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やめる・1
バレンタインの後、ことりちゃんに会う機会は全く無かった。
会えそうな機会があっても、避けてしまっていたというのが正解だけど。
あの日、目の前であんな姿を見せてしまって、ドン引きされるかな? 友達やめられるかな?
と心配だった聡は、何も言ってこないし、翌日からもずっと普通に接してくれた。
毎日一緒に登校しているけど、あの日のことには触れない。
俺が心の中で1番重く抱えていた、耐えきれずに告白してしまった気持ちに、触れずに接してくれる。
そういう所が嬉しかった。
6年生は卒業式を目の前にして、歌やら何やら、めんどくさい卒業イベントの準備をしながら過ごしていた。
卒業式まで一週間。
午前授業の日、帰り道に聡が突然言った。
「今日、卒業式だよ。」
「はぁ? 卒業式は来週だろ?」
そう答えると、ちょっと言いにくそうに
「あ、いや、中学のやつ。」
と答えた。
あぁ、そうか。聡の兄ちゃんも卒業だもんな。
例のナントカ先輩も卒業か。
そう考えていると、聡が突然言った。
「見に行かね? 中学。」
「行こうぜ!」
そう言って、聡が俺の手を掴んで走り出した。
ランドセルを背負ったまま。