出発
あれから数日間、クレア、マコに少しだけ稽古をつけてもらった。
クレアに剣を教わろうとしたが、本物の剣はもちろん木刀もダメ、おもちゃの剣もダメ、しまいには棒状の風船になってしまったが、結局素手でがんばることにした・・・
マコには細かい魔力のコントロール、ファイアボール以外の魔法を少しだけ教わった。ことあるごとにクレアが割って入るもんだから中々進まなかったが、剣に比べたらかなり有意義な稽古になった。
最終的な2人の結論は”このままで十分強いから必要ない”ということだった。
そして、魔王討伐に向けて出発の日が来た
「とうとう出発だな、クレア」俺
「そうだな。身が引き締まる思いだ」クレア
「僕も忘れないでよ~!」マコ
「まずは南に向かうんだよな?」俺
「そうだよー。魔王の所に行くにはまず四天王を倒す必要があるからね!」マコ
「ここからだと南の果てのバルドルが一番近いからな。」クレア
「よし、わかった!出発しよう!」俺
満を持して3人で歩き出す。二十歳は過ぎてしまっているけれど、こうファンタジーが始まる感じはかなりテンション上がるな! ド〇クエのテーマが流れてきそうだぜ!
街が見えなくなるくらい歩いた所で、目の前に狼型の魔物が現れた
「お、こいつが魔物だな!」
「うん、タクミくんは初めてだっけ?」
「そうなんだよ、すげーこっち睨んでない?」
「魔物は人を襲う習性があるからな」
ガァー!!
とうとう魔物はこっちに向かって駆けてきた。魔物との戦闘は初だけど大丈夫かな? とりあえず身構えてみる
スパ!
「え?」
5m先くらいに来たところで突然魔物の身体が真っ二つに切り裂かれて消滅した
「あれ? どうなったんだ?」
「私が切り捨てた」
「クレアが? いつの間に?」
クレアの初動に全く気が付かなかった。一瞬でソニックブームみたいなものを出したってことか。俺の意識が魔物に集中していたとはいえ、早すぎる
「タクミくんはとてもレアケースだから実感が無いだろうけど、クレア様はこの世界有数のソードマスターだからね。遠くの敵すらひと振りでやれちゃうんだから!」
「マコ、別に自慢するようなことじゃない」
「だって! タクミくんはクレア様の実力を知らないから」
「仮に私がタクミに本気を出せたとしても、勝てないよ」
「そんな! さすがにそれは言い過ぎじゃないですか?」
「マコを見ただろう?タクミの力はまだまだこんなものじゃない。私たち今まで見てきたものなんて、ほんの一部に過ぎない」
「それは、、そうですけどぉ」
「この旅は必ずうまくいく。タクミはそのためにこの世界に来たと私は思っている」
「ま、まぁ、そうなんですかねー」
クレアの過度ともいえる俺推しにマコがちょっと拗ねる。正直な所、クレアの洞察力がかなり高くて俺は何も言えなかった。実際そうだし
やはり、剣姫としてのクレアは相当すごい。前からちょくちょく感じていたけれど、この件でさらに増した。