しばらくすれば、また光だすのだろうけれど。



◇◇◇


「しーっ。あそこにウリボーがいる。若いの、みていろ。」


俺はやることもなかかったため、男性に連れられて一緒に狩りに出ていた。

まあ俺は見ているだけなのだが。


男性の視線の先には一匹のウリボーがいた。

男性は俺に見ていろと声をかけた後、ゆっくりと手にした弓を引き縛る。


一直線ストレートアロー


そう男性が言い放つと、放たれた矢は物凄い速度で真っ直ぐにウリボーに向かって飛んでいったようだった。

俺には速すぎて矢の飛んでいる姿は見えなかったのだが、ウリボーを貫いた矢がそのまま近くあった木に突き刺さっていたのを見つけることができた。


男性が使ったのは弓スキルにある一つだという。この世界にいる者はおおよそスキルを持っており、そのスキルを使って魔物を退治したり狩りを行ったりしていると男性が教えてくれた。


でしょうね。男性が何を思うか知らないが、そんな風に適当に答えておいた。



「ふぇ?!なんじゃこのスピードと威力は?!」


なんだよ?自慢か?いくら俺に戦闘スキルがないからといって自慢気にいうのは反則だろう。


不思議そうな顔で自分の弓をみつめる男性。

こんな強力なスキルだったか?そんなことをぶつぶつ言っている。


近くにもう一匹ウリボーがいたのだろう。


ブヒィッと声をあげて逃げていこうとした瞬間、男性はすかさず弓を構えた。


ぶつぶつ言いながらも獲物の気配を感じだ瞬間すぐに弓を構えるのは流石狩人と言っていいだろう。


追跡ホーミングアロー


そういって男性が放った矢は生い茂る木をひゅんひゅんと交わしながらウリボーに向かっていく。

ウリボーは矢が飛んできたのが分かったのか、当たる直前ぴょんっと真上に飛んだのだ。それに合わせて矢もびょんっとウリボーめがけて軌道を変えた。そしてウリボーに突き刺さる。


「ふぇ?!なんじゃこの追跡能力は?!」


おいおい。既視感デジャブにも程がある。

何回自慢する気だこの男は。


「おかしいな。こんな威力や追跡能力がある程のスキルだったはずねぇべ・・・」


知らんわ。

くそっ、何で俺にそんな能力を与えなかったんだよ。声には出さないが男の自慢に怒りと呆れるばかりの俺だった。


その日は二頭のウリボーを狩り、俺達は帰宅した。


男性の家に帰った後、巨乳中年女性に肩のマッサージを頼まれた。

身体がすこぶる調子良かったため、家の掃除を隅々行ったのだが肩凝りが再発したという。

家が尋常じゃないぐらいぴかびかになっていた。消えたはずの巨乳中年女性の両肩の光は、再び淡い光を帯びていた。


せっせと女性のマッサージをしてあげた。

もちろん、両肩の光が消えるまで。


その夜作業場で寝た俺に夫婦の営みをする声が聞こえてきたのは言うまでもなかった。

散歩がてら作業場を出て、家の方に視線を向けた。決して覗こうなどと思った訳ではないのだが、窓越しにことに及んでいる巨乳中年女性と目が合ってしまった。

すっと視線を逸らした俺は、今日もまた自分を慰めることになることを嘆き悲しみ、作業場に戻っていった。



ニタァ



そんな俺を遠くから覗く丸い形のあいつの存在に気づくこともなく。


『ピュ〜イ〜』

(み〜つけた〜)

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