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夜に聴かせて  作者: 音色
6/8

リリスへ言及

リリスの部屋は、小ぶりながらも厚手のカーテンで外からの視線を遮られ、完全にプライベートな空間として確立されていた。

装飾は控えめだが、象牙の櫛、銀の香水瓶、そして輸入物の香粉入れが小さな鏡台の上に並べられ、上品な趣を醸し出している。

花瓶にはいくつもの花束が活けられており、その隣には、カードや手紙が束ねられるように積まれていた。おそらくファンから贈られたものだろう。

中にはすでに封を切られ、開かれたままになっている手紙もあり、彼女がそれらにきちんと目を通していることがうかがえる。ファンを大切に思っていることが、こうした小さな痕跡から伝わってきた。

フロアにはペルシャ風の小さな敷物が敷かれ、部屋全体は物が少ないながらも美しく整えられている。来訪者を歓待するための一角には、小さなソファと丸い机が置かれており、紅茶を載せたトレイを手に、小間使いのような少女が静かに奥から現れた。

別の出入り口があるのか、それとも部屋の奥にもう一つの空間が隠されているのか、一見しただけではわからなかった。


鏡台の前に腰かけたリリスは、ふわりと笑みを浮かべた。

「どうぞ、おかけになって。お茶を入れさせますわ」

リリスの隣に控えていた少女が、軽く一礼してそっと部屋を出ていく。どうやら、侍女として仕えているようだ。

すすめられるままに、隅のソファに腰を下ろす。まもなく衣装棚の間から、先ほどの少女がティーセットを盆に載せて戻ってくる。

「この衣装スペースは、隣の女優部屋との仕切りも兼ねているの。完全な個室ではないけれど、それぞれの楽屋代わりに使っているわ。ただ、あくまで共有スペースであるという意識は忘れていないの」

言いながら、リリスは茶を一口すする。

隣の女優部屋――それは、例の被害者のことだろう。他にも女優は大勢いるが、このような半個室を与えられる者は限られているはずだ。

「お忙しい中、お時間をいただいてごめんなさい。単刀直入に聞くけれど、彼女との関係はどうだったのかしら?」

伯爵夫人が遠慮のない口調で問いかけると、リリスは扇子でそっと口元を隠し、わずかに目を見開いた。

「そうね……もちろん、良好とは言えなかったわ。彼女の方は明確に私を嫌っていたけれど、私は別に彼女を憎んでいたわけではないの」

そう答えると、リリスは視線を落とした。


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