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りょうたんからのお兄さんから

作者: 蓼りょう

「りょうたんから」のお兄さん目線から書いたスピンオフであります。

また機会があれば書きたいと思います。

ありがとうございます。


りょうたんを最初に見たのは、京都の河原町三条にあったペットショップだった。

多分奥さんとのデートの帰りにお店を見つけて、たまたまだ名前もない、シェットランド・シープドッグのりょうたんに出会い、一目惚れと言うに相応しい感覚にとらわれた。

他の仔犬たちはプリンっとした肉肉しくまん丸で、手を出してやれば無邪気にコロコロとよく遊ぶ。


りょうたんは他の仔犬たちと比べるとかなり痩せてはいた。おどおどと怯えた様子でこちらを見ている。店員さんの「この子鬱なんです(笑)」の言葉に僕は深いシンパシーを覚えた。

僕たちでないと、この子はみられないという強い使命感に近い気持ちになっているのに気付くのに時間はかかなかった。

店員さんには一応、「自宅で1日考えます」と告げて帰路についたが、二人の会話はもう名前を何にするかまで先走っていた。


しばらくは家や僕らに馴染めないだろうなと危惧していたが、自宅に着くや一人でうろうろ歩いて回り、ご飯もしっかりと食べてくれた。

それから、ご飯の好き嫌いの我がままもあるものの、自力では走れない位にデップリと肥ってしまい、獣医さんからダイエットを命じられる迄になった。

あの日のガリガリな彼は何処へいったのか?


しかし、順調に食べ続けて肥満体になったわけでない。一度バベシアにかかり、死線をさ迷った。

その時はフード以外あげておらず、病気で食が細くなったりょうたんは、今さら病気になったからといって僕らの食べ物を与えても決して口にしようとしなかった。

僕らは深く後悔した。

日に日に痩せていくりょうたん。

奥さんの懸命な説得でなんと食べ始めたではないか。シェルティはもともとコミュニケーション能力が高い犬種だが、りょうたんとは病気以来アイコンタクトで様々な会話をするようになった。

散歩、おやつ、2階、ご飯、迎えに行く、といった要求がお互い理解出来た。

手順だが、僕らは言葉はコマンドで伝わる。

りょうたんからは、手順①手でガリガリと足などにして気づかせる②背筋を伸ばし座り直し、目を見て誠意をみせる③目を見ながら、散歩なら玄関にふりかえり、そのままご飯なら見つめ続けて、相手が「ご飯か?」と言うまで動かない。


不思議なもので、りょうたんの言いたいことは大体伝わった。

彼はとにかく散歩の回数が多い。

しかしほとんど走り去る車を見ているだけであった。たまに何台かに1台を飛び掛かりながら吠えてみる。その時の顔といったら、どうだと言わんばかりに堂々としている。

雪が好きなため、雪の日は散歩の時間は長くなる。

しかし、他のわんこみたいにざくざく歩いてくれないのりょうたんの醍醐味である。同じところをずーっとウロウロ。散歩というより徘徊である。

一時間たっても家が見える場所にいて、

吹雪のなか奥さんの帰りを待っていた事もある。


川での水泳は良い思い出だ。

最初はちゃんと泳げて楽しそうに見えたのだが、一度顔に水がかかりパニックになったのをきっかけに、段々泳ぎ方がへたっぴになり、やがて溺れるようになった。

蝉が鳴き出す時期になると思い出す。

優しい木漏れ日の中の小川のせせらぎ。

リードすら着けずに遊んだあの日。

りょうたんはどこにも行かないと思っていたし、僕もりょうたんの近くにいた。

こんな事もあったね。

リードが着いてないドーベルマンがこちらへ走ってきた。僕はりょうたんを抱っこした。

すると、りょうたんの身代わりに僕が三回腕を噛まれたあの夏の日。

知らない?

まあ、いいや。

またいつか泳ぎに行こうね。


お兄さんより


時間の流れは早いけど、つい昨日の事の様に鮮明に、忘れられない日があると思います。

りょうたんと過ごした日々はまさにそう呼ぶに相応しい貴重な毎日だったと今なら分かります。

もっとこうしておけばと思ってばかりです。

もしよければ「りょうたんから」も読んでやって下さい。ありがとうございました。

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