第一章
《Starry sky!Pure power boys の皆さんです!!》
女性アナウンサーの明るい声が響き渡り、驚いたアタシは、商業施設に設置された大型ディスプレイを見上げた。 そこに映し出されたのは、若いイケメン男子8人。
それぞれマイクを持ち、アイドルの衣装を着ていた。
大型画面に映し出された彼らは、壁一面を埋め尽くすこの時代に存在する政府のエンブレムを背景に横に並んでいた。
どうやら、彼らの記者会見とライブが行われるようだった。
「大方、昨日の勝利についてかな?」
アタシは、皮肉めいた声色で呟いた。
この世界は、内側から、外側からも驚異にさらされていた。
アタシたちは、秘密裏に徘徊する生物を倒すのが使命だが…。 彼等は、海に襲来する巨大な生物を倒すのが使命だった。
その名は、"ラージェスト"
人類の過ちの一つ、生物兵器の残骸である。
奴等は、およそ百年前の大戦の化学兵器によってさらに歪められた生物兵器の生き残りだった。 奴等には生き物としての意識はなく、クラゲのような柔らかな軟体生物で、アメーバーのように増え続ける能力と捕食。 何故か群れることを好み、集団で襲撃するのだ。 奴等の生息地域は、各国の海周辺といわれているが正確な地域は不明だった。
非常に獰猛であり、物理的な攻撃は一切通じなかった。
それは、すべての危険生物に当てはまることだったが、特に"ラージェスト"は、その名の通りとてつもなく大きく、小さな町なんかを飲み込んでしまうほどの大きさをしているものいた。
それが群れをなして、近海に出現するのだ。
人々の生活の中に溶け混んで、捕食を繰り返す生物達のことは隠し通すことができていた政府も、さすがに"ラージェスト"までは一般人に隠すことができなかったため、政府は、アイドルヒーローチームを作ることを決めたのだ。
要するに、人々の脅威に対抗できるものを作り、それを自分達のヒーローとして崇め奉れば、世間の混乱と不信を払拭できると考えたからだ。
この時代に存在する政府が生み出したのは、感情移入できそうな、8人の若い男性。
万能細胞の研究によって作られた最強のDNAと訓練によって鍛えられた圧倒的な戦闘力。そして、万人に好かれるような、愛嬌あるアイドル性を兼ね備えたものたちだった。
アタシ達のような万能細胞の保有者は、大体、危険生物たちを討伐する目的と医療関係の見本のために作られる。
生まれた8人も漏れなく、アタシ達と同じように“使命”を全うすることになる。
彼らの活躍は、”ラージェスト”の討伐はもちろんのこと、その討伐映像をテレビやネット、あらゆる放送媒体で流したり、グッズやCDのリリース、雑誌の特集、グラビア、ドキュメント番組や記者会見が開かれたりと彼ら、アイドルヒーローの活動は活発に行われた。
イケメンで洗礼され卓越した(一般人から見たら)彼等の戦いぶりは世間の心を瞬く間にときめかせた。最初こそ、彼らのヒーロー活動に否定的で、反対をし、デモや抗議を繰り返していた人々も少しずつ数を減らし、今やネット片隅に、ふと浮上しては消える程度にまで落ち着いた。
そうして、活躍は、世間を熱狂的に感動させた。彼等のファンは増え続け、生物兵器から生まれた歪んだ生物のことを誤魔化したい奴等の思惑通りに、世間の認識は彼等が守ってくれるから自分達の生活は大丈夫だ!だった。
「確かに必要だとは思うけどー」「・・・何かを失ってしまった気がするんだ」
「アタシはこれでいいのか?と疑問に思うんだ」
独り言をつぶやき、拳を握った。
確かに、人類ではどうすることもできないほど、強力な力を持ってしまった生物が誕生してしまった以上、我々は必要なんだろう・・・
だけど、だけど!
何か、大切なものをないがしろにしている気がするんだ。




