第一章
(歳の頃合いは、だいたい幼稚園児くらいか…)
眉間にシワを寄せるアタシ。
女の子供は、髪がピンク色のショートカット、白いフリルがついたワンピースにリュックサックの服装で、履いた赤い革靴が奇妙に艶やかだった。
その子供が、仁王立ちする気配に気がついたようで、こっちを振り返ってきた。
子供は、顔をあり得ない方向に傾け虚ろな目で口の先端からよだれを流していた。
それは獲物をいただきたいと云う食欲と殺意と狂気が入り交じる本能だった。
そして極めつけは…
「グァァァァァ…」地を這うような呻き声。
アタシは心底やりにくいと苛立った。
「ハァー」
嫌そうにため息を吐いてから、アタシは手首につけた白い腕輪型のデバイスを掲げた。
掲げると、デバイスの表面に黄色い奇怪な文字が現れて、それが煌めく星のような光の粒子たちを撒き散らした。
キラキラとした粒子は、やがてCG技術のような白いブロックを生み出すと、アタシや子供のようなものの周囲だけをテトリスのように囲んでいった。
生み出された空間は繋ぎ目もない白く無機質なものだった。
アタシは、まだ不機嫌そうに眉根を寄せたまま、手首につけた白いデバイスを口元に当てて吐き捨てるように合図する。
「始めるぞ!」