魅了をかけちゃった!②
思わず見つめてしまったあと、すぐに目をそらしたけれど遅かった…。
男の子はすぐに駆け寄ってきて、「君、名前は?」とリリアの手をギュッと握った。
まずいと思い家に逃げ込もうとした瞬間、壁際に押さえられてしまった。
顔を覗き込まれ、もう一度名前を聞かれる。
あごを持ち上げられ、目を合わせざるを得なくなる。
「…紫がかった青い瞳。朝焼けを思わせる美しさだ」
熱のこもった目で見つめられ、指で頬をなでられた。
「それになんて白い肌だ。赤い唇が肌に映えて…」
言いながら顔が近づいて来るので、リリアはパニックに陥った。
『血を吸えば相手は眠り、起きたときには血を吸われた記憶はなくなっている。
魅了状態も解除されているから、まだ血を飲みたい相手ならまた目を見つめる。
一回限りでいい相手なら、そのままさよなら。』
吸血鬼はそうしていたらしいけど、血を吸わない場合はどうしたらいいの?!
お母さんはどうしたっけ?おばあちゃんはなんて言ってたっけ?!
…そうだ!
リリアはギリギリで自分と男の唇の間に手を入れ、空いている手で屋根下に吊るしていた唐辛子を手に取った。
「口開けて!」
「あーん」
魅了の力ゆえか、素直に従った男の口に唐辛子を放り込む。
「かんで!」
「もぐもぐ……ゲホッ!ゴホゴホ!!」
思わず咳き込んで唐辛子を吹き出す様子をじっと見守る。
「…なにすんだよ…!!ゲホッ!くそっ!のど痛ぇ…!!」
魅了された相手に暴言を吐けるなら、魅了の効力は消えたはず。
「落ち着いた?水飲む?」
そう言いながら畑の横の井戸へと移動する。
汲み置きの水も家にはあるけど、家に入られるリスクを冒したくない。
咳き込んでいる間にしっかり鍵もかけた。
逃げ込みにくくはなったけど、押し入られるよりは何倍もまし。
いざとなったら森に逃げよう――。
「どうぞ」
井戸の横に常に置いている木の器に水を入れて渡す。
一気に飲み干し2杯目も飲み終えて、男はやっと一息ついた。
それから気まずそうに呟いた。
「えっと…。すまん。急に、あんなことして…しかも男の子相手に」
やっぱり魅了にかかっていた間の記憶は無くなってないか…。




