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隣の席に座る女の子にラブレターを間違えて送った  作者: 橘 瑠伊
第三章〜中間試験〜
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早めのデート

 同じ地域なのに、降りる場所によって景色は変わる。


 北川駅は、多くのビルが立ち並ぶ都会って感じの駅だった。


 しかし、隣の駅にある西川駅は、表口に降りるとマンションが立ち並んでおり、反対の出口である裏口に降りると住宅街になっていた。


「初めて降りてみたが、表口と裏口で景色が全然違う駅は初めてだな」


 時間を確認すると、九時五十分になっている。


 由衣も一緒の電車に乗っていただろうか。最後にやり取りをしたメッセージを見てみるか。


『電車に乗ったよー!』


 メッセージが来たのは、九時三十分。


 着いたことを教えておこう。


『西川駅に着いたぞ』


『私も着いたよ!』


 由衣のメッセージを見て、辺りを見渡してみる。


「由衣は、どこにいる?」


「空太くんー!」


 由衣の声が聞こえた。


 振り向いてみると、改札口の近くに由衣が立っていた。


 由衣の服装はベージュのパーカーに黒のズボンを履いている。


「よ」


 俺は、由衣に手を振り返す。


「初めての駅で、上手く合流できるかわからなかったけど、無事に合流で着て良かった!」


「俺も合流できて良かったよ。どこに行く?」


「住宅街の方向に、美味しいジェラート屋さんがあるんだよね。そこに行こう!」


 由衣は、俺の腕に抱き着いて、住宅街の方向を指さした。


「わかった。住宅街の方だな」


 俺は、由衣の指さす方向に向けて歩き始めた。




 西川駅から、降りた先にある住宅街は静かな雰囲気をしている住宅街だった。


「こんな住宅街のなかに、ジェラート屋さんがあるのか」


「そうみたいだよ。空き家を改装して、ジェラート屋さんにしたんだって」


「なるほどな」


 歩いてみると、ちらほらと家を改装して、お店にしたと思われる店が何件か見かけた。


「あ、あそこがジェラート屋さんだよ!」


 由衣が指さす方向には、青い屋根に白い外壁の建物がある。


 建物の前にある看板には、『美味しいジェラート屋さん! 子供からお年寄りまで、幅広い年代の方に人気なお店です!』と書かれていた。


「入ってみるか」


 ジェラート屋さんの中に入ってみると、木の床に木の天井と改装されて、お店っぽくはなっているが、どこか住宅感がある面影が残っているように感じた。


 間取りとかが、家みたいに感じさせているのか?


 店の中は、暖房を付けているのか外よりは暖かい気温になっている。


「いらっしゃいませー」


 茶色いエプロンを着た若い女性が挨拶してきた。


「ねぇ、ね! 十種類ぐらい味があるよ!」


 由衣が、ジェラートの入っている冷ケースを指さして興奮している。


「どんなのが、あるんだ?」


 冷ケースの中を見てみると、『バニラ』、『チョコチップクッキー』など定番のジェラートもあれば、『サツマイモ』や『モンブラン』など、季節限定の味も見かけられた。


 こんなに種類があると迷うな。


「由衣は、何味にするんだ?」


「私は、モンブランと抹茶のダブルにしようかな。空太くんは、何にするの?」


「そうだな。俺は、バニラとストロベリーにする」


 俺は、安定に定番の味にする。


「注文いいですか?」


 俺は、店員に向かって話しかける。


「はい!」


「モンブランと抹茶のダブル一つと、バニラとストロベリーのダブル一つください」


「かしこまりました! 容器は、カップにしますか? コーンにしますか?」


「由衣。どっちにする?」


「ゆっくり食べたいから、カップで!」


「カップ二つで、お願いします」


「かしこまりました!」


 店員は、冷ケースの扉を開けて、カップの中にジェラートを盛り付け始める。


「ジェラート屋さんって、自分が見られる視界でジェラートを盛りつけてくれるから、それを見るのが面白いよね!」


 由衣は、ウキウキした様子でジェラートを眺める。


「言われてみれば、面白いかもな」


 よく見てみれば、なんであんなに綺麗な球体のジェラートになるんだろうな。


 小学生の時に、おばあちゃん家で箱アイスを使って、綺麗に球体を作ろうとしたけど、上手くできなかった記憶がある。


「お待たせ致しました!」


 店員はジェラートにスプーンを刺して、俺達に手渡しした。


 よく見てみると、ジェラートの隣に一口サイズの小さなサツマイモが刺さっている。


 ジェラートにも季節があるんだな。冬になると、サツマイモから、チョコレートに変わるのか?


「ありがとうございます!」


 由衣は、元気よく挨拶すると俺の腕を引っ張る。


「あそこに座ろ!」


 由衣が指さす方向には、二人分の椅子と机があった。他にも、四人分など様々な人数に対応できる机と椅子が置かれている。


 由衣と一緒に、椅子に座る。


「すごい! 美味しそう!」


 由衣は、とても喜んでいるみたいだ。


「ジェラートの横に、サツマイモ刺さっているのは、知っているか?」


「え? サツマイモ?」


 由衣は、ジェラートの周囲を見る。


「あ! 本当だ! これは、写真撮らないと!」


 由衣は、ウキウキな気分で写真を撮り始める。


「良い写真は、撮れたか?」


「うん! 写真は撮れたし、一緒に食べよう!」


「いただきます」


「いただきまーす!」


 ジェラートを食べ始める。アイスとは違う濃厚さがあるな。変に甘く味付けされていない。素材そのものが持っている味を生かしている感じだ。


 ストロベリーに関しては、イチゴ自体を食べている感じだ。これぐらい大げさに言っても良いぐらい、生のイチゴを食べている味がした。


「美味しい!」


 由衣は、美味しそうにジェラートを頬張る。


「確かに美味いな」


 今思うと、ジェラートを食べること自体初めてかもしれない。


「ねぇ! 空太のやつも一口食べて良い?」


「あぁ、いいぞ」


 俺は、由衣の前にジェラートを差し出す。


「私のも食べて良いよ!」


 由衣も、俺の前に自分が食べていたジェラートを差し出した。


「一口いただく」


「私も、一口いただきます!」


 由衣と俺は、お互いのジェラートを味見する。


 モンブランは、栗の味がガツンと伝わってきた。こんなに濃厚なモンブランを食べたのは、初めてかもしれない。


 続けて、抹茶の方も食べてみる。


「抹茶、苦いかと思ったけど、良い感じに苦みが少なくていいな」


 あまりの美味しさに、つい口で感想を言ってしまった。


「でしょ!」


 由衣は、俺の感想を聞いて笑顔になった。


「空太くんのも、美味しいよ!」


「それは、良かった」


 お互い食べている味を共有する。意識したことは今までなかったが、由衣と付き合うことで初めて感じることができた、幸せかもしれない。


最後まで読んでくれてありがとう

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