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高原詩都香の日記③

 今日は琉斗の結婚式。

 午前中に琉斗と伽那を見送った。二人は無事、婚姻届を役所に提出したとのこと。

 お昼前、わたしたちが集まった教会に、琉斗が危なっかしく運転する車がやって来た。そこで親族だけの式を行った。

 そしてその後の披露宴。一条家の権勢を示すような、盛大なものになった。「ほんとは身内だけのささやかなものにしたかったんだけど」なんて申し訳なさそうに語るウェディングドレス姿の伽那は、ほんとに綺麗だった。

 わたしも生まれて初めてイブニングドレスとやらを着ることになった。伽那の家が準備してくれた最高級品。でもおかしいな、二十代半ばのわたしなのに、どうしてもドレスに着られてるみたいに感じた。

 一条家の一人娘の結婚披露宴ということで、週刊誌や経済誌も取材に来ていた。わたしも取材を受けた。「この先二人を様々な困難が待ち受けているだろうけれど、愛の力でそれを乗り切って欲しい」だとか、「伽那のことは小学校から知っている。決して強い子ではないので、弟には良き支えとなって欲しい」だなんて恥ずかしい言葉を吐いた。わたしだって、自分に求められている役割は自覚している。

 ただ、写真や録画は遠慮してもらった。誠介くんの両親も報道を見聞きするかもしれないし、幸せそうなわたしの顔を見たらもう一度傷つくだろう。

 面と向かって「本当にお姉さん?」と尋ねてくる記者さんもいた。「あれ? 妹さん?」とも。二十四歳の姉がこのナリでは疑問に思うのも当然だ。そんな質問も、たぶんうまくかわせたと思う。

 お父さんの昔の同僚を名乗る人たちにも会った。たぶんわたしのやったことだって知ってるんだろうけど、それについては何も言わず、ただおめでとうと言ってくれた。……それで十分。嬉しかった。

 二人はこれから新婚旅行かぁ。ヨーロッパ一周だって。琉斗は留学してたし英語くらいお手のものだろうけど、伽那は大丈夫かな。「通訳として、お姉ちゃんも一緒にどう?」だなんて、琉斗ってばほんとバカだな。どこの世界に姉同伴で新婚旅行に行く夫婦がいるかっての。そもそもわたし、話す方はあまり得意じゃないし。


 琉斗宛てに手紙を書こうと思ったけど、やっぱりどうしても恥ずかしいのでここに書いちゃおう。

 ――ねえ、琉斗。幸せになってね。ママが死んでから、これでもわたしはせめてママの代わりになろうと、精一杯頑張ったんだよ。

 琉斗が一人前になってくれて、本当にうれしい。琉斗を立派に送り出せたことで、わたしは自分の生きた意味を残せた気がします。

 伽那は大変な立場だし、琉斗は入り婿だから、この先もいろいろあるでしょう。取材された時に言った、「愛の力で乗り切って欲しい」というのはほんと。伽那を支えてあげてね。

 でもどうしようもないと感じた時には、お姉ちゃんを頼って。世界中を敵に回したって、二人を助けるから。

 今からお父さんのお墓に報告に行きます。琉斗も伽那も行くって言ってくれたけど、却下しちゃったね。さっさと新婚旅行に行っちゃってよ、って。

 うん、二人は未来にだけ目を向けていてください。


 わたしは大丈夫だから。何百年も一人だって。

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