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2014年/短編まとめ

一直線彼女

作者: 文崎 美生

「先輩、好きです!付き合って下さい」


ニッコリと効果音がつきそうな笑顔。


彼女の友人は彼女の事を犬と表現する。


キラキラと目を輝かせて、それはもう素晴らしいほどの笑顔。


犬の耳と尻尾が生えていても不思議ではないと周りは断言している。


その尻尾はきっとちぎれんばかりに振られていることだろう。


今の彼女の状況はそれ以外に説明のしようがない。


ご主人様を見つけて駆け寄ってくる忠犬ハチ公。


「今日もハチ公ちゃんは元気だねー」


よしよしと先輩が彼女の頭を撫でる。


その対応は決して想い人を相手にしているではなく、年の離れた妹を甘やかしているよう。


又は擦り寄ってくる愛犬を愛でているようなものである。


ふへへーとだらしくなく笑う彼女。


彼女の後ろにいる友人はいつものことだが、またかと呆れ顔。


「HR遅刻するよー」


そう言いながら彼女の首根っこを掴む友人。


目の前の先輩に笑顔で「失礼しましたー」と言って、そそくさと教室に戻っていく。


これもまた相変わらずな日常になってる。


「てか、ハチは先輩のどこが好きなの」


あんなにも相手にされてないのに、と言いたげな友人。


先輩にハチ公ちゃんと呼ばれるようになってからは、友人にまでハチと呼ばれるようになった。


「えーっとね?図書室で本を探してる時、本が取れなくて…。やっと取れたと思ったら、本が雪崩みたく落ちてきたの」


一人の友人は何を言っているんだ、と言いたげな顔。


そんな危険行為を笑顔で話している彼女が理解できないらしい。


そしてもう一人の友人はまたその話か、というような顔。


この話は彼女自身が聞かれるわけでもないのに、ずっと話され続けて耳にタコなのだ。


「そしたら先輩が庇ってくれたのっ!ぎゅってして」


きゃーっと一人で赤面する彼女に友人は呆れた。


なんて単純な子なんだと思う。


それと同時に彼女の人の良さも見える。


「恋はもっと駆け引きが大事じゃない?」


話を聞いていただけの友人が溜息混じりに、彼女に諭した。


「もっと上手く相手を乗せないと、落とせるものも落とせないわよ?」


プルンとグロスの塗られた桃色の唇が弧を描く。


妖艶に大人びた雰囲気を醸し出した友人だが、彼女はまたふにゃりと愛らしく笑う。


そして腕を突き上げて宣言する。


「愛は一途に真っ直ぐに一直線なのだー!」


今日も彼女は一直線らしいです。


「ところで、ここ廊下…」

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