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四夏希  卵

20××年、日本は悪い政治家のせいで治安が最悪になっていた。

そんな日本の裏社会で活躍しているのが殺し屋だ。

返り血のベティ、真紅の騎士(レッドナイト)など有名な方々が多い殺し屋だが最近、警備の強化があって大勢が捕まり、人数が激減した。


僕の師匠はそいつらとは違う、警察(やつ)らの目を欺き、標的のみ仕留める。それが師匠の殺り方だ。この話は僕と師匠の日常である。


「いらっしゃいませ。ようこそ我が事務所へ。」

僕の一言で夜が始まる。

僕の名前は林原イサム。三年前に師匠に拾われてから事務所で助手兼弟子として師匠を手伝ってます。


「お前、客も来ねぇのに何言ってんだ?」

黒い長髪に真珠のような白い肌の綺麗な女性が僕の師匠ヨゾラさん。本名なのか偽名なのかはわからない。口が悪くて稽古もつけてくれないけど僕の大切な人。


僕にはもう1人特別な子がいるんです。

「にゃ~(さっきからうるせぇ。)」

僕には特別な力があって、なんと動物の言葉がわかるんです。このもふもふで紙袋を被った猫ちゃんはオサム。自称1歳の男の子で僕にとっては弟みたいな存在です。

「話は終わってねぇぞイサム?」

ヨゾラは不機嫌そうにイサムを見つめてくるではないか。

「何練習してんだ!殺し屋になりてぇなら一発できめるんだ。」

と冷たい声で続ける。

「でも僕、第一印象が大事だと思うんです!」

そう言って鼻の下を得意げにこするイサム。

「!…そう。」

ヨゾラは少し寂しげな表情(カオ)をした。

「ヨゾラさんもニコッて笑ってください!」

イサムは口角に指を当て笑ってみせる。

「笑うのは嫌いだ。何度も言ってるだろ。」

ヨゾラはイサムの鼻をつまんだ。

「いててっ!ごふぇんふぁはい(ごめんなさい)…。」

イサムは謝って鼻を離してもらうがしばらく痛みが引かない。

「ったく…あ?」

ヨゾラは何かを感じ取った。

ガタンッと勢いよくドアが開いて老人が入ってきた。

「ようこそ我が事務所へ!!」

突然の出来事にパニックになるイサム。

「殺し屋は…どこじゃ?」

冷静に老人が訪ねてきた。

「はわわ…呼んできます!!」

奥へ逃げようとしたがヨゾラに服を掴まれてしまった。

「馬鹿タレ!テメェは兎か!」

静かにイサムをどついた。

「お嬢さんが殺し屋の…ヨゾラさんじゃったのか!ワシゃてっきり娘さんかと…」

老人の話を遮るように

「爺さん、依頼じゃねぇなら帰んな。おしゃべりで商売してる訳じゃねぇからよ。」

ヨゾラは帰るよう老人に促す。

すると息つく暇もなくまたドアが開いた。ゾロゾロと男が入ってきた。あぁ、初めて師匠が負けるかもしれない。

「これでもおしゃべりしに来たと思うか?」

と老人は不思議そうな顔をした。

「そうかい、じゃあ依頼の内容は?」

イサムに大人の余裕を見せつけたヨゾラ。その余裕ぶりにイサムは圧倒されていた。

「この女をころしてくれんかのぅ。名前は四夏希(あずまなつき)。報酬は…」

ヨゾラは全員が瞬きした一瞬で老人に詰め寄ってお気に入りのリボルバーを向けて老人を睨み付けていた。老人はヨゾラの怒りに触れてしまったのだ。

「爺さん分かってねぇな。報酬額は私がきめるんだよ。」

ヨゾラは老人に見下すような態度で言った。

「…分かった。」

老人は嫌そうな顔をして返事をした。

「んで?なんでその女を殺したい?」

ヨゾラはドカッとソファーに座り、足を組んだ。

「この女はワシの愛人じゃったんだが…貢がせといて逃げおったんじゃ。しかもホスト?というのに通っておったんじゃ。酷いじゃろ?」

泣く泣く老人はそう話した。

「確かにお金だけ取って逃げるなんて酷いと思うよ!殺しちゃいましょヨゾラさん!」

とヨゾラに意見するイサム。すると瞬く間もなく

「馬鹿野郎ぉ。金目当ての付き合いに決まってんだろ。こんな(わけ)ぇ女がこういう爺さんとこういうことにならねぇだろ?」

とヨゾラは言った。

いやいや、世の中には色んな人がいますよ。

「そうかぁ…やっぱり騙されてたのか…お嬢さんいやヨゾラさん、この女を殺してくれんかのう…」

いや、お爺さん!納得しないで!え?僕がおかしいのこれ?

「3500万。それと手数料の500万。執行は1週間後だ。どうだ?やるか?」

老人に優しく手を差し出すヨゾラ。

「あぁ、文句はない。頼むぞヨゾラさん。」

老人とヨゾラは固く力強い握手を交わした。

「ここからは女郎蜘蛛だ。いいな?爺さん、くれぐれも私らの事を口にするなよ?」

ヨゾラは強く冷たい声を響かせると老人は

「わかっとる。」

と小さく呟いた。

「またね、死んじゃだめよ?お爺ちゃん。」

ヨゾラは優しく老人を見送った。

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