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70. 心愛恋慕(時価)

 みなさん、きこえますか?

 げんざいの状きょうを伝えます。

 わたしは今、ありすのねがいで、上空でじょうほうをあつめています。


 ますたぁ、音信不つう。

 あなざーでぃめんじょん内のえいぞうすらひろえず。


 ありす、入口で『ぐろーりす』と交せん、苦せんしているようす。

 手があいたもの、すけ太刀をおねがいしますです。


 ろずとてぃな、じょう内で『ぎるべる』と交せん中。ほぼしょう利か。

 てぃなはむ力化できしだい他へ、ろずはふらんかりたと合流おねがいです。


 ふらん、かいだんにて『あるすらいん』をさつがい。なおも交せん中。

 りた、『かいん』と交せん中。体ちょうわるし?


 あとらたの実力者、まだすう人のこっているもよう。


 ……それともうひとり。

 まさか、ここにこられる人がいるなんて、完全にしこうの外でした。

 もしかして、もっと上にいたのです?


「あぁーらら、まぁ。かわいいお嬢ちゃんねぇ。

 けどおイタはダメよぉ? 情報抜くのはアタシの仕事」

「……とべる人なんてめずらしいです」


 生り的に気もちわるい人がきました。

 口べにぬりすぎです。

 男なのにふりふりです。くちょうがぶりっこです。声ひくいです。

 もじゃもじゃです。でぶです。すけすけぴんくです。


「……スキルスティーラー? 禁忌の子じゃないアナタ。いやだわぁ。

 近寄らないでちょうだい! しっしっ! いやらしい!」

「……はーふふぇありーなのに共かんつう信しなんてありえないです。

 そもそも……そんな外見ありえないです。きもい」


 『さわふぼ』はーふふぇありー 共かんつう信し 男 たいきゅう4

 所じまじっくあいてむ1。たいせいなし。


 ふぇありーの血を引いてるのにますたぁの4ばいがんじょうみたいです。

 ゆがみもないです。


「まっ! 似たような恰好の子に言われたくないわぁ! 失礼しちゃう!

 私のパパはねぇ……努力して共感通信士になったのよ。

 アナタの方がありえないわ。どうして生まれて(・・・・・・・・)しまったのかしら?」

「……そこまで言われるすじ合いはないです」


 こういう手合いはしゃべるのが早くて口げんかがうまいです。

 かてないです。


 それに、わたしにはぶきもありません。

 いんふぉでぃすたーばんすも多分きかないです。


 上空は安全だと思ってたんですけど……。

 なんとかたすけを求めないといけないです。


 そうこうしているうちに、さわふぼは下ぎのこしに引っかけてあった小さなステッキを手に持ちました。

 こぶしでえのぶ分がほとんどかくれて、先たんのかざりしか見えないです。


 技能(すきる)が来るにしてもじょうほう系のはずです。

 れじすとじゅんびをします。


「煌々たる光を吸って輝いてぇ! 心愛恋慕(ハートアンドソウル)!」


 まるで太ようをのうしゅくしたかのような光がつえからふりそそぎます。

 見るとあやつられるやつですか? そうはいきません。

 目をつむっても、まぶたをとおして明るく見えるほどの光がまいました。


 片手をかかげて、すこしでも目に光が入らないようにたえます。


 ……。


 あれ……。これは、もしかして。

 すきを作る、じかんかせぎ。


 う……、っうごかなきゃ。


「でらああぁああぁぁぁあああ!!!」

「いぎっ……ッ」


 多分、けりです。

 左かたからけんこうこつ、さこつにかけて、甲高い音がなりました。

 体をちょっとでもうごかしていなければかおに当たってました。

 

 打げきのしんどうが、体をとおして首を支点にあたまへ伝わります。

 お、おちるっ。


 白黒に明めつするしかい。らっ下のききかんだけでどうにかいしきをたもち、羽ばたこうとしますが、左の羽がかぜをうけてくれないです。

 見やると、半分近くやぶれています。


 そんな、これじゃもうとべない。

 ……なんとか右の羽をうごかして、らっ下そくどをおさえるです。


 ちょっとでもやわらかいところへ、ちょっとでもたかいところへ。

 おく上。ふとん干しっぱなしにしておけばよかったです……。


 何か、何かないですか。

 あたりを見回しても、とくにやわらかそうなものはありません。

 木々くらいです。


 ふと、きらりと光るものが目に入ったです。

 天まど。あの下は、たしかべっど。


 へろへろふらふらと、おそくもなくはやくもないそくどでそこへ向かう。

 わたしは少しだけでもげんそくしているから、先におとしたがまぐちは先におちるはずです。

 むかーしますたぁにおしえてもらったです。


 首からそれをとって、なげおとします。もうま下なのではずしません。

 ……がしゃっという音を立ててひびが入りました。

 あとはそこにおちるだけ。


「……ままよ、です」


 がらすのくだけちる音をきき、全しんが白いふわふわにうけ止められるかんかくにつつまれる。

 安どかんからわたしはいしきを手ばなすじゅんびをはじめました。

 じょうほう伝たつというせきむがあるのに、だらしないです。

 ……せめてさいごにこれだけ。


『上空にてきあり。しるきーりだつ』




---




 その知らせは、全員を震撼させた。


 強敵の出現に、シルキーを守れないと悟ったアリスは、シルキーを上空へ逃がした。

 その結果、新手に手痛くやられてしまったのだ。


『完全に判断ミスです……』


 ギリッと歯噛みし、目の前のアトラタ現国王、グローリスを睨めつけた。

 完全に劣勢だが、これは長期戦になるとアリスは思った。

 ならば、と声をかけてみる。


「一旦出直す気はありませんか? そちらの戦力は大部分削がれたようです」

「ほほう、面白い事を言うな。

 仮にそうだとしても、俺が戦いを止める理由にはならない」


 槍を構えて、真っ直ぐに走り込んでくる。

 せめて、オーバードライブできる程度には魔力を回復しないと。



 困りましたね、と顔を顰めた。




*





 寝起きのティナは、早くギルベルの全身を消せばよかったと後悔した。


 生かしておく価値はあったのだろうか。

 いや、ない。いつも通り消すべきだ、と。


 穢れがあるという事は、世界から忌み嫌われているという事だ。

 それを調整し、是正すれば、狙った部分を消せる。


 彼女は、


『気が変わった』


 と言いながら左手を向けると、ギルベルは姿を消した。

 この世のどこからも。

 ただ、いなくなった。


 歪みも穢れも残さず綺麗さっぱりと。


 その振る舞いは傍若無人だ。

 人の命の重みなど知るものかと言った風だ。

 自分を含め、ただ歪んでいるだけならまだしも、穢れた者に慈悲などない。


 暗いが澄んだその視線は、走りゆくロズへと移る。

 シルキーの元へ行ったのだろう。


 現状交戦しているのはアリスとリタ、フラン。

 それに、上空には何やら危険なヤツが居るらしい。


「やれやれ、どこへ手助けに行ったもんかね」




*




 ロズは、駆け出した。


 ドスン、と何かが落ちる音を聞いたのだ。

 恐らく三階。マスターの寝室から。


 失礼! と言いながら扉を開けると、目に飛び込んできたのは散乱したガラス片と血痕。


 全身のあちこちを切り、打ち付け、それは酷い有様になっていた。


 袖と首元に細剣を差しこんで、布地を切る。

 患部は青黒く変色していた。


 ロズは骨折と内出血の応急治療方法に頭を巡らす。

 すぐに綺麗なシーツを引っ掴んで、フランの部屋へと駆ける。


 氷の精霊が、桶で水を凍らせている。


「すまないが要り様だ! 一つ氷をくれ!」


 そう言うと、精霊達は同じ隷属者の繋がりを感じ取ったのか、木桶を一つロズに渡した。

 桶をひっくり返し、氷を出す。それを細剣で乱切りする。

 こんな使い方するもんじゃないけど、仕方ない。


 そう思いながら作業を進め、シーツに包んで再び走り出す。

 精霊たちに礼は忘れずに。

 精霊も、一つの命を持った存在だという事を、知っているから。


 滑る廊下を駆けながら、再びシルキーが横たわる部屋へと戻った。


 治療をしようと決意したロズの行動は迅速だった。

 とりあえず、シルキーの付近に散らばるガラス片を取り除く。


 切り傷が目に入ったが一旦後回しにした。


 なるべく動かさないようにしながら、肩から胸にかけてをシーツで圧迫しながら固定していく。

 シルキーが小さくうめき声をあげる。

 ごめん、治癒魔法なんて使えないんだ。と声をかけながら作業を続ける。


 固定した上からタオルをかけて、その上から新品のシーツで作った氷嚢を乗せる。


 とりあえずはこれで、動かさなければ大丈夫でしょう。

 あとは、切り傷を治療しなければ……。

 出血は止まっているようですが。


 そう思いながらロズはまた消毒液を探して走り始めた。

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