第一章『王子漂白』編 あらすじ
かつて焱という王朝があり、暴政を行っていた。
時に虞という国があり、焱の暴虐にあえぐ万民のため、諸侯を率いて焱を倒して新たな王朝を樹立した。
しかし虞の開祖・武王から十代目。時の虞王はかつての焱のように酒と女に溺れ、国政を顧みなかった。そして虞は、建国の功臣の末裔の国・秦と、それと手を結んだ西の蛮族・顓の侵攻によって遷都を余儀なくされ、挙句には王朝を実質的に支配されてしまった。
虞の東方に樊という国があり、自国の兵と周辺諸国の武力を用いて顓を倒そうとしたが――大志、天に届かずに敗北する。さらに樊は敗北によって乱れ、樊の君主は力を失い、智氏、魏氏、維氏という三つの卿(大臣)が幅を利かせることになってしまった。
虞王朝は顓に支配されている現状を諸侯の武力によって解放してもらおうと、第四王子・姜子蘭に密書を持たせて密かに虞の首都から脱出させた。姜子蘭はその最中、豪傑・盧武成と出会い、彼とともに旅をすることになる。
二人が目指すのは樊の卿の一人、魏氏の拠点である杏邑。
苦難の旅の末、二人は杏邑へたどり着く。姜子蘭は、旅人である盧武成をこれ以上巻き込むまいと、杏邑に着くと、手にしていた宝剣を同行の礼として差し出し、単独で魏氏の長――魏盈の下へ向かった。
しかし魏盈には野心があり、姜子蘭と密書を利用して樊での自分の立場を高めようと企んでいたのだった。
その思惑に気づいた姜子蘭は、魏盈の娘、魏香蘭の助力もあって魏盈の下から脱する。しかし脱出に気づいた魏盈は追手を出した。杏邑を脱出することに手間取った姜子蘭は魏盈の兵に囲まれ絶体絶命の危地に陥ったのだが――その時、姜子蘭の前に現れたのは盧武成であった。
盧武成は、自分でもどうしてそのようなことをしたのか分からないのだが、窮地の姜子蘭を見捨てることが出来なかったのである。
盧武成の助けもあって姜子蘭は辛くも魏氏から逃げ出すことが出来た。
そしてこれからどうするべきか――。
姜子蘭は、盧武成の助言を受けて北へ向かうことを決めた。目的地は樊の維氏の領地である。維氏は北方の騎馬民族・山間民族と融和しつつ、大陸の価値観から見れば野蛮である騎兵を導入していた。そして、虞王への尊敬も厚いとの話である。
こうして、流浪の王子と野生の豪傑は二人きりで北へ向かうのであった――。
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↑のリンクは第二章「双士戟弓」編の第一話です。こちらのあらすじを読んでいただければ二章から読めるように書いたつもりですので、第一章あらすじで興味を持って頂けた方は是非本編にお越しください!!