ソニアとリアム②
後日、ソニアは言った通り、革のベストを持ってきてくれた。
「すこし厚みのある革だから、体型を隠せると思うのよね。ちょっと着てみて?」
リリアはシャツの下にベストを着てみる。少し丈が長く、腰までしっかり覆えた。
「あら、いいじゃない!ねぇ?くびれを隠せた分、逞しい人に見えるわ。」
ソニアの言う通り、ベストが胸の高さでストンと下に落ちているため、
体格が良くなったように見える。
「これ、胸は布で押さえているのね?あとは、体とベストとの間に
空間がある部分も、布でうめるといいかもしれないわね。」
ソニアはいろいろな方向からリリアを見て、テキパキとアドバイスしてくれる。
前回は、女性だとバレていたことに愕然としたけれど、バレた相手が
ソニアでよかった。
一緒に過ごすなかで、ソニアの誠実で思いやりのある人間性は分かっていた。
自分で気づけないところを指摘してくれ、対策を考えてくれるのも
とてもありがたい。
「うん!これなら、ローブがまくれても、
体型で女の子ってバレないんじゃないかしら。」
満足そうにソニアが頷いた。
「本当にありがとう、ソニア。ソニアが味方になってくれて、すごく心強い。」
「そう言ってもらえてうれしいわ。これくらいしかできないけど…。」
申し訳なさそうにソニアが答える。
「そうだ、リアムっていうのは、本当の名前じゃないのよね?
本当はなんていうの?」
「…本当はリリア。リリア クラレンス。嘘をついていてごめんなさい…」
性別も名前も偽っていたなんて、今まで築いてきた信用を失う行為だ。
でも、ソニアはリリアを見放さないだろうと分かっている。
ソニアは、一度関係を築いた人を、どんな状況でも見捨てない誠実な人だ。
そんなソニアの人柄に応えるために、リリアも偽りなく話すことにした。
「…男の子の格好をしているのは、祖母の案なんだ。」
リリアは、両親が事故で亡くなったこと、叔父に引き取られたが
厄介者扱いだったこと、祖母と暮らすようになったことなどを話した。
「そうだったのね…。危険を減らすために男装するのは、いい考えだと思うわ。
女性の二人暮らしってバレたら、やっぱり危ないもの。
そうそう。おばあさまにお会いしたことなくて、気になっていたの。
今日は、おばあさまは?」
「…おばあちゃんは、去年病気で亡くなったの」
「そう…そうなの…
それじゃあ、それからリリアはここで一人で暮らしているのね…?
余計なお世話かもしれないけど、ちゃんと泣いた…?
リリアは、なんでも一人で頑張ろうとしちゃうから…心配だわ」
その時のリリアの心情を想像したのだろうか、ソニアは目を潤ませながら、
リリアを見つめる。
心から気にかけてくれているソニアの様子を見て、
リリアの目から自然と涙がこぼれた。
おばあちゃんが亡くなったときは、いろいろ忙しく動いていた。
叔父に訃報を伝えても、承知したという返事だけ。
葬儀はリリアが仕切り、聖職者を呼んで静かに済ませた。
その後は、自分一人の日々の生活を作ることに必死だった。
そうやって過ごしていたら、いつのまにか「かなしい」「さみしい」という
感情は、自分の中から無くなってしまっていた。
それが、今、ソニアに言われて、急に戻ってきてしまったようだ。
涙があとからあとから湧き出て、止まらない。
「…なんでぇ?もう気持ちの整理はついてたはずなのに…」
「まだ涙が出るってことは、ずっと辛かったんじゃない…?
スッキリするまで、今、きちんと悲しんで。
気持ちを隠して見ないようにすると、辛いだけよ。」
そう言いながら、ソニアはリリアを椅子に座らせ、ティッシュを渡して
背中を撫でてくれる。
気づかないように過ごしていただけで、「かなしい」「さみしい」気持ちは、
元々無くなってはいなかったらしい…。
リリアは、ソニアに甘えて、思う存分泣いた。




