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4. 地図(銀貨2枚銅貨10枚)

 しんしんと、積もらぬ程度の雪が降りしきる中、親父の家は全焼した。


 まー持っていくものもないし、親父の残した金も俺に所有権がないからか使えない。電撃ビリビリだ。

 母さんに会ったら、出ていく気が薄れてしまう気がしたし、奴隷を脱出する為にもとりあえず冒険者になりたかった。


 ま、結果的に冒険者になんぞならなくてもよくなるんだが。

 どういう事かは話聞いてりゃそのうちわかる。


「ジョニーんち、焼けたってよ」

「本人も死んだらしい」

「まぁ天罰だらーな」

「息子はどーすんだか」


 そんな話が村中を巡った。村中っつっても100人いねえ小さな村だったから廻りきるまであっという間だったわ。

 俺が殺したとは思われなかった。12歳だしな。寝ている間にストーブの火が燃え移りでもしたんじゃないかと。


 ま、バレたところで『仕方ない』と思われるだろ。この村は都会のルールが通用しない治外法権だし。

 警察と言うものがねーし、村の総括たる村長もいない。名前だけがあるただの集落みてえなものだったからな。




 この世界では、別に職業が上書きされて無くなったりとかはしねえ。

 持って生まれた才能は一生変わらねえんだ。


 つまり俺は一生メルケミスト、つまり本質的には奴隷の範囲を出られん。

 ただ、上の階級の職業になれる程度の才能をも持っている者ならば、両方の階級を持てる。

 そーやって、好きな相手と同じ職業になれれば、本質の職種が違ってもちゃんとした職業の才能を持った子供を産む事ができるんだわ。

 俺の親父がクズである事がわかるな? そーゆー事だ。

 え?……バッカ、クズと最悪はちげーから。気をつけろそこんとこ。

 まぁそのクズの血を引いてる俺が『こうなった』っつーのも理解してくれ。

 金で親は買えねーんだ。


 あーそうそう、本来のメルケミストなんだけど、銅貨1枚からマッチの火をつけるのが限界みたいな話を聞いた事がある。

 俺だけが大きな力を振るえうるって言うのはなんかこう、こみあげてくるものがあるな。

 こんときゃ金、ねーんだけどさ。振るえねーんだけどさ。



 そんなこんなで村を飛び出した俺は、鉱山方面とは逆に、適当に歩いて行ったんだわ。

 道はある。でかい街がある、という事は知っている。

 ま、道があれば迷うことはないさ。って思ってた。




---




 迷ったわ。




 確かに歩いていたのは街道だったはずだよなぁ……。

 でもなんか今歩いてるとこは床石無くなってるし、空が樹で覆われてんじゃん。森じゃん。


 着の身着のまま出てきたから、寒い。服くらい親父の奴を貰ってくりゃよかったぜ……。

 でも殺して身ぐるみ剥いだみたいで嫌だし。困った……。


 なんとなく、上を向いたままぐるりと一回転してみた。


「……」


 すげぇ!完全にどっちから来たかわかんなくなったぜ!傑作だな!

 ……何が面白いんだよ。マジで。


 手持ちの品をチェックしたんだわ。何かできるはず……って思ってな。

 ポケットを漁ると、銀貨が32枚。以上。

 着の身着のままだっつってんだろ!いい加減にしろ!ホント!


 はぁはぁ……体力を無駄に消耗しても仕方がない。


 魔法で何かしようにも、3200円分しか魔力たるお金がないんだ。

 あぁ……こんな時、都合のいい地図でもあればいいのに……。



 ……。



「……地図作成者(マッパー)の名の元に、周辺視界を買い受けん……」


 そん時は自信がなかったんでボソっと言った。

 別に俺はマッパーでもなんでもない。詠唱があってるか自信がないんだ。


 ふと、ポケットがほんの少しだけ軽くなるような感覚がして、上空からの周辺地図が手元に現れた。

 ちょ、コストはどれくらいだったんだ!?銀貨を数える。2.4.6.8……29枚。銀貨3枚分か……。

 そんなもんならよかった。

 しかし銀貨2枚と銅貨10枚分とか半端な値段だったら銅貨のお釣りを持ちきれないところだったな。ははっ。とか言って笑ってたんだわ。




 俺の視界で言う、俺が持ってる地図の向こうに茶色く光る何かが山になっているのに気付いてしまった。

 気づいたけど、気づかないフリをした。


 え?それがなんだったかって?

 バカ、銅貨だよ。シルキー、ホントにお前は……ホントに……




---




 そこは(いざな)いの森っつって、入る時は簡単に入れるが出るのは難しい構造になっていたんだわ。なんじゃこりゃって思ったね。

 地図を見ると、北がアムニ村。その周りは山に囲まれており、降りる道すがらに森へ入るルートと街へ行くルートの二つに分かれる。


 森の構造をよく見ると、外周部に返しのような配置の樹木が生い茂り、外から見ると一見普通だが中から見ると、どこまでもまだまだ森が続いているように見えるんだわ。

 なんだよこのクソ構造、森の中だけ世界が隔離されてるみてえだった。中の世界なんてねえんだよ。ファンタジーやメルヘンじゃねんだから。

 お蔭で森の端まで来たところで外に気づけず、ずっと迷い続けるという構造。んだよ。

 地図がねえと出られるわけないじゃんこんなもん。

 ずっとイライラしてたね。


 南には草原が広がり、目標の街であるカントカンドまでが地図に入っている。これはありがてーな。


 方角がわからないとお思いか?残念だったな。この地図には現在位置と向いている方角まで表示されているのだ。

 この縮尺なら一日歩けば問題なく到着できそうだわな。と思っていたが、そろそろ暗くなってきたな。ヤベぇ。


 松明とかを買ってもいいが、森に棲む生き物を寄せ付けかねない。熊でも居たら完全にアウトだ。

 ホテルでもありゃなとも思ったが……金が足りるわけねーでしょ。


 一応森の中に一軒だけ建物がある事に気づいたので、そこへ向かう事にした。

 奴隷館って書いてあるのが気になったが、獣に喰われて死ぬよりは捕まった方がマシか。






 つって、俺はその奴隷館へ向かう事を決断するんだけどよ。その選択がその後の人生を大きく変える事になったんだわ。


 そう、ここで俺は運命の出会いをするんだ。

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