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38. シラセへの依頼料(金貨300枚)



「ったく。もう寝るだけだったんすよ?」

「わりぃわりぃ。でもシルキーとフィルと俺だけでルード最深は無理だろ?」


 マスターが居りゃどうにでもなると思うっすけどね。

 だってダンジョン探索は6人が基本なのに普通に4人で入ってるっす。

 余裕の表れっすよね。


 今うちらが居るのはルードダンジョン128階。

 キリがいいっすね、って言う商人ジョークがあるらしいっすよ。


 それは置いといて、マスター、シルキー、フィルとうち、シラセの4人でダンジョンを駆け抜けているところっす。

 うちが前衛、シルキーとフィルが中衛、マスターが後衛。

 マスターとうちの二人で前衛でもいいんすけど、バックアタック食らったら終わりっしょ。


 なんで安全策。ま、骨喰いと滅多斬り(スラッシュアタック)で複数魔物が出てきても対処できるっすから一人でも大丈夫なんすけど……。

 前衛一人は心細いっすね……。

 まぁ相対する前に後衛が倒しちゃうから緊張感も何もないっしょ。


 しっかしなんで今更ルードなのか。

 最近になって冒険者の間では魔法武器がよく出るとか言われてそこそこ流行ってるらしいっすけどね。


 お蔭で問題になってるのが冒険者狩りっすね。

 上層に居る奴らはザコもいいとこだから放っといてもいいっす。


 下層に『猫』が出たって騒がれてからはより一層治安悪くなったっしょ。 


「目的言ってなかったな、150階あたりにトリアナが居るはずだ。

 それを連れ戻したい」

「……へ? マジで言ってるっす?」


 4人で150階まで行くのも頭おかしいっすけど、用事は連れ戻すだけ。

 正気っすか? それだけに金貨300枚も出してうちを雇ったんすか?


 絶対何かしらあるっす。警戒するしかないっしょ。

 ……まぁ警戒はするとして。

 マスターの探索方法、かなりイカれてると思うんすよね。


 フィルがダンジョンの壁に一直線の穴を空ける。

 彼女は手を向けるだけで、詠唱もなしに頑丈な壁にぷつりと穴が空いて。

 その方向にある壁全部に穴が空いて道ができるっす。


 そしてマスターが位置売買交換法で一気に一番奥まで行く。

 安全を確保したら全員を位置交換で呼ぶ。

 空けた穴は勝手に閉じる。


 ダンジョンに穴空けちゃいけないはずなんすけどね……。

 勝手に直るのもおかしいっす。


 この探索でもなんでもないダンジョン移動だけでもおかしいと思うっしょ?

 マスターは120階まで降り切るのに2日かからないで、しかも単騎で、更に、常に全力ダッシュで降りたらしいんすよ。


 うち要らなくないっすかね。

 いや、楽なのはいいんすけどね。



*



「てき! 右がわのかべ!」

「はいはい、了解!」

「行くぜ、せーの!」


 でフィルが開けた穴に向かってマスターが武器攻撃をブチ込むと。

 通路の隣に居た鬼のような魔物の不意を突いて殺す事ができた。

 50本くらい飛んでったっすね……あな恐ろしやっす。


 そりゃ、真っ向から戦うよりかよっぽど安全っすよね。


 うちのダンジョン探索という概念が崩れてきたっしょ……。



*



「ますたぁ、あのかべのうらに宝ばこあります!」

「んんー……ミドルグレードだからスルー」

「いえーすまいますたー」


 なんで宝箱の外から中身がわかるんすかね。



*



「マスター、ナイフ買ってほしい。もう数少ないし……」

「20本くらいでいいか? ほらよ」


 次々とナイフが出てくる。それをぽいぽいとフィルに渡す。

 これも気持ち悪いっすよね。何もないところから刃物がどんどん出てくるんすから。



*



「ますたぁ、おくの方にねずみが6ひき」

「おっけ」


 通路の奥の方でパァンパァンと何かが弾けるような音が。

 そのまま100メートルほど進んでいくと、巨大な鼠が転がってたっす。

 よく見るとぴくぴく動いていて、気絶しているようっすね。


 射程が長すぎるんじゃないですかね。

 うち本当に必要だったっすか?



*



「お、このトラップ、質がいいんじゃないか?」

「魔法武器製の罠かぁ、ここのダンジョンメーカーは贅沢するね」


 普通に歩いてきたっすけどこの広間かなり趣向が凝らされてるっすよ。

 所謂見せ罠じゃなくて、殺す罠になってるっす。


 特定の床を踏むと落ちてくるギロチンを避けた先に串刺しの罠とか。


「視界内に入ってる無機物は、金さえあれば無条件で買えるからな」


 トラップの所有権を買って主人判定をつけたらしいっす。

 場所がわかれば無効化できるから盗賊も要らないんすね。


「あそこにくろすぼうあります」

「大丈夫、気づいてるし無効化してあるぜ、ありがとな」

「えへへ」


 マスターがシルキーを撫で繰り回しているっす。

 あとにしてもらえないっすか?


「むー、あそこの罠は? 多分毒ガスだよ」


 対抗意識を燃やしたのか、フィルも張り切ってるっしょ。


「げ、気づかなかった。えーとあそこから繋がって……あの絵画か」

「ほめて!」

「わかってるよ、ありがとう」

「ん……」


 ちゅーすんな。

 ……爆発してくれっす。



*



 轟音を上げて、上半身をなくした三つ目の鬼人が倒れた。

 爆発したのはボスだったっす。


「……これはなんの魔法なんすか?」

「爆弾かな」

「爆弾の魔法っすか? 聞いた事ないっすね」

「いやだから爆弾だって」


 ケラケラと笑いながら平然と話すマスター。

 爆弾って、地面に叩きつけると破裂音を鳴らす玩具っすよね?


「こっちでは鉱山は崩れやすいし金貨とかも焼けちゃうから爆弾技術は進んでいないんだよな。発掘の為の技術革命がないと誕生の切っ掛けすらないし」

「魔法で大体なんでもできるからね。マスターはそれ以上に色々できるけど」


 なんかよくわかんない事言ってるっす。

 『こっち』ってなんすかね。


 マスターはさもおかしそうに腹を抱えて笑っている。

 ちょっと腹立たしいけど楽しそうだからいいっす。




 んん……?

 ……思えばボス8体にも会ったのに一回たりとも骨喰い抜いてないっす。




 帰っていいすか?

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