プロローグ~始まり~
――私は何のために生まれてきたのだろうか・・・
――私は何のためにこの世界で戦っているのだろうか・・・
アタシの戦いは今日も終わらない。いや終わることがないのだろう。
この宿命づけられた出生からのすべて・・・
戦って戦いまくるのだろう・・・
そう、アタシたちは・・・
耳の奥で流れるような音がする。
さらさらとしたとしたその音はせせらぎのようでもあり、手元からこぼれ落ちる砂粒のようでもあり…。
記憶の片隅にあるのは、リミッターが解除された細胞の慟哭だった。
ーーコロス、コロス…
恐怖と悲しみが産み出した、怒りと憎しみが混濁し、枯れることを知らない声で何度も叫んだ言葉。
自分でも考えられないほど、狂暴で凶悪な感情が一気に吹き出したのが分かったが、それを止める理性も、それを制止するはずのデバイスも狂気に支配された。
ーーうるさい黙れ!
誰か優しい人が止めようとした気がしたが…。
絶望がそれを振り払った、気がした…。
あの時、この身は泣いていたのかもしれない…。
巡ってきた感情が静かにそして激しく爆発し、身体は制御不能に陥り。
本能のままに降り下ろされた刃…。
返り血は、赤いこうを重ねて四方の壁や床に迸り、憎しみを薔薇の花弁のように描いた。
その時の私は、命を奪い取ってしまった罪悪はおろか、傷つけた事実すら気が付かず…。
刃に身を委ねていた。
その挙げ句の果て、細胞は戦慄する意識を尻目に、思う存分に暴れ、暴れに暴れ、尽きたらしい…。
それが夢なのか、現実なのか…。
混濁する意識は一点に凝集し、後方へと流れていく。
ーーまっ…て……
失いそうになっているそれに、手を伸ばしたいが、そこまではっきりと保てる意識もない…。
ただ、流れていく…。
その音はせせらぎのようでもあり、手元からこぼれ落ちる、砂粒のようでもあり…。