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そのときのこと、その後のこと

『今日午後三時前、市内高樹町(たかぎちょう)瓜生山(うりゅうやま)とそのふもとで爆発事故が発生しました。高樹町は壊滅状態で、少なくとも二百人以上が怪我。死者・行方不明者の数は――今、続報が入りました。県警はこの事故の原因を不発弾数発の連鎖的爆発と発表。ただいま県警前と中継が繋がっています……』

 ——無数の未来が、

「今日午後三時前、市内高樹町の瓜生山の山頂付近で爆発事故が発生。現場から身元不明の五人の男女の遺体が収容されました――お待ちください、ただいま五人のうち二人の身元が確認されたようです。二人は市内の高校生、相川魅咲(あいかわみさき)さん、一条伽那(いちじょうかな)さん……」

 ——たった一つに、

「瓜生山に不発弾!? 暴発で男子高校生不明

 二十二日午後に市内の瓜生山で起こった爆発事故は、県警の調べで山中に残っていた不発弾の暴発が原因と特定された。この事故で市内の男子高校生一人が行方不明。同じ高校に通う三人の女子生徒が重軽傷を負った。内一人は意識不明の重体。警察では、何らかの事情を知っているものと見て、三人の回復を待って……」

 ——収束されていく。


※※※

「今までいっしょに戦ってくれてありがとう。……ここからはわたし一人でやる」

 詩都香(しずか)はそう告げ、魅咲と伽那のもとを去った。

※※※

 予感はあった。

 すぐに駆けつける――三年も前に、彼女と交わした約束。忘れかけていた頃になって、それが唐突に果たされることとなった。

 向かった先で待ち受けていた少女の姿に、詩都香は瞠目する。予感は当たっていた。

「何の因果なのかなぁ。こんな形であんたと再会するなんて」

 二つに切れた、それでも長い髪を手の中でぷらぷらさせながらそう言う彼女。詩都香の方も同感だった。

「……わたしも。ゴジラと再会した新堂会長の気分だわ。魔術師になってたのね」

 この手の台詞を吐くのは久しぶりだった。昔のノリが思わず出てしまった。だって――

「よくわかんないけど。あんた、そういうとこ変わってないんだ。あの時の魔術師、覚えてる? 『強気な台詞にだまされたけど、パクりだったのか!』ってかんかんだったよ。今じゃあたしの部下だけどさ。……にしてもあんた、もっとおっかない奴になってるかと思ってたけど」

「わたしは変わったよ。でも、こんなネタくらい交ぜなきゃ……」

 ――彼女とは戦えない。

※※※

 魔法の使えないただの人間が、あの拘束を抜け出すとは思ってもみなかったのだろう。彼らは怒りと焦りをあらわにして、その背を追った。

 身体能力を強化した魔術師と、場数を踏んでいるとはいえ常人とでは、競走にならない。追う者と追われる者との距離は見る見るうちに小さくなっていく。

 その手がかかろうとしたとき、彼はサイドホルスターから拳銃を抜いた。冷たい銃口を自分のこめかみに当てる。

「悪い。じゃあな、詩都香」

 そんな言葉と共に、彼は引き鉄を引いた。銃声とともに、その頭部が爆ぜた。

 詩都香は絶叫した。〈モナドの窓〉が軋みを上げるほどの混沌が、〈炉〉の中にどっと流れ込んだ。

※※※

 滅ぼす――ただひとつのその気持ちに、詩都香は全神経を集中させた。指先に灯る青白い光が、ぐんぐんとその輝度を増していく。見る者に、地球すら滅ぼしかねないという予感すら抱かせる、凶暴な光……。

 ここは古都エクス・ラ・シャペル。その片隅に、余人には見えないよう幾重にも結界を張って佇む城。

 その白亜の城壁に指先を向ける。

「これでわたしの戦いも終わる」

 そっと呟いた詩都香が、その光を開放した。

※※※

「お父さん、琉斗(りゅうと)は行ったよ。新婚旅行にはあいにくのお天気だけどね。でも、年中晴れっぱなしの伽那と二人だし、絶対幸せになってくれるはず……っ」

 墓石の前に跪き、手を合わせてそう報告する詩都香の肩は震えていた。

「……どうしてだろ? 嬉しいのに……」

 堪え切れず、喉から嗚咽が漏れる。傾けた首筋で押さえていた傘が落ちた。彼女の小さな肩を、本降りになった雨が容赦なく叩いた。

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