表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

あせる・3

ことりちゃんは勉強机のところに移動して

「ふーん、一応勉強もしてるんだー。」

なんてつぶやきながら、教科書を引っ張りだして戻した。

「一応ってなんだよ。」

と言いつつ、背後にジリッと近づいた。


「ことりちゃん。」

「ん?」

振り返る髪がふわっと香った。

甘い香りと汗の香りが混じったような、久しぶりにかぐ匂い。

あっ、というような顔が間近に見える。

勉強机に手をついて支えにして、ありったけの背伸びをして、チュッと触れるキスをした。


「かずき…」

何が言おうとする唇をもう一度塞いだ。

今度は3秒ぐらい。

3回、4回と繰り返し、唇が触れる時間を徐々に長くしていく。

これをすると段々ウットリとした顔になっていって、そして黙ってしまうのを知っている。

でも今日のことりちゃんは違った。

何度目かに唇が離れた瞬間、はぁと熱い息を吐きながら言った。

「やめよう」


「ことりちゃん、うるさい。」

俺は下から睨みつけ、もう一度唇を塞いだ。

ことりちゃんは「んっ」と声にならない声を出して受け入れた。

なるべく長く、できるだけ長く、黙らせてやろうと思った。

息が苦しくなって、顔が離れたその瞬間

「わたし……」

と、真っ赤な顔をして切り出したことりちゃんに

「テニス部のナントカ先輩?」

意地悪っぽい返し方をしてしまった。


「ナントカじゃないよ! 鈴木先輩だ…」

最後まで言わせない。また唇を塞ぐ。

何度か啄むようなキスを繰り返した後、顔を見上げて言った。

「ナントカ先輩に、斎藤ことりとキスしてますよーって言っちゃおうかな?」

ハッと目を見開くことりちゃん。


「キス続けてくれたら、言わない。」

そう言ってジッと見つめると、ことりちゃんは目線をそらしながら

「絶対に…誰にも秘密だからね…?」

「約束…破ったら一生口聞かないよ…」

と、ぽつり、ぽつりと言った。


「絶対、約束する。誰にも言わない。」

そう言って、そっとキスをした。

ことりちゃんはもう、一切抵抗しなかった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ