第1夜
どうも皆さん魔物。です。
クリスマスの為に書き下ろした短編小説になっております。
今回の話は第1夜と第2夜に分けて書いております。
こちらのお話は第1夜となっております。
~この物語はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません~
————|Silent night, holy night《静かな夜、聖なる夜》♪
——
誰もが慶祝ムードで浮かれ出す時期。
街並みは赤だの青だの緑だの....キラキラと眼に悪い色で染まっているうえ、クリスマスソングばかりで耳にも悪い。
誰ももう、元の意味を覚えている者は少ないだろう。
否、皆そんなことどうでもいいのである。
生まれた時からクリスマスには家族や友人、恋人と過ごし、当日の朝にはサンタクロースと言う白いひげを生やしたいおじいさんがプレゼントを届けに来てくれる。
これが当たり前。今の、ほぼ共通の認識。
けれども、この世には家族も友人も恋人もおらず、本来のクリスマスのように静かな夜を過ごすしかない者もいる。
僕が生まれてすぐに母が死に、それに絶望した父は自殺した。
その後、父方の祖母に引き取られ育ったが貧乏だったためクリスマスなんて存在はほぼ幻だった。
そうして、自身も大人になり、身内はほぼいなくなった。
母方の祖母と祖父は生きてはいるが自身の手には余るため施設に入れた。
家族はいない。
学校では父と母が居ないことをいじられ、周りから避けられた。
いや、僕から離れていったのかもしれない。
信用して話が出来る友人は誰一人出来なかった。
友人もいない。
顔は普通、性格は根暗、仕事はそこそこ、誰からも目立たなければ、自身からアピールすることもない。
そりゃあ、彼女すらいなければ、女性とプライベートな話すらしたことはほとんどない。
彼女もいない。
.....。
何が良くてこの街並みを見ているのか。
何が楽しくてこんな人ごみの中にいるのか。
何が嬉しくて人と一緒に居るのか。
僕には何一つわからない。
この賑やかな人の声も、彩られたイルミネーションの飾りも、粋なクリスマスソングも。
全てが自身の孤独さを助長するだけで何も嬉しくないし、楽しくないし、面白くもない。
そんなことを考えながらイルミネーションで彩られた街路をゆっくりと歩く。
...なんか色々と考えていたら、死んだ方が楽なんじゃないかとか、今生きている理由ってなんだろうって思えてきた。
どうせ、このまま家に帰って冷凍食やスーパーの弁当を食って、寝て、朝仕事に行く。
そんな暮らしをするだけなんだろうなって。
けれども、いざ死ぬってなったら怖くて出来ないんだろうな....。
自殺が出来る人って相当周りが見えていないか、死に対しての抵抗が無くなった人なのかな....。
ありゃ、勇気が無いと難しいよな.....。
はぁ....。
神様とかそういうのが居るのなら、こんな僕を助けてくれよな...。
そうして、ようやっと自身のアパートの扉の前まで来る。
「扉を開けたらそこには彼女が...っていうシチュエーションってどんな感じなんだろうな。」
そう呟きながら鍵を開け....。
と思ったが開いていた。
最近忙しかったし、閉め忘れたんだろうか。
こういうのって流れでやってるから忘れることもあれば、掛けたことも忘れることあるしな。
ギギィ————。
軋んで少し重たい鉄扉を開ける。
「ただいま....。」
誰が居るわけでも無いのに「ただいま」は言ってしまう。
「おかえりなさ〜い」
......?
電気がついている、今日消して出たはず...だよな...。
誰かいる...の...か....?
って、今『おかえりなさ〜い』って聞こえなかったか???
え、噓だろ?本当に誰かいる?
空き巣?泥棒?いや、普通返事しないだろ。
なんだよ、『おかえりなさ〜い』って、しかも女性の声??
その現象に脳を焼かれその場でフリーズしていた。
バタンッ!
自身で開けた玄関の扉が閉まる——————。
警察か?誰なのか一度聞いてみるか??
こういう時どうしたらいい?
未だかつてない程に思考を巡らせる。
が、用意した変数にその事象が入り切っていないおかげで頭の中に|OverflowExceptionが表示されている。
「あれ...?どうされましたか?」
奥の部屋からひょっこっと可愛らしい女性が顔を覗かせる。
「手料理を用意していますので、早くこちらへどうぞ!それとも先にお風呂に入りますか?」
少し遠めからでもわかる、愛くるしい顔でこちらに顔をのぞかせ、男であれば誰でも羨む様なシチュエーション。
こちらが驚き、固まっている様子を不思議そうにしている。
声も出なかった。
「そこに立ったままでは寒いでしょう?」
そう言いながらてくてくとこちらへと歩み寄ってくる。
「ちょ、ちょっと待って下さい!!!ストップ!!!」
頑張って絞り出した言葉がそれだった。
「どうされたのですか...?」
本当に純粋な目で困惑した表情をしている。
やめろ...やめてくれ!おかしくなる!!ってか、この人不法侵入していることにすら気付くというか、罪悪感は無いのか??
「あの....えっと、その...い、色々とお聞きしたいことがあるんですけど...。」
するとその女性は、「そうでした!」と言いながらこちらへ寄ってきた。
「すみません、私完全に言い忘れてましたよね....?ご説明するのでまずは上がって下さい。」
もう何が何だかわからないままリビングへと足を運んだ。
リビングの卓上には....アクア...パッツァ?などのような魚料理がいっぱい置かれており、ハーブや魚を焼いた食欲をそそる匂いが部屋中に漂っている。
「えっと、せっかく作ったので、是非食べながらお話を聞いて頂いてよろしいでしょうか?」
そうして、自然な流れで上着を預けてしまっていた。
なんか、気付いたら自室に知らない女性がいて、その女性の手料理を食べることになっていたのだが....。
何を言っているのかわからないと思うが、自身でも何を言っているのかわからない。
「えっと、どこから聞きたいですか?あと、ご飯は食べながらでいいですからね。」
聞きたいことと言われると無限に出てくる...。
が、まずは...。
「えっと...あなたは誰ですか...?」
そう聞きながら少しご飯に手を付けてみる——————。
美味いッ!!!
なんだこれ!!手料理というか、もうお店で出てきても何も疑わないレベルッ!?!?
魚料理と言えども、アクアパッツァは油が少々気になるものだが、全く気にならない、家で作るとべちょっとしがちだが、そんなことがないちょうどいい塩梅ッ!
魚や貝などの出汁も良い感じに染みているし、心と体に旨みが沁み渡る!
すると、目の前に座っている女性は「フフッ」と微笑んだ。
「その表情、お気に召して頂いたのですね、良かったです。」
そのにこやかな笑顔は僕の心をグッと掴んだ。
「コホン。改めて、私の名前はラファ。ヤハウェ・ラファ。アドナイ・ラファとも呼ばれています。あなたを癒す者です。」
ヤハウェ...?アドナイ?海外の人か??
僕を癒すって...どういう...。
「やっぱり...日本じゃ私の名前は通じないですか...。まぁ、いいでしょう。とにかく、私は神様、GODです。」
か、神様...?
なんだ?何を言っているんだ?僕は夢でも見ているのか???
「信じて...ないって感じですね...。あまり安売りはしたくないですが...。いいでしょう。その足、見せて下さい。」
そう言うと、彼女は僕の足を掴んで靴下を剥いだ。
そこには、靴擦れを起こして血が滲んていた。
彼女はその患部に手をかざすとみるみるうちに足にあった痛みが消えていった...。
「これでどうですか?信じました?私が神様だって。」
彼女はひとしきり治し終えたあとに怪我がなくなっていることを確認するとこちらに微笑みかけた。
信じるも何も、目の前でこんな事されたんじゃ信じるしかない。
夢かなんかじゃあない限り有り得ないことが起きている。
「これで信じるなって方が難しいですよ...。」
そもそも、靴下の下の怪我がわかったのかとか、どうやって癒したのかとか、聞きたいことばかりだが、それは置いておいて。
とにかく、何がどうなっていようが、これを...彼女が神様だと言うことを信じて次の質問を進める必要がある。
「じゃあ、その、神様がなぜ僕の元へ...?なんとな〜く、あなたが癒しの力を持った神様だって事はわかったけど...」
彼女は少し頭の中で話すことを整理すると僕の手の甲に手を優しく添えた後に話し始めた。
「パンパカパーン!まずは、あなたは神の選定により私の癒しの対象になりました!」
パンパカパーン...??
「い、癒しの選定...?」
「違います!!神の選定で癒しの対象です!」
もう、何がなんだか...。
神?癒し?と、とにかく、詳しく聞く他ない...か...。
「で...その...神の選定とか癒しってのはどういう事だ...?」
そう問うと彼女は『よし来た!』と言わんばかりに説明しだす。
「全部説明するのでよ〜く聞いておいてくださいね!」
——————
〜神の選定とは〜
私達神が何かを人類に対して与えたり行ったりする時にやる会議とかくじ引きみたいなものです!
この時にこの災害を起こすとか、生かすとかそういうのは全て神が決めてます!
その時それぞれ色んなものを司っている神がいるのでその人の主導のもと決めていきます。
それが神による選定です。
〜癒しについて〜
そこで私の登場です。
私は癒しを担当?しているのです!
癒しっていうのは色々あります。
例えば...。
モーセさんに啓示を出して、苦くて飲めない水を甘くしたり。
蛇の猛毒に苦しめられている方々の毒を鎮めたり。
皮膚病に苦しむ方々に助言をし治めたり...。
いっぱいありますが、心身ともに人々を癒すと言うのが役目です。
そして、年に一度クリスマスの日にイエス様の命名の元で世界中の不幸な人間から1人を選定して、私、『ヤハウェ・ラファ』自らが癒しを与えると言うのが恒例となってるんです。
信仰については特に反キリストでなければ誰でも良くて...。
ここだけの話ですよ...?
実は信仰も得ちゃおうっていう目論見もあるんですよね...。
それでもって、なぜあなたが選ばれたのかっていう部分ですが...。
不快にならないでくださいね...?
まず、あなたは不幸人です。
誰がどう見ても。
そして、このまま放置すると貴方は神の造った歴史に叛き、数人の命を巻き込んで死ぬと言う暗示が出たのです。
それを阻止するべく、神々の会議により選定されました。
これが、ある程度の全容です。
——————
「どうですか?ご理解いただけましたか...?」
正直に言うとあまり理解してないし、神とかなんとか、スケールが大きすぎて途中からあまり聞いていなかった。
けれども、ご飯を食べる手だけは止められなかった。
「えっと...(もごもご)、そのとにかく、あなたが...神様が直々に僕の事を癒してくれるって話...?」
と言っても、もうどれが嘘でも、お金を取られようとも何でもいいやって思った。
だって、この料理は本物だから。
「ま、まぁ...そういう事です。ですから、クリスマスイブの今日とクリスマスのこの約2日間はあなたを癒すことに全力を注ぎますので!どんな事でもおっしゃってください。」
もう、頭がパンクしてその時は全て話半分だった。
「...それで...凄くお料理がお気に召したようで良かったのですが、あまり食べ過ぎるとお身体に障りますよ?」
確かに...言われてればだいぶ食べ過ぎていた...。
「そ、そうですね...。なんか、何が何だかで食べることに集中しちゃって...。」
というか、今よくよく考えたら、どうやって癒すんだ?というよりもどうやって癒し切った!っていうのがわかるのだろうか?
確かに、一時的に癒されて「嬉しい!楽しい!大好き!」ってなるかもしれないが、それはあくまでも(神だけど)一時的であって、その後はどうなるのか?
というか、僕、人巻き込んで死ぬとか言われてなかったか...?
「えっと...その...。」
今さっき考えたことをそのまま聞こうとした時、彼女から静止が入った。
「ちょっと待って下さい!聞きたいことはなんとなくわかってます。癒しの定義と手法ですよね。いつも聞かれるんですよこれ...。」
いつも聞かれるならさっきの説明に組み込めば済む話なのでは...?
とか考えたが、そもそも長くて中盤あんまり聞いていなかったことを思い出した。
「では、こちらも説明させていただきますね。」
——————
〜癒しの手法〜
これはもう簡潔に言います!
先ほども言いましたが、あなたがやって欲しい事を何でも叶えてあげる事です!
ただし、ここからが重要です!
何でもと言いましたが、人知を超えた範囲の事や、人道から外れることなどは禁止です。
あくまでも、人として成せる範疇なら何でもってことです!
〜癒しの定義〜
これについては話すのって難しいんですよね。
感覚の話って言いますか...。
人間には魂があって、神にはその魂が色や形としてはっきり見えているんですよ。
その魂の形が歪になっていたり、暗い色になっている時はその人が何かしら癒しを求めている証拠。
私はそれを見極めて、その人が癒されているのかどうかをみることができます。
これが追加の説明です。
——————
ん...?ちょっと待てよ...?何でも...?
今、と言うか前の説明でも言ってた気がする...。何でもって...。
良いのか...?僕が?こんな美少女と...??
と言うか、こう...マジマジと見ると本当に可愛いな...。
色白な肌に、毛並みの揃った艶のある髪...。
薄いピンクの口紅に、吸い込まれるような綺麗な瞳...。
僕が...こんな綺麗な人と......。
何でも...??
「あ、...えっと。私、なんか顔についてますか...?」
しまった...彼女の顔に見惚れすぎた...。
ここはなんとか誤魔化そう...。下心があるなんてのも言い出せないし...。
「えっと...その...。ヤハウェ・ラファ様って海外の神様なのに少し日本人顔っぽいですよねって思って...。」
彼女は「あぁ!」と頷き答え始めた。
「えっと、この2日間はラファで良いですよ。それと、この顔は本当の顔じゃないんですよ、お気に召さなければ他にお好きな顔に変えられますよ?」
顔が変えられるって...なんか複雑な気持ちになるな...。
「いや、そのままで良いです...。けれど、聞いていいのかわからないけども、なぜ元の素顔は隠してるんですか?」
これは純粋な質問だ。
本当だぞ?下心は関係ないからな?
「神には元々、容姿ってのは無いんですよ。イエス様はよく人の姿で描かれますが、あれはあくまで人間の姿を借りているだけです。神にとっては容姿はただの記号でしか無いのですよ。」
なるほど...。
じゃあ、他にも色々と描かれている神様の容姿は本当じゃないかも知れないってことなのかな...。
「ま、まぁ、なんとなくわかりました。ありがとうございます。」
「えっと...その。敬語...苦手ならしなくてもいいですよ?この2日間限定ですが。」
正直、敬語とか謙遜語とか苦手だし意味がわからない。
やらなくていいならそっちのほうが良い。
「わか...ったよ。ラファ。ありがとう。」
こういう時、すぐに変えようってのもなんかくすぐったい。
「ところで...あなたが他に望む物はありますか?人道に反さない物なら何でも」
あぁ〜!いけません!!なぜ!?
せっかく話を逸らしたのにそんな話しされたらもう!!頭にはあんな事しか思い浮かばなくなります!!
あぁ!どうしたらいいのでしょう!?
神様!仏様!観音様!!
私は神様とあんな事やこんな事をしてしまっても良いのでしょうか!?
「えっと...あなたはさっきから何を考えていらっしゃるのですか...?」
ま、まずい...バレてしまう...。
「あ、え、えっと...そ、そろそろお風呂に入ってこよっかなあ〜なんて〜」
や、ヤバい。
凄く嫌そうな顔してる...と言うか困惑顔...??
どういう顔だ??
「あの...えっと...。言って良いのかわからないのですが...。言いませんでしたっけ...?私は人間の魂が見えているので...その。ハッキリとではないですが、どんな事を考えてるのかはわかります...。」
ア゜...。
終わった。
「その...あなたがそんなにそう言うことがしたいって言うなら...応えてあげても......。」
エ゜...。
勝った。
「......。なんて言うと思いましたか?キリスト教では夫婦でない人とのそういう行為は禁止されてるんですよ?なので、そういうえっちなお願いはブッブーです。」
お゜...。
かわいい。
...。
違う違う...ッ!ただ恥かいただけじゃねぇーか!!なんだよ!何でもって!!
消費者庁に連絡するか??あ?
「恐らくなんでーって顔してるので教えておきますね?何でもとは言いましたが、人道的なって話です。少し厳しく言うと、夫婦間にない方との淫らな行為は非人道的だと言う教えです。なので、そういう行為以外のお願いにしてくださいね!」
あぁ、まぁ、そうだよね。
そりゃそうだ。
「ただ、まぁ、お背中を流すぐらいなら...。」
う゜...。
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!
これは勝った!
——————
————
カポーン。
まぁ、そうだよな。ただ背中流して貰うだけだったわ。
ゴシュゴシュゴシュ......。
「どうですか?痒いところとか無いですか?」
ここまで来るともう下心はない。
「いや、大丈夫。気持ちいいよ。」
ゴシュゴシュゴシュ......。
なんか気まずくないか?
「...そういえばラファはなぜ人を救うんだ?世の中には悪いことをする神もいるんだろう?」
「...。私は人が好きです。確かに、壊したり、殺したりと何かと忙しい方々ですが、それでも、自身の限りある天命を全うする姿は愛らしいのです。そして私はそんな愛しき人間たちを癒したいのです。出来れば、病などで苦しんで死んで欲しいなんて思ったことありません。けれども、全員を助ける事は不可能。ならば、天命を全うすべき人間に手を貸し、癒し、共に世界を歩むことが...私の天命だと、有るべき姿だと、考えてます。」
...。
そうだよな。
神も万能じゃないし、100%で救うなんて難しいんだろうな。
「ねぇ、明日は一緒にクリスマスツリーを観に行かないか?人とクリスマスを過ごすってやったことなくてさ、どう過ごすのが良いのかわからなくて。僕なりにちょっと考えてみたんだけど。毎年恨んで通ってた場所を、改めて観に行ったら何か変わるかなって。」
本心からの言葉だった。
クリスマスをまともに人と暮らしたことがないからこそ、今改めて楽しんでみたいって本気で思った。
そして、心から人を癒したいって言ってるこの神様とこのひと時を過ごしてみたいって純粋に思えた...。
「あの...顔...赤いですよ...?」
「ごめん、シャワー長かったかも。」
——————
————
ふぅ...。
久しぶりに感情的になった気がする。
「あの...もう寝ますよね...?なら...。」
ぺちぺち。
目の前にいる女性...否、神様が自身の太ももを叩き、膝枕を誘っている...?
これは不埒な行為じゃないのか!?いいのか!?
ボフッ!
誘惑には勝てない。
あぁ...。これが正真正銘、神の太もも...。
すべすべもっちり...。
「あの...あんまり触んないでもらっていいですか...?くすぐったいです。」
あぁ、ごめんなさい。
そう言いながら手を添えるのを止めた。
「今から耳かきをしますね。そしてそのまま眠ってください。」
カリカリ...。
ゴリゴリ...。
耳かき棒が耳の中をなぞる音が妙に心地が良い。
すぐにでも寝落ちてしまいそうなほど...。
「ねぇ、ラファ。最後に1つ聞いてもいい?」
「はい。良いですよ。」
眠気で朦朧としていたが、どうしても気になっていた1つのこと...。
それは......。
「僕が数人を巻き込んで死ぬって話は本当なの?原因とかって...。」
そう、未来に起こる事でもあり、神様が僕を選定した理由でもある。
「これは...これだけは話す必要がありますね...。」
ただ、これを聞いたものの、瞼がもう抵抗できないところまで来ていた。
「これは...今のあなたから1年後のお話です。」
——————
————
———|All is calm, all is bright《すべてが穏やかで、すべてが明るい》♪
あれ...ここは...。
さっきまでラファの膝の上に寝ていたはず...。
良く見ると周りの景色は良く見た街の風景になっていて、その街の中にぽつんと自分が立っていた。
周りは誰もが慶祝ムードで浮かれており。
街並みは赤だの青だの緑だの....キラキラと眼に悪い色で染まっているうえ、耳障りなクリスマスソングが流れている。
自身の手をよく見ると刃物を手に持っているのがわかる。
恐らく市販されている包丁だと思う。
それを手に持って街なかに佇んでいる。
嫌な予感がする。
この場から離れたほうがいい。そう感じて脚を動かそうとする。
けれども自分自身の身体は一切、ピクリとも動くことはなかった。
その代わり、勝手にどんどん手足が動いて、自身が行きたい方向とは違う方へ歩き出す。
その脚は留まることを知らず、1人の少女の元へと歩んでいく。
———|Round yon Virgin, Mother and Child《処女の母と子を包み込む》♪
音楽が煩い。頭の中で無限に反響しているような感覚。
そうして、遂に自分の脚は少女の目の前まで来て止まった————。
その後は大体察していた、片手に持っていた刃物を両手に持ち替え、そのまま振りかぶっていた。
身体は一切言うことを訊かない。
留まることを知らない。
やめろ......やめ......やめろ......。
止まれ...止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれ止まれッ!!!
———|Holy Infant so tender and mild《聖なる子はとても優しく穏やか》♪
その想いは一切届かなかった...。
銀色に輝くその刃物は無垢な少女の深紅の血で染まり、周りの雪に色を付けていく。
———|Sleep in heavenly peace《眠りたまえ、天国のように安らかに》♪
どれだけ叫んでも、どれだけ引っ張っても、その手は留まることを知らなかった...。
———|Sleep in heavenly peace《眠りたまえ、天国のように安らかに》♪
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