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魅了をかけちゃった!①


どうしよう。まさか人がいたなんて――。


リリアは今、知らない男の子と壁の間に挟まれている…。

その男は両腕の間にリリアを囲い込み、顔を覗き込んでいた。


「聞こえなかった?名前は何って聞いたんだけど?」

男の子はそう言いながら、下を向いていたリリアのあごを持ち上げた。



どうしよう。魅了をかけちゃったみたい!




―――少し時を戻そう。




ここ数日間は、リリアの魅了の力が勝手に発動してしまう期間だった。

魅了の力というのは、女性の吸血鬼が持つという特別なもの。

目を見つめた相手を自分のとりこにして、意のままに操る力。



本来は吸血鬼の食料である血を得るために使われてた力だと思われる。

でも、純粋な血統の吸血鬼がいた時代は遥か昔。

時代を経ていくなかで吸血鬼の血は薄れ、吸血鬼の子孫と言っても今や人間とほとんど変わらない。



リリアも吸血鬼の血を引く一人だが、血は吸わないし、ニンニクも十字架も流れる水も平気だ。

まぁ、銀の銃弾や杭はたぶん無理だけど。


ただ、少し日光に弱いのと、魅了の力が強く出てしまった。

リリアの祖母も母も全然出なかったのだが。





リリアの魅了の力が発揮されるのは、決まって月の巡りの時期。

貧血になるからなのか詳しくは分からないが、その時期に目が合った人に無意識に魅了ををかけてしまう。



だからいつもこの期間は家に閉じこもってやり過ごしている。

でも、今日は違った。


…どうしてもスープにチャイブを入れたい。

そう思ってしまったのだ。

まろやかな辛みを持つチャイブは、スープに入れるとよいアクセントになる。



普段、こんな森のはずれには、人はほとんど来ない。

それでちょっと気が緩んでいたというのもある。

畑はすぐそこだからと外に出てしまったのが間違いだった。





リリアと同い年位の15〜16歳の男の子がそこにいた。

びっくりしたのと同年代の子を近くで見るのは久しぶりだったので、思わずじっと見つめてしまった。



そして、今のこの状態に至るというわけ――。


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