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四夏希 蝶

「難しい(ツラ)すんな。飯なら作ってやるよ。」

不器用だけど優しいヨゾラさんが愛おしいほどに大好きなんだ。

キッチンでせっせと朝食を作るヨゾラにイサムは理想の母親の姿を見た。もしもこの母の所へ産まれていたら全てが違ったのかもしれない。

「できたぞ。とっとと食いやがれ!」

イサムの大好物ふわとろ卵のオムライス~デミグラスソースを添えて~がテーブルに並んでいた。

「ヨゾラしゃん…ありがとうございますぅ…」

イサムは嬉し涙を流していた。

「勘違いすんなよ!私が食べたくて作ったんだからな!」 

そう言いながらヨゾラは自身の好物オニオンスープをテーブルに置いた。

「いただきます!」

二人は一緒に食事をした。

例え依頼があってもこの時間はなくならないに決まっている。僕の大好きな師匠との時間。


あっという間に一週間が過ぎ、約束の日になっていた。

夜になり、ヨゾラは装飾品がついていない黒色のドレスで身を包み、ドレッサーで化粧をしていた。

「待たせたな。行こうぜ。」

そこにはいつもの気だるげなヨゾラの姿ではなく、妖艶な女の姿があった。

「失礼を承知で言わせてもらいます。本っ当にヨゾラさんですか?」

イサムは質問をした。

「張り倒すぞお前。」

この口の悪さは、やはりヨゾラさんだ。

どんな武装(メイク)をしていてもヨゾラさんはヨゾラさんだってことがわかった。

「どうして武装(メイク)してるんですか?いつも素敵なのに…」

イサムの質問にヨゾラは

「いつもの格好だと夜の街に馴染まねぇだろ?変装のためだ。」

ホットピンクのルージュに染まった唇に見惚れていると思い切り僕の鼻をつまんできた。

「まじまじ見るな馬鹿。遅れちまうだろ。」

なんでこの人こんな性格になったんだろうかとイサムは思った。

「いででっ!行ぎまじょうっ!」

鼻を離してもらったがやはり痛みが引かない。

どうやら現実のようだ。よかった、夢じゃなくて。

FD(エフディー)の運転任せていいか?」

ヨゾラのもう1台の愛車・マツダRX-7FD3S。

夜のような黒い車体にボンネットについたキスマークのペイント、トランクには蜘蛛の巣とハートマークのペイントが施されている。まさにヨゾラの愛の証が刻まれている車なのだ。

「さぁイサム!歌舞伎町へ向かえ!」

ヨゾラは後部座席に座った。

「了解、女郎蜘蛛(ボス)

歌舞伎町に向かって走る黑馬(こくば)の中でヨゾラは金木犀の香水をつけていた。

女郎蜘蛛(ボス)、香水ですか?」

イサムは金木犀の甘く強い匂いにうっとりしていた。

「ああ、歌舞伎町の女っぽいだろ?」

ヨゾラは自信満々に言った。

(ムシ)が寄ってきますよ!」

イサムは心配していた。

「殺して捨てるだけだ。わかってるだろ?」

ヨゾラは悪い顔をしていた。

「そうですね、それがあなたの殺り方ですね。」


一方、リュースーはというと標的とアフターに来ていた。

「リュー君楽しいね!私好きだよ!」

夏希の一言にリュースーはゾッとした。

「そうなんだ…俺も楽しいよ!」

リュースーは愛しのヨゾラで頭がいっぱいだ。

早く仕事が終わってbarでどんなカクテルを出そうか、どんな言葉(カクテル)なら女郎蜘蛛(ヨゾラ)は振り向くのだろうなどと考えていた。

その頃、コインパーキングに車を停めて移動を始めたイサムとヨゾラだが…

「あんた私の好みだわ。ねぇ、私といいことしない?」

イサムをホテルに連れ込もうとする女がいた。

「ヨゾラさんヘルプミー!」

イサムはヨゾラに助けを求めた。

「わりぃ、コイツは私の連れでな。」

イサムが逆ナンされまくりで進めずにいた。

リュースー達はというと…

「リュー君、私疲れちゃった。あそこで休まない?少しでいいの。」

夏希が指差す先にはラブホテルがあった。

リュースーは鳥肌が立っていた。

「悪いけど枕はやる気ないな~。ごめんね。」

傷つけない断り方が出来るのはリュースーの長所とも言える。

「え~そっか。あきらめる~。」

夏希も意外と素直である。

「ありがと。夏希ちゃん。」

吐きそうな感じをぐっとこらえて目的地である人気(ひとけ)のないビルとビルの間を目指した。

「おっせぇなぁ!まさか標的とホテルに行って盛ってる訳じゃねぇだろうな!」

ヨゾラは標的の誘導に時間がかかっているリュースーにイラついているのか、リュースーが標的と盛ってるという憶測にイラついているのか、イライラしているのがイサムに伝わっていた。

イサムはチャラいリュースーならあり得ると思っていたが黙っていた。

「ほら、こっちに来て。大丈夫だよ。」

標的の手を引くリュースー。

「本当に?」

やっと標的を誘導してきたリュースーに腹を立てながらヨゾラは暗闇に身を隠した。

「誰も居ないからさ。」

リュースーは限界だった。

「も~やだぁん♡」

気配を消し、標的の背後に立った。両手にクナイのように鋭い武器を持ち、静かに標的の首に突き刺した。

「かはっ…」

標的は気を失ったかのように倒れた。

「流石、女郎蜘蛛ちゃん。殺り方もキレイだね。」

リュースーはヨゾラを口説こうとした。

「リュースー、ふざけてる時間はねぇよ。」

ヨゾラの機嫌を察した。

「わかってるよ。」

リュースーは足元のマンホールを開け、手袋をしてそこに死体を落とした。

「とっとと閉めろ。すっげぇくせぇ。」

ヨゾラの機嫌が最悪になる予兆を察し、リュースーは手早くマンホールを閉め、皆で車へと急いだ。

「リュースー、カクテル作ってくれ。」

ヨゾラの声に待ってましたと言わんばかりに

「おすすめは知的なマティーニだよ。」

リュースーの発言を無視して

「んじゃスコッチウイスキーでも飲むか。」

ヨゾラは路線変更した。

「カクテルじゃないし…」

そんな話をしているとコインパーキングに到着した。

「さ、ヨゾラさん!帰りましょうか!」

イサムはヨゾラに確認を取った。

「barにコイツを捨ててからな!」

ヨゾラはリュースーのbarに寄れと言った。

「ヨゾラちゃん帰ろう!俺達の愛の巣へ!」

リュースーはヨゾラを口説こうとした。

「ウゼェ…イサム!とっととbarに行け!コイツが暴走する前に!」

リュースーはヨゾラの唇に指で優しく触れた。

そしてその指で自分の唇に触れた。

ルージュがリュースーの唇についた。

「ウゼェ!!」

ヨゾラはリュースーの行動にドン引きした。

barにリュースーを下ろして事務所に帰った。

帰るなりヨゾラはスコッチウイスキーを飲み始めた。

「私の恋人はスコッチウイスキーだ。」

ヨゾラはスコッチウイスキーのボトルにキスをした。

将来、殺し屋になったらスコッチって名前にしようかな。

スクリュードライバー

ウォッカとオレンジジュースをグラスに注ぎ、ステアする(軽くかき混ぜる)ことで誕生するカクテル。

レディーキラーと呼ばれるカクテルの一つに数えられ、さっぱりとした口当たりが特徴的。

カクテル言葉は「あなたに心奪われた」


マティーニ

ジンとベルモットをステアすることで誕生するカクテル。

完成度が非常に高く、アルコール度数も高いのでカクテルの王様と呼ばれるも頷ける。

爽やかな苦味とキレのある風味が特徴的。

カクテル言葉は知的な愛

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