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水卜 優一 その①
「ここはどこだ?」
そこは白い霧が立ち込めた謎の場所だった。
広がる蕀の中に人影が見えた。
「…さない…」
「え?」
「オ前…赦サナイ…俺ノ…姫…返セ!カエセ!出テイケオトコ!ユルサナイ!」
男のようだが女の声で話す人物がイサムを追い出そうとしているようだ。
どうやらここは高貴な方の城の庭だったようだ。
お姫様が住んでいるみたいだ。
「ごめんなさい!僕は貴方に何か酷いことをしてしまいましたか?」
何かしてしまったから怒っていると感じる。
「私ノ王女様…一緒ニ居ル…赦セナイ!」
奥から女のようだが男の声で話す人物が出てきた。
王女様と呼ばれる女性…と居ることが癪に触れてしまったのだ。
森から逃げようとすると蕀の根に足を取られてしまった。
足掻いても逃げられない。まるで蜘蛛の巣に掛かった虫のようだ。
そんな中、イサムは王女様の正体に気づいた。
「王女様って…まさかヨゾラさんの事?」
目が覚めるとイサムは自室に居ることを確かめた。
男の声は昔どこかで聞いたことがある気がした。
でもどこでだろうか…?思い出せそうで思い出せないもどかしい気分だ。