表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/138

49. ゴールドゲート(金貨6万枚ちょっと)

「ほぼ同時でしたので、より多くの金貨を積んだ方に売りたいと思います」

「そうか、じゃあ俺は15万枚出そう」


 この少年、金ならいくらでもあるとでも言わんばかりの態度だ。

 悔しいがもう貯蓄はない。ならば。


「いや待て、ここはカジノだ。お互いチップを112万5千ずつ出して、勝った方がトリアナをいただくというのはどうだ」

「店に23万金貨入るという事か? なら俺は25万出してもいいんだが」


 底なしか。化け物め。

 と、思っていたらメイド服姿の奴隷が少年に進言した。


「流石に25万は痛いです。素直に受けては如何でしょうか?」


 彼女は、受けたとしても負けはしないでしょうけど、と付け足した。

 俺はその言葉に、燃え上がった。

 持てる技術全てを費やして、絶対に勝ってやると。そう誓った。

 賭け事師の能力を持ってさえすれば、絶対に負けるわけがない。


「……これは勝てない流れっすね。見届けはするっすけど」

「バカ言え、俺が負けるとでも思ってるのか」

「さっきアンタが負かしたディーラーと同じ顔(・・・)してるっすよ。

 絶対に負けるわけがないって顔っすね。油断だらけの」


 はっ。


 ……いや、そんなはずはない。

 俺の主観で見る者のみがそれに当てはまっていただけだ。

 俺が負けるわけがない。


「ルーレットがいいんだろ?」


 声をかけられる。

 相手の土俵で勝ってやるとの自信の表れだろうか。


「何が言いたい」

「お前ルーレットが得意なんだろ、俺は台を選ぶのが得意だ。

 だから俺が座る場所は決めさせて欲しい」


 賭け事師に台の制約などない。

 だから、少なくとも賭け事師ではない。

 それなら、負ける道理はない。


「俺はここにする」

「じゃあ俺はここだ」


 受けて立とう。


「どうベットしてもいい。当てた方が勝ちだ」

「わかった」


 ディーラーが目配せをしてくる。

 俺と少年は、無言で頷いた。

 特にタイミングを計る事もなく、ディーラーは自然にボールを弾き入れた。


 ちりーん。


「赤だ」

黒の17(・・・)


 ……。


 はぁ?

 何を言ってんだコイツは。

 黒の17に入ると思ったなら、単に黒に賭けるか前半に賭けるか奇数に賭けるか、広く構えればいいだろ。


 金を持っているだけの、自信家な子供だコイツは。

 これだけ広く構えてれば、どこからでも赤に入れる事は可能だ。

 揺らしの精度も多分俺の方が高い。

 何もしなくても18/38の可能性で勝てる。決まっていた勝負だったな。


 しかしその時、世界一の用心棒は。


「はぁ。日付、変わってるっす。契約更新はなしで」


 ため息を吐きながらそう言った。

 なんだよ、勝負の熱が逃げるだろ、てか日を跨いでからもう大分経つだろ。

 今言うなよ。


 ボールの速度が遅くなる。跳ねるように動く。そろそろか。


『先見の明』


 5秒先を見た。

 黒の17に入るところが見えた。

 ふざけんなよ。そんな、運命に定められたかのように物事が進むもんか。


『揺らし』


 揺らしを使っても、確定した未来が変わったように見えない。

 もっと強く! ……いや、動いたように見えない。

 頼む、動いてくれ! 何故発動しない!?

 まずい、入ってしまう。


 と思った時にはもう遅かった。

 カランカランと鐘の音が鳴り響く。

 先ほど祝われた俺へのセレブレーションが、今度は少年に向けてされる。


「少年の勝ちです。チップはお互い全て没収させていただきます。

 その上で、トリアナ=レグリスはそちらの……」

「マ……チェシャ=クロックだ」

「チェシャ様のものとなります」


 何故。

 何故黒の17に入るとわかっていた。

 何故揺らしができなかったんだ。


「……何故なんだ」

「おめーバカだろ」


 バカだと。俺がバカだったのか?

 何か、根本的な勘違いをしているのだろうか。


「教えてくれ。何故俺は負けたんだ」

「金がねーからだ」


 ……何?


「おめーさ、自分が金持ちだったら、勝負を挑まれたらどう動く?」


 ……っ。

 そうか。

 ……もし金があれば。

 ディーラーを買収するだろう。


「ディーラーを」

そんなんだから(・・・・・・・)負けんだよ」


 この時は全く意味がわからなかった。必死で頭を悩ませた。

 答えは出なかった。

 何故。何故なんだ。

 何故負けたんだ。

 ありえない。ずっと使えた揺らしが使えなかった。

 自信を、失った。


 自暴自棄になった俺は、全てを投げ出して答えを聞いた。

 この先の人生よりも、その理由の方が大事だと思った。

 死んでもいいと思った。


「俺はどうなってもいい、何故負けたのか、それが知りたい」


 少年は心底つまらなさそうに、一枚の書類を見せてきた。

 それは譲渡証のようにも、領収証のようにも見えた。

 ぐらぐら揺らぐ視界の真ん中に映ったのは。




【ゴールドゲート所有者名義 マスター=サージェント】




「こういう勝負は、店ごと買うに決まってんだろ」


 そう、戦う前から勝負は決まっていたんだ。

 しかも、店の所有権があるんだから、戦う意味すらなかった。


 じゃあ何故勝負したのか。

 ……俺の心を折るためだ。


「気づいたか? 賭け事師なんて歪んだ職業、滅多に見れるもんじゃねえ」


 少年、いやマスターは、トリアナも俺も、大きな収入源になるカジノすら。

 いとも簡単に手に入れて行った。


「お前は、最悪だ」

よく言われる(・・・・・・)


 膝をついた俺にマスターは無慈悲な詠唱をした。

 そして、俺の人生は、実質幕を閉じた。


契約者(コントラクター)の名の元に、汝の未来を買い受けん!『絶対服従(アブソリュートオビーディエンス)!』」




---




 こうして俺は安定した収入源を手に入れつつ、トリアナという重要戦力と、なんかよくわからん歪んだ職業のダージを手に入れたんだわ。


 なんで揺らしが通じなかったか語られてないって?

 ヒラでできる台だったからだよ。基本的に揺らしに似た技術はディーラー全員が持ってるし。台を見ず人しか見てなかったダージが悪りぃ。


 じゃ、ダージ君はブロマイドに戻りましょうねー。

 そう、……どんな能力を持ってても、金の前にはひれ伏すしかねえんだ。


 こうやって、歪んだ職業の男はカードにしてコレクションしてんだ。


 なんで男にはそんなつめてーかって?

 そりゃ男はいらねーが好みの女ははべらせたいだろ?


 …………おめーらの事だよ。言わせんな恥ずかしい。

 そりゃ好みじゃなきゃカードにしてるわ。一生一緒に居てくれよ。

 おめーらだけでもな。


 そうそう、メサイア=メダエンジの話とかしようか?

 ……おめーに聞いてんだよロズ。

 どうやって龍をバラバラにしたかとかさ。知りたくねーか?


 それよりトリアナの話が聞きてえって? まぁいいけど。


 ん?

 そうそう。シラセとトリアナは一度ニアミスしてんだ。

 当時のトリアナの見た目は今のティナと一緒。

 ティナの話もしてえけど、出てくるのはまだちょっと先だな。


 シラセがティナに向かって『アンタがトリアナじゃないんすか?』

 って言ってたんだって? そいつはちょっとおもしれえな。

 今度会う事があれば説明してやんなきゃな。


 ……いやいや、シラセはあんくらいで死ぬタマじゃねえよ。

 近いうちひょっこり顔出して、次の仕事まだっすかとか言ってくるぞ。


 話の繋がりがよくわかんねえって?

 仕方ねえなぁ。まぁ飛ばすにしては惜しいエピソードがいくつかあるから、ちょっと戻ってルードでシルキーを助けた後の話をするか。


 アトラタ城を貰いに行きすがら話してやるよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ