第四話<ブック編集>の基本とは何ぞや
とある街のとある住宅街。その片隅にある一軒の屋敷。
その屋敷を間借りするパッション郷の部屋は、珍妙というべきものであった。
それは様々な物品が所狭しと置かれている点にある。それが妖力を孕んでいるのを、犬飼美咲と一緒にこの部屋に来た城美咲には見て取れた。そして、それらが独特の繋がりをもって置かれているのも、その妖力の流れからうかがい知れた。
だが、それが分からない美咲には混沌とした物品と配置で、何かあるんだろうけど何があるんだろう、という風にしか見えなかった。おいそれと触ろうとする直前に、部屋の主の声が飛ぶ。
「座る場所は、そこと、そこでお願いしますね」
場所を指定するパッション郷。そして美咲と茂美が座ると、自身は美咲の隣に座り込む。
「シシデバルさんは?」
「はひっ。あちきがパッション様の前で座るなどおこがましいですよー。正直言うと貴様らが座るのもおこがましいと思ってますよー」
語気は緩やかながら、目をかっと見開き言うその姿には怒りのような、あるいは嫉妬のようなものが見え隠れしている。その辺を理解しているのか、パッション郷はシシデバルをたしなめる。
「言葉が過ぎますよ、シシデバル。彼女たちはわたしの客人なのですから、言葉遣いには注意しなさい」
「へへー、失礼しました」
やはり語気は緩やかで、しかし表情は凍り付いている。それがおかしくて、美咲はくすっと笑ってしまう。すぐにしまった、と思った美咲は、謝罪する。
「あ、ごめん。つい……」
「謝らなくてもいいですよ、美咲さん。この子は昔からこういうギャップのある子ですから。自身も、そういう反応に慣れていますからね」
「そうですよー。パッション様の客人でなかったら頭からぼりぼり食べてるくらいですよー」
はひはひ、と語気は穏やかに大きく笑うシシデバルに、美咲は若干の苦手意識が芽生えていた。ちょっと怖い。
「まあ、シシデバルは放っておいて結構ですよ。元気な子だから立ちんぼうでも大丈夫ですし」
「はあ」
パッション郷は美咲の訝し気な感じを無視して、話を進める。
「それで、『カルドセプト リボルト』の、<ブック編集>について話そう、ということでしたね」
「そうだね」
「わざわざこの部屋に来た意味はあるのか?」
茂美の問いに、パッション郷は朗らかに言う。
「それは後のお楽しみということで、どうです?」
「……」
なんとも胡散臭いが、今はこれ以上追及しても無駄だろう、と茂美は判断する。美咲が変なことに巻き込まれるを未然に防ぎたい茂美としては、そもそもこの話すらなしにしたいのだが、美咲は聞きたくてうずうずしており、止めようがないとも判断する。
「さて、<ブック編集>の話をしていきましょう。先に言っておきますと、全カードゲーの面白さの半分はカードの選定にあるといって過言ではありません。それは『カルドセプト リボルト』でも同じ。ここを疎かにしてはなりませんよ」
そういうと、パッション郷は美咲に3DSの起動を促す。促されるまま起動し、メニュー画面の右上、<ブック>を選ぶ。そこにあるのは、一つのブック。美咲の言が正しければまだいじっていない、素のままのそれである。
「最初に選んだのは水風ですか」
「うん。適当に選んだんだ。都ちゃんによると、水で守って風で攻める、だったかな?」
「初期のカードならそれが一番でしょうね。さて、それではこれをいじっていく訳ですが、美咲さん、覚悟はいいですか?」
「……覚悟?」
「ええ。<ブック編集>に、どのカードを入れ、どのカードを据え、どのカードを選ぶか迷い続ける。そういう覚悟です」
「確かに、その覚悟が必要だな」
パッション郷と茂美に言われ、美咲は身震いをしたような錯覚に陥る。見てはいけない深淵をのぞこうとしているみたいだ、とも。
「まあ、冗談はさておき。<ブック編集>をやっていきましょう。まず最初に考えるのは、<ブックのコンセプト>です」
「<ブックのコンセプト>。いきなり難しそうだね」
美咲が正直に言う。対して、パッション郷は優しく答える。
「確かにいきなり<ブックのコンセプト>、と言われるとそう感じるでしょう。中・上級者なら一つのカードをどう活かすか考えるタイプの<ブックのコンセプト>を考えたりもします。しかし、美咲さんは初心者。いきなりそれは難しい。ですが、そう難しく考えなくてもいいのですよ」
「というと?」
「まず、攻める<ブック>なのか、守る<ブック>なのか、という観点で作るのです。これなら単純で分かり易いでしょう?」
「ああ、成程。それも<ブックのコンセプト>なんだ」
そういうことです。とパッション郷は言うと、まずは、と続ける。
「攻めるか守るか。これはクリーチャーの<属性>で、大まかな分け方ができます。基本的に<火属性>と<風属性>が攻めるに向いていて、<水属性>と<土属性>が守るに向いています。例外は当然ありますが、大体この分け方でいいでしょう」
「その辺の<属性>における明確な違いというのは、何かあるの?」
「いい質問ですね。では、一つずつ見て行きましょう。まず<火属性>。これは攻撃的なクリーチャーが多い<属性>ですね。特に、<強打>持ちによる大打撃が魅力です」
「<強打>、というと、さっき茂美ちゃんが言ってたやつだ」
「そうだね。<強打>はダメージを1.5倍するスキルだ。条件はあるが、それでも強いスキルだな」
茂美の言葉をパッション郷が続ける。
「<火属性>の<強打>持ちクリーチャーで強さが分かり易いのは<グラディエイター>ですね。基本STは40ですが、無属性以外に<強打>をするので、大体の敵クリーチャーに60ダメージを叩き出せます。これは実は相当の威力で、防具アイテムなしで耐えられるクリーチャーはそう多くありません」
「それに、<強打>は武器アイテムでの増加分も1.5倍する。つまり、なんてことのない武器でも思わぬ威力になるんだ」
茂美の言葉を、またパッション郷が受け継ぐ。
「なので、<火属性>の<強打>持ちを使うのが前提なら、武器アイテムは多めに入れておく、という作り方が有効になります。特殊能力があって威力が低くても、<強打>が絡めば十分な威力は出ますから、安心して組み込めます」
さて、と区切ると、パッション郷は続ける。
「<水属性>。これは防衛に向いたクリーチャーが多い<属性>です。基本的に攻撃力であるSTが低めで、代わりに耐久力であるHPが多い傾向にあります。そして、それ以上に際立つのが<無効化>スキルですね」
「<無効化>?」
「ええ。言葉の通りです。相手の攻撃を、<無効化>する、という、上手くはまれば強力なスキルです。これが<水属性>に多いのです」
「ちょっと、強すぎないかな、それ」
美咲の懸念に、パッション郷は答える。
「それが発動するのは、色々と条件がありますし、巻物攻撃や無効無効化の<ムラマサ>などが通じる場合もありますから、無茶苦茶強い訳ではありません。しかし、先に言ったように、はまれば相当強いので、<水属性>を使うならこれをどう考えるかが重要ですね」
「条件に合わない敵クリーチャー場合の対処策を入れておく、というのが<水属性>で守る場合は重要、という感じか」
ですね。とパッション郷。次へと進む。
「<土属性>も守りに適したクリーチャーが多い<属性>です。<水属性>の特徴が<無効化>なら、<土属性>の特徴は<援護>があります。これはクリーチャーをアイテムと同じように使う事が出来る、というスキルです」
「これも一見強そうだね」
「実際の所でも、使い勝手は大変いいです。クリーチャーには様々な召喚条件があるものもいますが、<援護>で使うと魔力分だけでいいので、召喚条件があって魔力が低く、且つ性能が高いクリーチャーをあえて混ぜて使う方法もあるくらいです。そうでなくても、例えば<ストーンウォール>ならHPが60も増える、という普通の防具アイテムでは中々出せない数値が出せるのも魅力です」
ただ、とパッション郷は斜線を引く。
「<援護>に使ったクリーチャーはアイテムと同じで捨て札になるので、使いすぎるのは問題があります。なので<援護>の為にあえてクリーチャーを多めに組み込む、というのも有効でしょう」
「次は<風属性>だな」
パッション郷はええ。と言い続ける。
「<風属性>は攻撃寄りの<属性>ですが、<先制>があるのである程度防衛もこなせるという、器用貧乏なところのある<属性>です。<先制>があるからなのか、基本的に<火属性>よりHPが少なめです」
「<先制>はさっき聞いたから分かるよ。<風属性>が多いんだね」
そうです、とパッション郷。
「<風属性>の専売特許なところはありますね。そして<先制>があるので、先に行動して殴り倒す、という防衛の仕方になりやすいです。だから防具アイテムより武器アイテムの方を積む方が効率的な場合がありますね。また、空き領地へ飛べるスキル持ちもいるので、展開力が高いのもポイントでしょう」
それで、とパッション郷。
「美咲さんは、攻めるのがいいのか、守るのがいいのか。どちらです?」
「うーん」
悩む美咲に、パッション郷はそっとささやく。
「もっと単純に言えば、領地を奪うのが好きなのか、領地を守るのが好きなのか、ですね」
「それなら、領地を守る方かな」
「なら、メインは水か土ですね。どっちがいいですか?」
「うーん、<援護>が面白そうと思ったから、土かなあ」
「では、<土属性>メインで組みましょう。<土属性>と相性がいいのは、美咲さんの進んでいる辺りならば<マグマハンマー>や<マグマシールド>が使いまわせて、後は一部の<援護>の条件にもある<火属性>ですね。<土属性>は火力が低めなので、援護に火力の高い火属性を絡めると、ある程度侵略も可能になります」
とはいえ、とパッション郷。
「今回は防衛が主体、です。それを考えると、HPが安定して高い部類で、魔力があまりかからないクリーチャーを選んでいく方がいいでしょう。まずは……、今の持ちカードからすると、<ファイター>は入れておきたいところですね」
「いきなりだけど<無属性>だよ?」
ええ、と言い、パッション郷は優しい顔で答える。
「言ったでしょう? 魔力があまりかからない、というのを。確かに<ファイター>は無属性ですが、コスト30で出せるわりにはHP/STが40/40とそこそこいい数値。これはHPとSTが同時に上がる武器アイテム<カタパルト>を10ずつ上回ります。また、同じ数値の<火属性>クリーチャー<ミノタウロス>はコストが60。倍ですね? そう考えると、この数値が30で出せるのは破格ですよ」
当然ですが、とパッション郷は続ける。
「<ミノタウロス>も入れておきたいところです。見た所<ファイター>の数が足りていないようですし」
「そうだね。<ファイター>は最初の2枚しかないけど、<ミノタウロス>は4枚あるし」
「他に、若干必要魔力が高く、特殊能力はないですが、HPとSTのバランスがいいオーガ類も入れておきたいですね。<レッドオーガ>と<グリーンオーガ>はどちらも2枚程度入れておきたいところです」
それから、とパッション郷は続ける。
「基本HPが高い<土属性>の<ストーンウォール>、<ドラゴンゾンビ>も防衛主体なら入れておきたいところです。普通に防衛にも使えますし、<援護>によるHPアップの手段としても使えるので、重要です。防衛手段として、<火属性>の土地も押さえたい時用に<ガスクラウド>もいいですね。貫通関係がないと、かなり防衛力の高い<クリーチャー>ですし」
「そもそもの援護使いはどうするんだ?」
茂美の問いに、パッション郷はどこか冷淡な雰囲気で答える。
「<ウッドフォーク>、<スクワリン>、それに<ドリアード>も入れられるだけ入れましょう」
それから、とパッション郷は言う。
「<ブラッドソード>が2枚あるようですから、ここぞで強力な<グレートタスカー>を混ぜておく必要もあるでしょう。<先制>の<無効化>は<先制>に対するアドバンテージとしては大きいです。<土属性>土地一つ持っておく必要がありますが、とりあえず、2枚ほど入れるとして……」
「えと」
美咲が、ちょっと臆病さを見せながら、問いかける。
「<クリーチャー>が、多いような気がするんだけど。大丈夫なの?」
「もちろん、大丈夫です。先ほど言いましたように、<援護>は<クリーチャー>を消費するわけですから、多めに混ぜるのが大正義です」
「とはいえ、ちょっと多いような気がするぞ?」
そういう茂美に対し、やはり若干冷たい風に、パッション郷は答える。
「そうですね。通常の<ブック>なら<クリーチャー>は25枚程度で残りのアイテムとスペルが合わせて25枚程度がバランスがいいですが、<援護>主体のブックなら30~35枚くらい混ぜても回せますよ。アイテムをその分絞る、と考えて問題ないかと」
「となると、アイテム構成は?」
「攻めの切り札として<ブラッドソード>、防具じゃなくアイテム扱いだから、の<アーメット>、普通に使いやすい<マグマシールド>、程度でいいでしょう。これを6、7枚程度の間で調整ですね」
「<無効化>がきついなあ」
「基本的に攻めない<ブック>なので、そこまで気にしなくてもいいですよ」
やはり茂美には冷たい雰囲気で言うパッション郷。少し、場の空気が重くなったように、美咲は感じた。
それをまぜっかえす。
「スペルはどういうのを入れるの?」
パッション郷の表情が明るくなり、空気が少し和らぐ。ホッとする美咲に、パッション郷は言う。
「基本的に防衛ですから、HPを増やす<グロースボディ>、弱体を消す用にもなる<バイタリティ>、領地の獲得魔力を増やす為の<グリード>、後は手札増加の汎用性が高い<ホープ>や相手の厄介なカードを減らす<シャッター>、<スクイーズ>、<ポイズンマインド>辺りが扱いやすくて分かり易いでしょう」
「まあ、美咲のやってるシナリオの辺りだと、まだ手に入らないカードもあるし、妥当な線だろうな」
「また増えたら、考えることが増えて作り方も違ってくるのが<ブック編集>の面白さですしね」
で、と美咲が言う。
「一応出来上がった訳だけど、これは強いのかな?」
「ベーシック、という感じですが、はまれば中々いける、と思いますけれど、こればっかりは使ってみないとわからないのが実際の所でしょう。とりあえず、CPUを殴ってみて、感触をつかむのがいいと思います」
さておき。とパッション郷が話を区切る。
「とりあえず、基本的な<ブック編集>の流れはつかめましたか、美咲さん」
「うーんと、まず<コンセプト>を、攻めるかとか守るかとか考えて、それにあった<属性>の<クリーチャー>を選んで、それぞれの強みが出るアイテムとかスペルとかを付ける、というのでいいのかな?」
「そうですね。今回は<援護>重視のブックを考えたので、<クリーチャー>の数が多くなりましたが、基本的には先にも言いましたように、<クリーチャー>は25程度。その残りをアイテムとスペルで使う、というのが一般的でしょうか」
「作ってみると、なんとなく感覚がつかめた気がする」
そうでしょう。と美咲に言うパッション郷。
「これで作ったので対戦、からの調整にはまってくると、このゲームのドツボが待っていますよ」
そういって、パッション郷は話を締めくくった。
ところで、とパッション郷が話を変える。
「美咲さん。最初に言っていたこの部屋に呼んだ理由。それはサティスファクションに聞かせたくないからなのですよ。そしてそれは、あなたに折り入って頼みたいことなのです。いいでしょうか?」
美咲はうーん、と首を斜めに傾いで考える格好。そこから、頭をもとの位置に戻す。
「うん。いいよ。色々教えてもらったしね」
「良かった。なら、わたしと一緒に物件を見て回って欲しいんですが」
「家探し?」
パッション郷は頷く。
「そうです。こう言ってはなんですが、美咲さんは色々と見る目があるお人だと思うんですよ。それに聞いたところ、ご実家が不動産屋さんだとか。だから、家の良し悪しもわかるだろう、と考えた訳です」
「うん、それなら頼みにされても応えられるれると思うよ」
「では、決まりですね」
というパッション郷に、異議を唱えるものがあった。茂美である。茂美は言葉を口にしながら立ち上がる。
「いや、ちょっとま」
と同時に、シシデバルが扉を開けた。そこから、サティスファクション都が倒れこみながら部屋に入ってくる。
「どわっ」
その直線上にいた茂美が慌てて倒れるサティスファクション都を支えた。思いの外軽いその体を支えながら、茂美は言う。
「何やっているんだ都くん!」
「んなもん、盗み聞きに決まってるでしょ」
「なんでそこで悪びれないんだよ」
「盗み聞きされているのに無視するやつがいるからよ。そこのパッション郷みたいなのがね」
サティスファクション都は睨む。だが、パッション郷はどこ吹く風だ。
「入ってくるのかいまいち判然としませんでしたから、いないものとして話をしていただけですよ。混ざりたかったら言えばいいのに」
睨みが強くなるが、やはりどこ吹く風。
「もう、それはいいのよ。それよりも物件探し? それは単なる家探しじゃないでしょ、パッション」
「あれ、どこでそれを? ニシワタリですか?」
「それについてはノーコメントだけど、それよりその物件、所謂事故物件でしょ。それも、霊的なやつや妖的なやつの」
「ええ。それを今から説明しようかと思っていたところですよ」
「しらばっくれてんじゃないわよ。聞かれなければ言わないで連れて行こうって腹だったんじゃないの?」
「邪推ですよ」
視線と視線が交錯する。いつか見たような光景だが、今回は美咲がそれを止める。
「都ちゃん、あたしも事故物件くらい、いくらも見てきてるから大丈夫だよ?」
「いや、美咲。あなたが見た程度では比較にならないやつかもしれない訳で」
「大丈夫大丈夫。それに、郷さんがいるんだから、余計に大丈夫だよ」
全然恐れを見せない美咲に対し、サティスファクション都は表情を苦めに崩す。そして、言う。
「……なら、私も行くわ」
間髪入れず、茂美も言う。
「都くんが行くというなら、僕も行こう」
「何言ってるのよ城。あなたは別にいいでしょ?」
「それを言うなら都くんの方が辞退すればいいだろ」
ぎゃあぎゃあ、と言いあう二人に、パッション郷はにこやかに様子見をしている。シシデバルはただ黙して立っている。
その狂騒を止めたのは、美咲の言葉であった。
「じゃあ、一人ずつ一緒に行けばいいんじゃない?」
「え」
「え」
「あたし、パッション郷さん、それともう一人。一人ずつ入れ替わりで付いてくればいいんだよ。それなら問題ないでしょ?」
「え」
「え」
パッション郷があははは、と笑う。
「成程、それならお互いの力量は分かっているんだから、美咲さんの守りもより安全だと分かりますね。なら、そうしましょうか、美咲さん」
「うん、そうしよう」
「え」
「え」
そういうことになった。
付いていく順番を決めた後、三々五々でパッション郷の部屋を辞す面々。残ったのは、空きスペースに座るパッション郷と、シシデバルだけである。
「おひい様。思った以上に上手くいきましたね」
「若干予想外な展開ですけれどね。とはいえ、サティスファクションがこの件に絡んでくれるなら、法外ですよ」
「しかし、見られていたようですね」
「ですね。そこは予想通りですけれど。……だから、これ以上は何もありませんよ、ニシワタリ」
扉でゴンと音がする。そして歩き去る音が聞こえた。それを聞いてから、パッション郷は言う。
「さて、状況は第一段階といったところ。予断を許しませんが、まあやっていきましょう」
パッション郷は柔らかく口角を上げた。
ということでブック編集の話でした。
内容の方で書いてますが、実際問題カードの選定はカードゲーのもう一つの華ですらあるので、ここをやり始めて調整してもう一度作って、としていると時間がマッハで消え失せますです。この快楽を知ると本当にやめられなくなりますが、本当に楽しいので問題ないのです。みんなももっとこの沼にはまるといいのに。