秀才と猫 上
「カンパーイ!」
リュースーのbarで4人は集まってパーティーをしているようだ。
「無事依頼も終わったし、結婚しちゃう?」
リュースーはスコッチウイスキーを片手に冗談を言う。
「アホ、すぐ次の依頼が来るだろうが。」
ヨゾラはカミカゼというカクテル片手にそう答えるやはり口が悪い。
「蜘蛛ちゃんつえーっ!」
アカシはエナジードリンクを飲みながらそう言う。
イサムはもしかしたらと思い質問をした。
「そういえばヨゾラさんって高校どこ行ってたんですか?」
空気の流れが変わった。
アカシは青ざめてしまった。
「チビちゃん…今、何て言ったの?」
リュースーが怖い顔をした。
「落ち着けリュースー。私は気にしてねぇよ。」
ヨゾラが宥めても落ち着かない。
「俺が気にする!」
リュースーはそのままイサムを睨み付けた。
イサムは思った。
「あ、終わった。人生詰んだ。殺し屋の協力者に殺される。」
と。
「リュースーこわ~い♡」
ヨゾラは持ち前の演技力でリュースーを宥めだした。
「ごめんヨゾラちゃん。熱くなりすぎた。」
怒りがみるみる冷めていった。
「私は15で高卒の試験に合格したからな。つまりあれだ。高校は行ってない。」
もう何がなんだか…わからなかった。
そしてこの答えがイサムの予想を裏切る結果になった。
「蜘蛛ちゃんブッ飛んでるぜ!」
アカシは手を叩きながら言った。
「ヨゾラさんって天才なんですか?!」
本当に天才かもしれないと思うとイサムは落ち着かなかった。
「天才じゃなくて秀才だよ!ね?ヨゾラちゃん♡」
リュースーは酔ってしまっているのか、カッコよくなかった。
「秀才は褒めすぎだろ。」
いつも冷静なヨゾラの顔がほんのり赤く染まっていて、可愛らしく見えた。
「なぁ蜘蛛ちゃん、蜘蛛ちゃんのとこの猫た…猫ってなんで紙袋被ってるの?」
アカシは興味津々で聞いてきた。
「それはオサムと出会った頃の話になるんだが…ミーコが死んだとこから話すぜ。」
ヨゾラは飲んでいたカクテルをカウンターに置いて話し出す。
「もう3年前になるな…」
3年前、黒猫のミーコが突然弱ってしまった。
「ミーコしっかりしろ!」
野良猫の女王になって帰ってきた次の日にまさかエサも食えないほど弱ってしまうとは思ってもいなかった。
「ミーコ、エサ…良いやつ買って来るから!戻るまで死ぬんじゃねぇぞ!」
と言ってドアを開けるとミーコは弱々しく
「にゃ~…」
と鳴いた。
「急がねぇと!」
鍵をかけてガレージに急いだ。
ガレージから愛車ゼファーを出してエンジンをかけ、ペットショップへと単車を転がした。
ペットショップで買い物を終え、事務所へ戻る途中、汚い男がしゃがんでいた。
「おい、お前腹減ってんのか?」
とりあえず声をかけると男はにっこり笑って
「お姉さんは僕を人間扱いしてくれるんだね。」
なんて言ってて、コイツ面白い奴だって思ってケツに乗せて連れて帰って、風呂にいれてやったんだ。
「わりぃ、女モンしかねぇ。」
そいつに服を貸して、ミーコの看病に戻ったんだ。
「ミーコ、食いモン買って来たぞ。少しで良いから食べてくれ。」
ミーコは静かに
「にゃ~ん」
と鳴いた。
その時、後ろから
「高級ネコネコまぐろ缶。そう言ってます。」
男が言ってきたんだ。
「お前動物の言葉が分かるのか?」
驚いて尋ねると男は
「はい、少しなら」
そう答えてネコ缶をミーコに与えた。
ミーコは嬉しそうに食べた。
「お前、すっげぇな。名前は?」
笑って尋ねるとそいつは
「林原イサム、15歳です。」
少し怯えたような声で答えた。
こいつが後のアイツな。
「前にも会った気がするが…まぁいい。」
そうこうしてるうちにミーコが完食していたので驚いた。
次の日、ミーコは私のベッドの下で息を引き取っていた。
その日の昼下がり、玄関に美しい子猫がいたんだ。
「お前、母ちゃんは?」
と問いかけた。子猫は
「みぃ~っ」
と鳴いていた。
「どうやらお母さんと言っているみたいですよ。」
ミーコの子供かと少々戸惑ったが、体毛の色に長さ色々違ったから親子ではないと感じた。
やがてミーコの火葬が終わり、全てが終わった頃
大きくなった子猫が事務所にやってきた。
「今日からよろしくな。オサム。イサム。」
イサムを助手として雇い、子猫を飼い猫のオサムとして迎えた。
子猫はどんどん美しく強く育った。
ふと窓の外を見ると嫌でも野良猫が目に入るほど群がっていた。
「おいオサム…お前の友達か?」
オサムはソファーの下に逃げてしまった。
よほど嫌なのだろうと感じてしまうほどだ。
「どうやら外の野良猫達は盛りのついたメスみたいですよ!女の子だよオサム!いいの?!」
イサムは状況を把握し、私に状況を説明し、オサムを茶化した。
「にゃーーーっ!!」
どうやらお怒りのようで出てこない。
私はモテ女の感でオサムに声をかけた。
「お前モテるのが嫌なのか?」
メスにモテるのが嫌なのかもしれないと思って、
私は紙袋に穴を空けて目出し帽を作った。
「お前は顔が良いからな。これを被ってろ?モテなくなるぞ。」
オサムは目出し帽を被り、窓の外を見つめた。
するとみるみるメス猫がいなくなっていった。
それ以来、オサムは目出し帽を風呂以外では絶対脱がなくなった。
「つー訳よ。可笑しいだろ?普通嫌んなって脱ぐってのにさ。」
ヨゾラはグビグビとカクテルを飲み干した。
「またそれもヨゾラさんの愛ではないでしょうか?!」
イサムは手を挙げて発言した。
「そうか?それなら良いんだがな。」
ヨゾラはグラスに付いていたレモンを食べた。
「オサム良いな~!俺もヨゾちゃんの愛を受けてみたいな~!」
リュースーはまた口説こうとしていたが
「今日は乗り気じゃねぇから口説いても何も言えねぇよ。」
ヨゾラは軽くあしらった。
「も~、そんなこと言っちゃって。本当は口説いて欲しいんじゃないの?」
ウィスキーを飲み干してそう言うリュースーに対してヨゾラはニヤけながら
「さあな?どうなんだろうな。」
やっぱりヨゾラさんは分からない人だ。
「カンパリオレンジ。」
ヨゾラさんの一言にリュースーはすぐ反応し、
「了解。リュースーに任せなさいっ!」
グラスにカンパリとオレンジジュースを加えてステアし、すぐに提供した。
「サンキューな。」
美しい赤色のカクテルを飲むヨゾラさんの姿はまるで吸血鬼。怖くて声が出ないほど美しく血を飲むヨゾラさんに皆見惚れてしまった。
「ヨゾちゃんまるで鮮血を飲む吸血鬼みたい。俺の背筋が凍るほど美しいよ♡」
まさに僕が思ったことをそのまま口説き文句につかってくるリュースーさんに僕は鳥肌が立った。