四夏希 幼
「いやぁ~あの殺し屋はいい女じゃのう!ワシ、当分死ねんわいっ!」
そんな声が聞こえた気がする。
「ヨゾラさん、どうやって1週間で仕留めるんですか?」
イサムは1週間で仕留められるか不安だった。
「こっちにはツテがあるのさ。男友達だけどよ。」
ポンッとイサムの頭を撫でた。
この人、余裕過ぎるでしょ!3年も一緒に居て男友達が居ることすら知らなかったんですが!
「ぬぁぁん。(リュースーの事だろ。そんなことも知らんのかにゃあ?)」
オサムはイサムの知らない男の名前を口にした。
イサムはオサムをひょいと抱き上げた。
「そいつ誰?」
こそこそとオサムに問いかけたイサム。
「にゃんっ!(知らにゃーな。中学の旧友?じゃなかったかにゃー?)」
オサムはしらけて変な口調になっていた。
「車出せるかイサム?」
突然車を出せるか聞いてくるヨゾラ。
無茶苦茶なんですこの人は。
「今日は勘弁してください。」
深夜の運転はまっぴらごめんだ。
「使えねぇな。んじゃバイクで行くからケツ乗れ。」
本っ当口が悪いんですこの殺し屋。
ガレージからヨゾラの愛車・ゼファーが出てくる。
黒にマゼンタピンクのラインが入ったセクシーな車体には傷一つついていない。
まるで師匠のように美しい車体である。
「ほら、これ着てメット被れ。」
黒のジャケットとフルフェイスのヘルメットだ。これは師匠のお気に入りのモノで二着あるうちの一着を僕にくれました。天然男たらしなんですこの殺し屋。
「しっかり捕まってろよ。」
ヨゾラは単車を転がし、昔き友の所へ向かった。
片道二時間かけてBarに到着した。
「ヨゾラさん、お酒ならいっぱい買ってありますよ。だから帰りましょう。」
ヨゾラの腕を引っ張るとイサムは拳骨された。
「アホ。旧友に会うんだ。」
イサムを引きずるようにBarに入った。
「リュースー居るか?!」
男友達の名前を呼ぶヨゾラ。
「その声は女郎蜘蛛ちゃんだね?久しぶり元気してた?」
奥からヨゾラより少し小さく見える色男が酒の瓶を持って現れた。この男がリュースーだ。
「寝不足だけど私は元気だ。お前はどうだ?嫁は来たか?」
いつもと違う様子のヨゾラに困惑するイサム。
「それが来ないんだよぉ。女郎蜘蛛ちゃんはお婿さん来たの?」
とヨゾラのノリに合わせて返すリュースー。
「バーカ、来ねぇよ。馬鹿助手が代わりに来たけどよ。」
こちらもこちらで酷い酷い。え?今馬鹿助手って言った?この殺し屋。
「このチビちゃんが手紙で言ってた助手?えーとイサムくんだよね?はじめまして女郎蜘蛛ちゃんの旧友・リュースー改め共犯者でーす。」
と自己紹介してきた。共犯者?この人共犯者なの?三年一緒に居て手紙でやり取りしてるの知らなかったんですが!!
「リュースー、てめぇは協力者。何回言ったらわかるんだ。」
ヨゾラはリュースーの肩を軽くポカッと叩いた。あぁ、僕も昔から師匠と一緒に居たかったなぁ…。
「それで?どういうコト?俺に会いたくなっちゃったの?」
リュースーはヨゾラをからかうように聞いてきた。
この人、師匠のこと狙ってるのか?
「バーカ。ちっと力を借りようと思ってな。少し考えたらわかるだろ?」
ヨゾラはリュースーに詰め寄るように言った。
「そうですか。はぁ~相変わらず言葉足らずだね。俺はそういうとこ好きよ。」
リュースーはヨゾラを口説くように言った。
「あ~はいはい。私は嫌いだ。」
この二人、ちゃんと仕事になってるのか心配なの僕だけ?
「何飲むチビちゃん?オレンジジュース?リンゴジュース?」
カウンター席にイサムとヨゾラを座らせ、未成年のイサムをからかうように聞いてきたリュースー。
「からかってますか?コーラください。」
イサムはリュースーに注文した。
「私はおまかせで頼む。あとこの女の情報をもらってこい。」
ヨゾラの注文はいつも通りだったみたい。
「今日カッちゃん寝てるよ?起こす?」
情報屋が寝ていては話にならない。
「起せ!何がなんでも今日情報が必要なんだ!叩き起こせ!」
ヨゾラの辛辣さにいつもの事だが少々引いてしまった。
「アカシー!女郎蜘蛛が来てるぞ!」
イサムにコーラを出しながらリュースーは情報屋を呼んだ。