9-正当防衛のつもりだったんです
入ったその日に街を出て、そそくさと逃げ帰る。
そんな道中だから、若干……いや、かなり気まずかった。
何か言わないと……なんて思っている私より先に、彼がそっと口を開いた。
「ミリカさんが出てくのって、賢者様関連?」
私はビクッと大きく身体を震わせた。
「うっ! き、聞いてたのか……」
「まあ、そりゃね」
「あはは……。説明、した方が良いよね?」
彼は小さく頷いた。
「えっと……まずさ、賢者様って知ってる?」
「『凄い魔法使い』ってことは知ってるけど、あまり詳しくないかな」
「合ってるよ。『定められた偉業を為した魔法使い』に与えられる称号が賢者。つまり偉い魔法使いってことだね」
「ふむふむ。それで? ミリカさんとどう関係するの?」
「ぶっちゃけね、私は魔法使い関係でやらかしたのよ。つまり……魔法関連のお偉いさんに追われてる。賢者様とかだったら、もう全員私の所業知ってるって考えて良いかなぁ……うん……」
「本当、一体何したの?」
「まあ……うん、過剰防衛?」
「えぇ……王様でもぶん殴ったの?」
「そこまでじゃないよ! ……でもまあ、近いっちゃ近い……ような、そうでもないというか……」
「なんとなくだけど、ミリカさんすっげぇ馬鹿な理由で追われてるってのはわかった」
「んにゅぅ……。否定は出来ない」
「まあ、了解。ということは、これからも魔法使いの人が来れば逃げる感じ?」
「まあ、そうなるね。流石にはぐれの魔法使いとかだと大丈夫だけど、学園出とか貴族関連とかは完全にアウト。それと、君が嫌な目に遭いそうになっても出るから。だから、嫌な予感がしたら早めに教えてね」
「――ありがとう」
「どういたしまして」
応え、私はにこりと微笑む。
これだけ話しても、これだけ二人っきりになっても、彼の警戒はずっと解けていない。
彼はずっと、私に心を許していない。
彼は隠しているつもりだろうが、流石にそのくらいはわかる。
だけど、それについてどうこういうつもりはなかった。
だってそれは……それだけ、彼は酷い目に遭ってきたということなのだから。
悪いとは思う。
それでも、私は彼に哀れみを向ける気持ちを抑えられなかった。




