第一章
「この世界は確実に蝕まれている…」 アタシは通信がそのままになっていることを忘れて呟く。
「そうかもね」「でも人々はあまり危機的には感じていないようだよ」「現実逃避ってやつ?」 腕輪型の通信機から、浮かび上がる電子画面に一人の可愛らしい少年が映し出されて顔に似合わない毒を吐く。
彼の今まで聞いたことのない、ぶっきらぼうな声に、あたしはハッとし慌てて謝った。
「ごっちん、ごめんね…」「たぶん、みんな、ちゃんと判断はしているとは思うよ」「ただ、人の気持ちが係ることだから、一つのものには当てはまらない難しいものなんだよ」
「アタシが強く思い、信じて願うことは、自分の理念を最後まで貫き、決断すること」「後悔はしていいけど、またきちんと前を向いて、戦えること・・・」
「確かに、アタシは、世間に皮肉を持っていることは事実だよ」
「でも、人を見捨てることはできないから、こうしているんだ」
それは紛れもない、本音だった。
彼の言葉には人への嫌悪がわずかに含まれていることが分かったため、諭すつもりで自分の本音も言った。
彼等に『なぜ自分達だけが戦わないといけない!』という疑念と失望を与えてはいけないからだ。
それを自覚してしまえば、すべての"絶望"を意味してしまう…
アタシの言葉に男子達は、押し黙り、考え込むような溜め息を吐いた。
気まずい空気が流れた。
静かなでこんなにも重い空気とアタシは感じながら、押し黙ってしまった彼らに何も言えずに、口元だけを不甲斐なく動かして、言葉を探していた。
すると、さっきのアイドルグループたちの記者会見が終わったようで、今度は彼らのライブが始まったようだった。
歌声が降り注いできた。
今度は、屋内のライブ会場で抽選に選ばれたファンたちの前で歌とダンスを披露していた。
毎回こうした抽選会などは行われていて、”勝利記念ライブ”と世間では云われていたが、毎度のことだが、このライブ他のアイドルのライブよりもかなりの倍率を誇っていて、有名だった。
このライブに参加できるのものは、ファンの中でもかなりの名誉なことらしい…。
8人全員が、一人一人が、キラキラと煌めき、生き生きとしてマイクを握りしめて、華麗に歌い踊りをする姿と、彼らがドアップで抜かれて、キメ顔をするたびにより一層激しく歓声が響く。
(こうしていれば、本当にアイドルなのに…)
そのライブを見ているうちに考えがまとまり、アタシは口を開いた。
「ねえ、みんな」「聞いて」
「アタシたちは目立つことはないけど、人類よりも大きな力を持っている」「その大きな力は人の生活には必要ないものだけど、大きな力を持っているということは、その力は誰かを守るためにあるんだ」「愛する人を救う力、ヒーローになんてなろうとしなくていい」
「愛する人を守ための力」「この場所を守り、帰る場所を守り、愛する人たちと暮らすために、守るんだ」「だから、何も悲しいことなんかじゃない。むなしい事でもない。誰かを愛して、誰かを救うために、戦っているんだから…」
ピーンとした空気が一変する。
沈黙した男子たちが、一気に笑い出した。
まるで、パンパンに膨らんでいた風船が針で一突きされて、破裂したようだった。




