第一章
アタシは、不快感を露にし、苛立って舌打ちをして、白いデバイスを口元に当てて、誰かに指示をする。
「電撃お願い、奴を大人しくさせて!」
「了解」
すると少年の声がどこからかして返答した。
その指示を受けた直後。その子供の体に電気の塊が撃ち込まれた。
子供はくの字に俯き、低く呻くと動きを止めた。
(やっぱり硬い…)
煙を出した腹を押さえていたが、目立った外傷はないようだった。
攻撃がなくなり、地面に着地をして、少しだけ後退りをして距離を離す。
動きをしばらく止めた生物の様子をうかがいつつ、懐から白い耳栓みたいな装置とハート型の装置を取り出した。
耳栓みたいな装置を耳に入れると、それがヘッドセットマイクになる。
ヘッドセットから声が響いてきた。
「さすがC級クラスといったところか…」「電撃喰らっても、動きを止めるだけで、砕けたりはしないな…」
さっきの少年の声とは別の少しだけ大人びた少年の声がした。
「おいっ!大丈夫か?」
アタシが答えずに何か考えて唸るので、心配して聞いてきた。
「ああ、何とか…」ぶっきらぼうに呟く。
「勝算はあるのかい?」いたずらっ子みたいな口調が含んだ声で言ってきた。
「うん、やりにくいけど…。勝算はある!」
言葉を濁しつつ、『勝算はある』の言葉を強調する。
「『やりにくい』ねぇ~?」嘲るような響きの口調だったが、「まあ、頑張って!」
「~~怒」
いきなり明るい声で返されて、さらに苛立ったが仲間に文句を言っても仕方がない。会話と通信はそれで終わった。
気を取り直して、ハート型の装置を掲げた。
これは待機状態にした戦闘用のデバイス。
要するに、『武器』だった。
アタシが何に対してやりにくいと苛立っているかは…
いくら敵とはいえ、相手は子供の姿をしているのだ。
弱いものをいじめているみたいで、気分がいいものではない。
これから始まるバトルを思うと傷付けたりするのは流石に、気が引ける。例え、殺気だってイラつていても。だけどどうしてだろう、この苛立ちと怒りは込み上げてきて止めどない。