高原詩都香の日記②
お父さんが死んだ。
未だに信じられない。飄々として抜け目のない人だったし、ひょっとしたら死んだふりをしてるだけで、いきなり目を覚ますんじゃないかと思ってた。
でも、ダメだった。私の希望はいつも打ち砕かれる。
立派な最後だった、と言えるのかもしれない。
でも、娘の力をもっと信じてよかったんじゃない?
お父さんが拘束を振り切った時点で、わたしは助けられると思った。実際そう動こうとした。
だって、今のわたしは山脈だって撃ち抜けるんだよ? 地球上で開放するのがためらわれるくらいの魔力を扱えるんだよ?
あんな奴らなんか、十秒で片づけられたんだから。
早まったよ、お父さん。絶対助けられたのに。
……ううん、わかってる。自分の力が絶対とは程遠いこと。
今回を切り抜けたところで、またあいつらがお父さんを人質にとりかねないこと。
いや、ひょっとしたら次は琉斗かもしれない。
だからわたしが取り乱した態度を示す前に、自ら命を断ったんだよね?
タブーを犯して人質を取ったところでわたしへの効果は不明、ってことにするために。
……全然格好良くなかったよ。無様だったよ。
同じく無様なら、娘の力を頼ってもよかったのに。
でも安心して。もうこんな失敗はしないから。
あれからこの街全体を意識の網で覆ったし、この街に敵意のある人間がやって来るのを見逃したりしない。もし来たら、地球の裏側からだって瞬時に駆けつける。
だから安心して、お父さん。
おやすみなさい。




