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やめる・5

今日から中学生。

嬉しいことに聡とまた同じクラス。1年B組だ。

学ランを着た聡は、小学生の頃よりも、さらにイケメン度が増したような気がする。


体育館で入学式が始まる。

新入生はクラスごとに男子が左、女子が右で列を作り、在校生の座っている真ん中を進む。

進んでいくと右側に、肩の下までサラリと髪をたらした、見知ったシルエットがあった。

一番通路寄りの席に座っている。ことりちゃんだ。


式の最中。

校長やPTAのつまらない話を聞きながら、俺の頭の中はことりちゃんを見つけて思いついたことでいっぱいだ。


式が終わり、新入生がゾロゾロと退出する。

真ん中の通路を歩き始めてすぐ、ことりちゃんと目が合った。

あの日、2人で話をして以来、初めて会う。

ことりちゃんは一瞬困ったような顔をしたけれど、こっちを見て小さく手を振った。


一歩、二歩、距離が近づく。

手を伸ばせば届く距離に来た時、ちょっと腰をかがめて、ことりちゃんの耳元に顔を寄せて、ハッキリと言った。

「ことりちゃん、好きだよ。」


ことりちゃんは今まで見たことがないぐらいに目を見開いて、俺の顔をジッと見てひとこと

「……は?」

と、つぶやいた。

新入生も在校生も、声が届く範囲にいた数人が、一斉に俺を見て驚いた顔をしていた。


体育館を出た瞬間、ワッと人に囲まれる。

同じ小学校出身者も、知らない顏も、男子も女子もごっちゃ。

「何? あれ彼女??」

「何でいきなり告白してんの?」

「星野ってそーゆーキャラだっけ?」

「前から好きだったとかそーゆーやつ!?」

矢継ぎ早に質問される。

なるべく笑顔で。穏やかな顔で。

そこを意識しながら。


「あれ、いとこのことりちゃん。俺ずっと、ことりちゃんに片想いしてんだ。」


たくさんの人の前で言いきってやった。

なぜか妙にスッキリした気持ちになった。


1年B組の教室にたどり着き、着席する。

ザワザワした教室内で、明らかに注目を浴びているのがわかる。

俺がことりちゃんに好きだと言ったことも、ことりちゃんが従姉妹な事も、すっかり広まっているようだ。

ひそひそと俺を見て話す奴がたくさんいる。


「えー、でもさぁー、いくら好きでも従姉妹でしょ? ありえなくなーい?」

そう言う女子の声が聞こえた。

だよな。

そう言われるのは想定の範囲内だ。

と、思った瞬間。

発言した相手に対して、聡が大きめの声でニッコリと微笑みながら言った。

「でもさ、知ってる? いとこ同士って結婚できるんだぜ?」


教室がシン…と静まり返った直後、担任が入ってきて、ザワつきは途切れた。

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