g 01
「ここ、どこだ?」
目が覚めたらそこは、全く見覚えのない場所だった。
暑い
蒸し暑い。
「……あつい!」
俺は身体中に纏まりつくような蒸し暑さに、我慢が出来ずに飛び起きた。
次の瞬間、爽やかな風が頬を撫でた。
「は!?」
俺は目を疑った。
そこには、いつもの散らかった狭い部屋ではなく、見渡す限りの草原が広がっていた。
どこだ、ここ?
あらためて、周りを見渡してみたけれど、360度やっぱり草原で、住んでいた横浜では、いや日本ではあり得ない風景がそこにはあった。
どういうことだ、いったい。
何で俺はこんなところで寝てたんだ。
というかどうやってここまで来たんだよ。
俺はこんなところに来たことなんて無いぞ。昨日は確かにベッドで寝たはずだよな。
どうしてここに。
これって……
つまり、誘拐されたのか?
「ひとまず、警察呼ばないと……」
あ!
そうだ。携帯があるじゃないか。
携帯で警察を呼ぼう。
そう思い付いた俺は、ジーパンのポケットを探してみたが、何も入っていなかった。
「だよな……」
はぁ。
ため息と乾いた声が洩れる。
よく考えたら、昨日寝たときに、携帯とか財布とか全部貴重品は机の上に置いたまんまだったよな。
「くそ……ひとまずそうだな。人を探そう。そして、連絡してもらおう。そうしよう」
誰に言うわけでもなく。
声を出して、俺は確認するように呟いていた。
さてと、どっちに進むかな。
東か、西か。どっちかに進めば日本ならいつか都市に出ると思うんだよな。つか、ここ日本だよな?こんなずっと草原が続いてる所なんて知らないけど。まさか外国とかだったりしてな?もしそうなら、英語なんて話せないぞ。
はぁ。
……まあ、適当に歩いていくか。
俺は無理矢理考えないようにすると、一歩足を踏み出した。
ただ一歩、足を踏み出した。
別段力を込めていたわけでもない。
頭の中では、これからどうするんだよ。とかずっと草原しか見えないな。とか考えていた。
無意識に自然と踏み出した、一歩目。
しかし、瞬間、体が空高くとんでいた。
「う、うおおおおお!!!!」
え、なんだこれ!?
ええっ!?高い!?
まてまて、どういうことだ。
真下を見てみると、地面までの高さがかなり遠くに見える。
なんで!俺、とんでる?跳んでる!?
つか、このままじゃ……
体感時間としては、10秒あったか無いかぐらいだろうか。
当然のごとく、一度上に投げたボールはまた地面へと落ちていく。それは、当たり前のことで、すなわち俺も例外ではなかった。
「お、落ちるるる!!?」
風が耳元でごうごうとうねっている。
やばい。やばい。やばい!
このままじゃ、カエルみたく落ちていって、地面とファーストキスしちまう!俺の初キスは渡さないぞ地面!!
って、ふざけてる場合かよ俺!?
このままじゃ、ぺしゃんこになってスプラッタな死体を一つ作ってしまう!
あれ。やばい!
本当に死ぬじゃねぇか!!
どうすれば。
…………そうか。受け身。
受け身をすれば、なんとかなるかもしれない。
「うおおおおおお!」
3
2
1……
無理だ!
あ。死ぬ。