第三章『公子三人』編 あらすじ
盧武成、子狼という二人の臣を得た姜子蘭は東にある姜姓の国、薊国へと向かった。
そこでは、故事好きの君主によって三人の公子が跡目を争っていたのである。
三人の中では争いに乗り気でなく、しかし民を思う徳のある公子、利幼の下へ向かった姜子蘭は、盧武成の武勇と子狼の智恵を売り込み、利幼を助けることとなった。
子狼は薊国の北方にいる騎馬民族、夏羿族を傭兵として用い、多彩な策と盧武成の武をもってまず岸叔を虜囚とした。
公子練孟は隣国、奄国と結んだ。
遼平の平野で会戦することとなり、利幼は兵数で劣るが、士気は高く、善戦した。盧武成率いる夏羿族の傭兵部隊の活躍もあり、結果は利幼の勝利となった。
ただし、二人の兄を虜囚としても、利幼らの父、当代の薊の君主たる姜仲繪は利幼を太子と認めなかった。戦いにて破るのではなく、心服させる徳を見せろと告げたのである。
これ以上の戦いが臣民にかける辛苦を思った利幼は、兵を以て父を恫喝し、後嗣の座をつかみ取ったのである。
その後、利幼は奄に使者を派遣することを決めた。練孟に協力したのは田仲乂という大夫の独断なのだが、そのことが禍根となって薊奄二国が対立しないよう、修好を図るためである。
正使には練孟の岳父であり、先には練孟に味方した子伯異を立て、姜子蘭はその副使となり、子狼とともに薊国に向かうことになった。
だがその使者の中で、不穏な影がうごめき始めていたのである。




